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[選手権]注目FWインタビュー3_桐生一鈴木武蔵「違いを見せないといけない」

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 高校選手権が本日開幕! 12月30日に開幕する第90回全国高校サッカー選手権の注目ストライカーたちのインタビュー特集最終回は初出場・桐生一(群馬)のU-17W杯日本代表FW鈴木武蔵選手(3年)です。ジャマイカ人の父を持つFWは桁外れのスピードを持つ「大器」。これまでチームでの活躍がほとんどできていなかったが、群馬県予選決勝では規格外のパワーとスピードによって、特に試合終盤は強豪・前橋育英DF陣をひとりで粉砕するほどのパフォーマンスを発揮した。県決勝同様のプレーができれば間違いなく今大会のスター候補。ですでににアルビレックス新潟入りを決めた注目アタッカーは初の全国大会でどのような“衝撃”を与えるのか。

―選手権出場が決まって反響は凄かったのでは?
「はい。声はかけられるけど、気にしないようにしないようにしています。それに反響はそこまでではないですよ。街ではほとんど声をかけられないですし」

―初出場。予選で勝った後はフワフワした感じにはならなかった?
「実感なかったですね。一週間くらいは本当に勝ったのかなって。でもその後はちゃんと切り替えて出来て『全国で戦えるチームにならないといけない』と、一段と練習も厳しくなりました」

―予選で優勝してからの2か月間でチームはすごく成長したと聞いたけれど
「全然違います。凄い変わっています。コンビネーションがお互いを見て動けるようになったし、細かい部分までこだわれるようになっている。最終段階に来ているなと感じています」

―予選決勝で全国トップレベルの前橋育英に勝ったことが影響している
「相手の疲れとかもあると思うけれど、(全国大会直前に)練習試合で戦った相手は(前橋)育英の比じゃなかった。関東勢と当たらなければ、自分たちも行けるかなと思っています。育英に勝って自信もついたし、1回戦とかじゃ負けられないという気持ちがありますね」

―これまでの桐生一は武蔵選手の知名度が優先していた
「みんなで全国に出て有名になりたいなという気持ちがありました。強豪の育英を倒せば全国でそれだけ注目されるんで。実際に出場できたのはまとまっていたからですかね。王様みたいな人はいないですし、試合に出れないから腐る人もいない。ちょうどいい感じに仲いい。このチームならば育英を倒せるかなと思っていた」

―予選決勝の前橋育英戦は得点こそなかったけれど、実力を証明するものだった
「代表とか行って自分に自信とかついてきましたし、チームのためにもやらないといけないと思った。自分の中であの時(決勝で)取れなかったので、どこで点取れるか結構考えて。どうやったら点が取れる場所に行けるかというのは、この1か月間くらいずっと考えて、泥臭く行ける部分は出てきたし、成長したと思う。ゴールにもっと貪欲になりました」

―県決勝はなかったが強烈なミドルもある
「試合になると力が入ってしまうけど、選手権では打っていきたい。以前にひざを痛めていた時期あって、あまり力入れて打てない時期があった。(強いシュートの要因は)それで力入れないで打っていたら、力を入れなくても強いシュートが打てるようになった」

―選手権は武蔵選手にとってどういうものだった?
「憧れでしたね。考えても見なかった新たな世界という感じでしたね。小さい頃からお正月にこたつで見ていたその大会に自分が出れると思うと、本当にうれしく思える」

―今月のU-18代表イスラエル遠征では『選手権へ向けて自信をつかんできたい』と言っていたが
「とてもいい勉強になりましたね。海外の身体の当たりとか日本人じゃ考えないことをやるなぁという感じでした。ディフェンスの仕方とかタイミングをずらして取りに来たりしてきた。それがやりづらかった。でも裏への抜け出しとかは出せましたし、ドリブルでも抜けたシーンがあった。そういった部分では全然通用したと思いました」

