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[選手権予選]前橋育英の6連覇阻止!「大器」鈴木武蔵擁する桐生一が初の全国へ!!:群馬

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[11.13 第90回全国高校選手権群馬大会決勝 前橋育英2-3(延長)桐生一 敷島公園サッカー・ラグビー場]

 桐生一が悲願の初優勝! 第90回全国高校サッカー選手権群馬県大会決勝が12日、群馬県立敷島公園サッカー・ラグビー場で行われ、6連覇を目指す王者・前橋育英と桐生一が激突。2点ビハインドを追いついた桐生一が、延長前半9分にMF金田理央(3年)が決めた決勝ゴールによって3-2で勝利し、全国選手権初出場を決めた。

 ついに前育の壁を突破した。桐生一は昨年と08年の決勝で前橋育英に初Vの夢を潰されるなど過去5年間のうち3度、前橋育英に行く手を遮られていた。その間、5連覇を達成していた絶対王者に今回も2点を先取される苦しい展開。前半23分にFW外山凌(2年)に個人技からシュートへと持ち込まれ、そのこぼれ球をFW斎藤裕志(3年)に押し込まれた。後半4分にはザスパ草津加入内定のMF横山翔平(3年)の突破を止めきれずにPKを与えると、CB新谷佳紀(3年)に右足シュートを叩き込まれた。だが小林勉総監督が「中から声を出して盛り上げることができる」と評する今年のチームはあきらめない。残り10分からの大逆転劇でついに難敵を沈めた。

 後半28分、桐生一は交代出場ながら右サイドで躍動していた宮崎陽(3年)がタッチライン際での突破でMF白石智之(3年)のファウルを誘い、FKを獲得。横山とともにそのテクニックを活かしたドリブルで驚異となっていた白石は2枚目の警告を受けて退場してしまう。それまで余裕すら感じられるほど試合を支配していた前橋育英だったが、これを境に急失速。一方の桐生一は劣勢ながらもキーマンのMF池田稔樹やMF磯部亮太(ともに3年)がダイナミックにボールを動かし、アルビレックス新潟加入内定のU-17W杯日本代表FW鈴木武蔵(3年)の驚異的なスピードを活かしたドリブル突破も加えてビッグチャンスをつくり出していた。ただ鈴木の決定的なヘディングシュートがGKに阻まれ、ワンツーから右SB古沢圭希(3年)が放った右足シュートがゴール左へ外れるなど1点が遠かった。後半18分には金田の右足FKがクロスバーを直撃。それでも数的優位をつかんだ直後のゴールが一気に桐生一へと流れを傾ける。

 30分、中盤でボールを拾ったFW横堀勝也(3年)が左中間からライナー性の縦パスを放り込むと、2列目から飛び込んだ池田が点で合わせるファインゴール。ゴール右隅へ吸い込まれた追撃弾で乗った桐生一は、ギアチェンジすることのできない前橋育英に襲い掛かると37分、クイックでの左スローインから金田がDFを振り切ってラストパスを入れる。これを中央へ飛び込んだ宮崎が右足ダイレクトで押し込み同点に追いついた。沸騰する桐生一スタンド。2-2で突入した延長戦でも前橋育英にこの勢いを止める術はなかった。

 個人でもボールを運ぶことのできる相手の高い技術に苦しんできたが、これを人数をかけて潰した桐生一は相手をシュートエリアへ近づけない。そして鈴木のダイビングヘッドや磯部の左足シュートで逆転の匂いを漂わせると延長前半9分、磯部の右FKをファーサイドの池田が頭で折り返すサインプレー。2列目から走りこんだ金田の左足シュートは一度GKに阻まれたが、こぼれ球にいち早く反応した金田の再び放った左足シュートが新王者誕生を告げるゴールを生み出した。

 この後は鈴木の独壇場。相手選手を後方から追い越すほど別次元のスピードとスタミナで加速するジャマイカ系ストライカーが、タイガー軍団のディフェンス陣を粉砕する。仕掛けるたびに独力でPAまで侵入。シュートがことごとく枠をわずかに外れ、ダメ押すことはできなかった。それでも「速ぇー」と目を丸くしていた地元の少年ファンや後輩たちに強烈なインパクトを与えた鈴木は、試合終了後、興奮する人の波に囲まれるほどのスーパープレーを連発していた。

 サインプレーからの得点や交代カードが当たった桐生一。そして鈴木の先発起用も大成功だった。右膝の負傷明けだった鈴木はこの日が今大会初先発。「(選手権前も)1試合フルで使ったことがない」と小林総監督は説明していたが、U-17代表とチームとの往復に加えて怪我も抱えていた鈴木に頼るのではなく、桐生一は鈴木抜きでも戦えるチームをつくってきた。そして最後の大一番でプラスアルファになる可能性のある鈴木の先発起用に踏み切った。その鈴木は「自分が頑張ればチームのプラスになる。自分が動くことでマイナスになることはないと思って走った」。“チームで活躍できない”レッテルを剥がして自分自身の実力も証明したかった背番号10は、全国総体8強の前橋育英相手に圧巻の突破や空中戦の強さで衝撃的な活躍。初の全国選手権でも十分に期待できるハイパフォーマンスを100分間続けてみせた。

 総合力で前橋育英にはかなわない。だが柏レイソルU-18などプリンスリーグ関東2部での試合から前橋育英戦を意識した戦いをしてきた。また1日20kmを越える「心の修行」(鈴木)という走りで体力と精神力を磨いてきた。金田が「育英は県内では別格。そこしか見ていなかった」という大一番で劣勢になってもあきらめずに幸運も引き寄せた桐生一が、大逆転劇でついに歴史を変えた。
 
[写真]桐生一初V。鈴木は試合後、サッカー少年たちからも祝福されていた

(取材・文 吉田太郎)

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