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[選手権予選]延長後半残り5分からの大逆転!國學院久我山が3年ぶりV!:東京B

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[11.12 第90回全国高校選手権東京都Bブロック大会決勝 國學院久我山3-2(延長)早稲田実 西が丘]

 第90回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック大会決勝が12日に西が丘サッカー場で行われ、08年度全国8強の國學院久我山が延長戦後半ロスタイムにCB巽豪(2年)の決めた決勝ヘッドによって早稲田実を3-2で下し、3年ぶり4回目の全国大会出場を決めた。なお、試合後のA・B代表決定抽選により、國學院久我山は東京B代表となった。

 李済華監督が「非常に感動しました」と振り返った大逆転劇。國學院久我山が延長後半残り5分から試合をひっくり返して東京都代表の権利をもぎ取った。1-1の延長前半7分、早稲田実の1年生野田紘暉がマークを外して放った右足ミドルを久我山GK後藤雅明が右後方へ弾いてしまう痛恨の失点。相手のパスワークの前にボールを支配されながらも「しっかり守って、策がはまったと思う。気力と戦略でやれた」と森泉武信監督が振り返ったように早実が、思惑通りの戦いぶりで初の全国へ大きく前進する。エンジに染まったスタンドから響き渡る「紺碧の空」。延長後半に入ると早実は早くもコーナー付近でのボールキープに入り、残り時間を削りに入った。

 追い詰められた久我山。全国まであと数分まで迫りながらも東久留米総合に追いつかれてPK戦の末に敗退した総体予選や、決勝で敗退した昨年の悪夢が頭をよぎる。だが「メンタルが弱い。ちょっとしたカウンターやセットプレーでおどおどしてしまっていた。それでもピッチの選手とベンチとスタンドがひとつになって今までのときと違った」とエースFW右高静真主将(3年)が語ったように、久我山は土壇場でこれまでとは変わった姿を見せる。

 延長後半6分、相手のクリアボールを巽が頭でつなぐと、勝ち越し点を与えた場面でマークを振り切られていたMF平野佑一(1年)が右中間から中央へ圧巻のスルーパス。早実の誰もが反応することのできなかったパス1本で中央を攻略すると、走りこんだMF山本哲平(2年)が同点弾を右足でゴール右隅へ流し込んだ。これで蘇った久我山はロスタイム表示の2分を越えた延長後半14分、右高が右サイドPAやや外側でFKを獲得。これを右高が右足で蹴り込むと、フリーでニアサイドへ飛び込んだ巽が決勝のダイビングヘッドを叩き込んだ。

 1-0の後半30分に自陣で早実MF平澤遼(3年)にミスパスをインターセプトされ、そのまま平澤に同点ゴールを許していた巽。汚名返上のために「自分が決める」と誓っていた2年生DFの渾身の一撃が、優勝決定弾となった。照明に照らされた夕闇のピッチを言葉にならないような声を発しながら駆け抜けた久我山イレブン。再開直後に試合終了のホイッスルが鳴り響くと、優勝目前で壁に阻まれた早実イレブンが「あと少しだったのに……」と涙を流す中、勝った久我山の白とオレンジたちの目からも涙が溢れていた。

 早実は抜群のスピードで右サイドを切り裂いたSB牟禮宏晃(3年)や左サイドのドリブラー、鈴木崇文(2年)、平澤らの攻撃力と隙を見せない守りで健闘。平澤の同点弾と野田の勝ち越しゴールのほかにも前半17分に左CKから10番FW呉田敬介(3年)がポスト直撃のヘディングシュートを放つなど、会心の試合内容で初Vへあと一歩にまで迫った。

 ただこの勢いに飲み込まれそうになりながらも踏みとどまった久我山。指揮官は「上手い人から10人、ポジションを10人決めていく」と説明していたが、3人の1年生など華奢でもテクニックと状況判断に優れた選手たちがその技巧で劣勢を挽回した。後半22分に、左サイドのスペースを突いたMF山内寛史(2年)の折り返しから1年生MF渡辺夏彦が決めた先制点から山本、巽のゴールまで全て、わずかにできたスペースへ入り込む的確な動きと正確な技術とがリンクしたファインゴールだった。

 この日不安定さも見せつつも「今までになかった」勝負強さも発揮したチームの目標は、08年度の全国8強を越えて日本一。「ここがゴールではない」と前を向いた右高ら技巧派軍団が全国でも「美しく」攻め勝つか。

(取材・文 吉田太郎)

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