―選手権で武蔵選手を見る方々にはどんなところを見てほしい
「裏へのスピードある抜け出しとかサイドへの突破とか。あとはゴールをするところを見せたい」

―U-17W杯メンバーでは青森山田の室屋選手と2人だけの出場。プロ入りする選手としても注目を集める
「世界を知っている人間は違いを見せないといけない。自分はプロになる身なんで、他の選手とかに絶対に負けちゃいけない。意識もある。プロになるために高校生とかに負けて終わるというのはダメ。この選手権で結果を出してプロというスタートラインに立ってからも結果を出したい」

―U-17W杯はビッグクラブも注目したと言う報道があった。身体能力の高さは高校生の中では別格だと思うが
「まだまだ自分は点を取らないと海外へ行ってもクビになっちゃう。身体能力の違いはあまりしないです。本当、そんなに高いとか思わないんですよ。でもたまに自分でも『速ぇー』と思う日がある。動いた感じで調子いい時は『絶対にいける』というか自分でも走っていて『速ぇー』と思える時がありますね」

―『武蔵』と刺繍されているスパイクがある
「名前、一番好きだし格好いいんで。刺繍にしたら『武蔵』が凄く格好良かった。名前をつけてくれたお母さんに感謝です」

―スピードが武器だからスパイクも軽いヤツを?
「スパイクは軽さとフィット感を優先して選んでいる。これ(発売されたばかりのadizero f50 by miCoach)は軽くて凄く速く走れている感じがするんです。(自分自身で数値を計測できるテクノロジーがついているこのスパイクで)ボクは(まだ)数値は測ってないですけど、自分のスピードを知れるし、スピードやスタミナだったりの数値を知ることで弱点やいいところを練習で伸ばしたりできるのはいいと思う」

―スパイクもやっぱり速さにこだわるんだ
「これはフィット感も、色合いもいいんで。自分は赤とか黄色とか好きなんでいい。目立ちますし、目立つとその方が速く見えるじゃないですか。黒より絶対にその方がいい」

―自身の境遇をプラスにしている
「小中時代は悩んだ時期もあったけれど、今は逆にこっちの方が筋肉の質とか日本人とは違うんで、得している部分があると思いますね。日本人の国籍、日本人であって外国人の身体を持っているというのは凄い得だなと思っています」

―チームではムードメーカー
「クラスでは一番うるさいと言われますね。普段は誰かいじったり、テレビの話をしたりとか。最近流行っているのは、(5本の)指先を(つまむように)合わせて出すと人って見ちゃうじゃないですか。これで『ハイ、見た~』とか面白がって(苦笑)。本当、練習中も説明つかないような、変なことばかりやっています」

―今年は5月のスロバキア遠征で大怪我したり大変な一年に
「肋骨2本と背骨の腰椎と3箇所折って。ノルウェー戦で裏に抜けてきたボールに行こうとしたらGKが出てきたんで、競ろうとしたらGKのひざが入ってしまった。その前にじん帯も怪我していたので、スロバキアも20分しか出ないということになっていたんですけど、20分しか出ないのに、交代選手もピッチサイドに出ていたのにそこで怪我をしちゃった。でも1か月くらいで痛みが消えて、コンディション的には万全ではなかったですけど、ありがたいことに(U-17W杯で)代表に呼んでもらえたのは良かった」

―その後はチームでも状態が上がらなかった
「身体の調子も悪いし、チームに馴染めない状況でした。でも代表(U-17W杯)が終わってチームを抜けることが少なくなって、チームのことがより一層分かったかなという感じですね。(今はエースとして)活躍したいですね」

―それを乗り越えての選手権。目標は
「選手権の目標は(山梨学院の白崎)凌兵に勝ちたいですね。関東選抜では2人で結構点を取って。今もたまに連絡を取っている。凌兵は点取って絶対に活躍してくるんで、その凌兵に負けないように。一緒にやっている中で2人ともプロに行ったんで、ライバルで行きたいです。そして優勝します。凌兵の方が全然上手い。自分は謙虚に頑張ります」

(取材・文 吉田太郎)
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