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[クラブW杯]ネイマールの目に涙、悔しさいっぱいの完敗も「勉強になった」

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[12.18 クラブW杯決勝 サントス0-4バルセロナ 横浜]
 呆然と立ち尽くした。歓喜のバルセロナイレブンも、目に入らない。いや、目に入れたくはなかった。悔しさ、不甲斐無さ、とにかく屈辱的な敗退だった。強いとは思っていたが、まさかこれほどとは……。サントスは王国の威信をかけて戦ったが、バルセロナに0-4の完敗。エースFWネイマールの目はうっすらと赤く濡れていた。
「バルセロナは、レベルが高かった。ひとつ言えることは、勉強になったということ。それ以上はコメントできない……」
 試合後、ミックズゾーンに現れたネイマール。ドーピング検査に指名されたため、試合後1時間半ほど経って報道陣の前に姿を現したが、そのくらいの時間では、頭の中は整理できていないようだった。質問されても、多くを答えたくなかった。「とにかく、勉強になった」。19歳の若き“ニュー・キング”は『勉強』という言葉を何度も繰り返した。
 14日の柏戦では、これぞワールドクラスの振り抜きで、左足でビューティフルゴールを決めたが、この日は、思うようにボールを触れなかった。味方が良い形でボールをくれなかったこともあるが、シュートまでいけない。得意のドリブルができない。サントスのボール支配率はわずか29%。シュート数もバルセロナの半分の8本。ネイマールは2本しか打てなかった。
 前半8分、カウンターからボルジェス、ガンソとつないでネイマールにボールが渡ったが、DFにつぶされ。後半2分にはボルジェスの右クロスに、決して得意とは言えない頭を合わせた。しかし、大きく上に外れる。これはこの試合のネイマールの初シュート。だが、勢いに乗ることはできないものだった。後半12分には決定機を決められない。ネイマールはスルーパスに抜け出してGK1対1となるが、GKバルデスに足でセーブされた。試合中は自分へか、それとも上手くパスが繋げないチームへか、何度も苛立つ姿を見せた。
 『メッシvsネイマール』。世間は大会前からこう注目していた。ネイマールは「明日はメッシ対ネイマールではない。明日はサントス対バルセロナだ。選手個人個人の戦いではない。チームとチームの対決だ」と加熱する報道陣の声を牽制。「今はメッシが世界一の選手だ」「いくつかのメッシのプレーを真似することはある」などとリップサービスもまじえてコメントしていた。涼しい顔で話していたが、当然、負けたくない気持ちがあった。それだけに、余計に悔しかった。
 だが、ネイマールの選手としての価値がこれで下がるわけではない。サントスのラマリョ監督は試合後の会見で「メッシはもう長い間、別世界の選手で、ナンバーワンの選手だ。ネイマールはまだ成長過程にある選手だ」と強調した。メッシはすでに24歳。W杯も2度経験し、サッカー選手としては最も良い時期にきている。一方のネイマールはまだ19歳で、W杯は未体験。ブラジル代表自体も2010年8月に初キャプを経験したばかりだ。これからいくらでも、メッシに追いつき、追い越すチャンスはあるはずだ。
「私はロッカールームに帰って、選手たちにこう言った。来年、ここに来られるように頑張ろうと。来年、戻って来られるように頑張りたい。バルセロナはいないかもしれないが、また世界一を目指して戦いたい。夢は夢として追い続けたい」とラマリョ監督は会見で、選手たちに再びブラジル、南米を勝ち抜いてクラブW杯に出場しようと呼びかけたことを明かした。ネイマールは2014年シーズンまで契約が残っており、来年もサントスの一員として戦う。「勉強になった」と何度も口にした19歳は、この悔しさを活かしてもう一度、世界一に挑戦する。
(取材・文 近藤安弘)

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