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[クラブW杯]菅野がPKストップなど好セーブ連発で柏を日本勢3クラブ連続の4強に導く、「1球目に懸けていた」

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[12.11 クラブW杯準々決勝 柏1-1(PK4-3)モンテレイ 豊田ス]

 昨年はJ2だった柏レイソルが“世界ベスト4”をつかんだ。1-1で延長に突入し、120分間を超える死闘の末のPK戦(4-3)で北中米カリブ海王者のモンテレイ(メキシコ)を下し、4強入りを果たした。日本勢としては07年の浦和、08年のG大阪に続く準決勝進出。柏も日本屈指の名門に負けない成績を残した。

 ヒーローはもちろん全員だが、中でもGK菅野孝憲の活躍が光った。「1球目に懸けていた。それを止められて良かった。読んでいた? いえ、入り方とかを見て決めた。集中して対応できたのが良かった」。1-1のまま突入したPK戦。先行はモンテレイで、キッカーは主将のMFルイス・ペレスだった。チームの柱の選手のキックをセーブすれば、相手に与えるダメージは大きい。菅野はそれを十分に理解していた。左下に飛んできたシュートに鋭く反応して弾き出した。

 PK戦だけではなかった。立ち上がりから相手の猛攻を受けたが、菅野が立ちはだかった。「相手は(早い時間に点を取ろうと)そういう狙いだったと思う。一番最初のピンチを落ち着いて止められた。最初の15分間を落ち着いてできたことが一番の(勝利の)要因だと思う」。開始2分、相手のエース・チリ代表FWウンベルト・スアソにPA内に進入されてチャンスを作られ、立て続けに2本のシュートを打た。これを菅野が連続ストップ。その後、チームは少しずつ落ち着きを取り戻し、タレント豊富なモンテレイと互角に渡り合った。菅野のプレーがチームに勇気を与えた。

 昨年はJ2を戦った柏が、世界的なタレントを誇るチームに互角以上に渡り合った。試合前、ネルシーニョ監督は「去年は岡山や徳島にいってプレーしていた。それが今、こういう舞台で試合ができているんだ」などと話して選手を鼓舞。「勝てばサントスと戦える」などとプレッシャーをかけるのではなく、クラブW杯で戦えることに幸せを感じながらプレーできるような言葉をかけ、選手をリラックスさせた。

「サントスのことは考えていなかった。モンテレイに勝つことだけを考えてプレーした」と選手は口々に明かしたが、指揮官の思い通り固くならず、持てる力のすべてを出しきった。120分間、足を止めることなく必死に走り、チーム一丸で勝利を求めた。菅野は「最後まで足を止めることなく、チャンスを信じて戦っていた。後ろから見ていて心強かった」とフィールドプレーヤーをねぎらった。ベンチで見ていたFW北嶋秀朗も「すごいよ。強いね」とチームメイトを絶賛した。

 次はブラジルの名門サントスと対戦する。ブラジル人助っ人コンビやネルシーニョ監督はもちろん、選手みんなが楽しみと声をはずませたが、菅野は舞い上がることはない。菅野は「サントスだろうと、大学生だろうと自分がやることに変わりはない。変わらずにやれていることが、この結果につながっている。サントスは格上だけど、サッカーは強いチームやいい選手がいれば勝てるわけじゃない。勝ったチームが強い」と闘志を燃やした。

 東日本大震災という歴史的な災害が起きた2011年。菅野には、少しでも周囲に元気を与えたいという思いがある。東北はもちろん、柏は一部エリアで高い放射線数値が出たこともあり、「柏も風評被害を受けた。柏を代表して戦っている。少しでも元気を与えられたら」という。サントス戦も菅野の出番が多いことは確実。守護神は再びビッグセーブでチームに勢いをもたらす。

[写真]PKをセーブした菅野。このセーブで“勝利への流れ”をたぐり寄せた

(取材・文 近藤安弘)

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