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[選手権予選]インハイ準Vの静学に3-0!注目MF風間宏矢擁する名門・清水商が衝撃的な「復権」!

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[11.27 第90回全国高校選手権静岡県大会決勝 静岡学園0-3清水商 アウスタ]

 全国V3度の名門・清水商が11年ぶりの全国へ!! 第90回全国高校サッカー選手権静岡県大会決勝が27日、アウトソーシングスタジアム日本平で開催され、今夏の全国高校総体準優勝の静岡学園と清水商が激突。清水商がMF川尻卓(3年)の先制ゴールなど3-0で勝利し、00年度以来11年ぶりの全国大会出場を決めた。12月30日に開幕する全国高校選手権はこれで出場全48校が決定。清水商は12月31日の1回戦で熊本県代表のルーテル学院と対戦する。

 鹿島入り内定のSB伊東幸敏主将やU-17日本代表MF長谷川竜也(ともに3年)ら擁し、全国大会のV候補と見られた静岡学園の川口修監督が「完敗です」と認める内容。10年間全国から遠ざかっていた名門が衝撃的な「復権」を果たした。日本平に響き渡る「大瀧コール」に促され、GK川口能活(現磐田)やMF小野伸二(現清水)らを育てた名将・大瀧雅良監督が青い輪の中に駆け込む。来年3月31日いっぱいで定年を迎える大瀧監督が宙を舞うと、名門復活を果たしたイレブンは凱歌を歌って喜びを爆発させた。元日本代表MFの父・八宏氏(現筑波大監督)、兄でドイツ・コブレンツでプレーする宏希に続いて清水商でエースを務めるU-18日本代表候補MF風間宏矢主将は「プレッシャーは常にあった。(特に自分は)どんな時でも見られている。でも応援してくれる人たちに勇気をもらってきた。仲間たちとまたやれるのはうれしい」と満面の笑顔を見せていた。

 立ち上がりは静岡学園が完全にボールを支配。MF秋山一輝(3年)とMF柴田則幸(2年)が動き回ってボールに関わり、独特のリズムのショートパス、ドリブルで清水商のディフェンス陣を振り回す。アタッキングエリアでは長谷川のスルーパスやU-17代表候補MF渡辺隼(2年)のヒールパスなどアイディアを交えて局面を打開するプレーもあった。ただ前半14分にサインプレーの右CKからCB木本恭生(3年)が放った決定的な右足シュートはゴール上でDFがブロック。直後に右中間から渡辺の放った左足FKがクロスバーの上を越えると、その後は相手のテンポに慣れた清水商が主導権を強引に引き寄せる。

「攻められる時間が長くなるのは分かっていた。ただ余裕を与えてしまうと、向こうはテクニックがある。1対1ではついていこうと徹底していた」とDFリーダーのCB新井一耀(3年)。ドリブルで危険な地域に飛び込んでくる静岡学園を本来は風間と2シャドーでコンビを組む川尻が「静学は前半から来る。自分が倒れても12番目、13番目の選手がやってくれる。足が攣る覚悟でやっていた」と猛烈なスピードでプレッシャーをかけてアンカーのMF青木翼(3年)やディフェンスラインと挟み込む。ボールを持たれても各選手が必ず身体を当てて静岡学園に思い通りのプレーをさせなかった。そして自由にボールを動かせなくなり、停滞した静岡学園に浴びせた強烈カウンター。前半28分、清水商は敵陣で川尻が相手のパスをカットしてスルーパスを出す。これに反応した風間がDFのスライディングタックルをかわして一気に左サイドをえぐると、その折り返しに走りこんだ川尻が左足ダイレクトシュートをゴール右隅へと流し込んだ。

 静岡学園はすぐさま反撃に転じるが、清水商は左MF遠藤維也(3年)が空中戦で完勝し、前を向いたら容易に止められない2年生FW佐野翼や左ウイング中田智樹(3年)がキープして相手にボールを渡さない。そしてやや集中力を欠いた静岡学園に対し、清水商は前半終了間際に大きな、大きな2点目のゴール。左スローインから仕掛けた風間がクロスボールを上げると、中央のDF間にフリーで飛び込んだ遠藤が完璧なヘディングシュートを決めて2-0へと突き放した。

 清水商は後半立ち上がりにもカウンターからダイナミックにボールを動かして風間が決定的なシュートを連発。静岡学園は後半9分、12分に攻撃カードを切ると、13分には長谷川のヒールパスから伊東が左足シュートを放つ。ただ勝利への意欲で上回る清水商は低迷していたここ数年見られなかったような厳しさで隙を見せない。そして清水商は14分、佐野を起点に抜け出した風間がそのままPAまで持ち込み、勝負を決定付ける右足シュートを流し込む。この後は3点リードされている静岡学園が反撃しようにも、全く清水商の守備ブロックの中に入れない時間が続いた。伊東のシュートを最後にシュートを打つことのできない静岡学園は後半36分に木本が2枚目の警告を受けて退場。結局、強烈なカウンターを武器に、静岡学園の2倍に当たるシュート16本を放った清水商が3-0で11年ぶりとなる全国切符を獲得した。

 学校再編統合によって2年後の13年4月に県立庵原高と統合し、静岡市立の新しい高校としてスタートすることが決まっている清水商。「キヨショー」の愛称で親しまれた名門もその名で全国を戦うチャンスは残りわずかしかない。そして大瀧監督のラストイヤーにつかんだ全国切符。涙の指揮官は「ここで校歌を聞けて、幸せな教員です」。過去10年は静岡学園と藤枝東にそれぞれ4度の優勝を許すなど勝てない時期が続いたが、ついに王国制覇。全国で勝つためにはこの日見せたパフォーマンスを安定して出せるようになることが必要だ。それでも日本一を狙う実力があることを証明した静学撃破。数々の日本代表選手を輩出し、全日本ユース選手権優勝5回、全国総体優勝4回など「特別な歴史」を持つ名門が「キヨショー」の名を再び全国へ轟かせることを目指して、待ちに待った選手権の舞台に立つ。 

[写真]大会MVPを獲得した風間が優勝カップを頭上に掲げて笑顔

(取材・文 吉田太郎)
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