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[選手権]富山南、初出場初勝利!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 富山南2(PK5-4)2佐賀東 等々力]

 シーソーゲームの末、PK戦を制した富山南(富山)が初出場初勝利を記録した。先制をされても慌てずゆっくりと試合をコントロールし、一度は逆転してみせた佐賀東(佐賀)だったが最後は勝利の女神に振り向いてもらえることができなかった。勝利した富山南は1月2日の2回戦、本日と同じ等々力で奈良育英(奈良)と対戦する。

 初戦の緊張がぬぐえない立ち上がり、先に平常心に戻ったかに見えたのは佐賀東だ。小気味のよいショートパスから、最終ライン裏へのスルーパスや主に左へのサイドチェンジからゴールを狙う。ミスはあるものの、チームの意思疎通はできている。
一方富山南は3年生が4人と若いチーム。しかし競り合いにも負けない。ボールを落ち着かせるには至らないものの、大きく崩れることもない。

 全国大会の初戦で何よりも重要になる先制点が入ったのは、前半19分、富山南だった。
FW大原史裕(2年)がFW清水恒輔(3年)が頭で落としたボールを迷うことなくシュート。これが豪快に決まった。

 これで富山南ペースになるかと思いきや、佐賀東は慌てない。自分たちのサッカーを我慢強く続ける。何度チャンスを逃しても、チームとしての隊列が乱れることがない。

 その佐賀東の忍耐が実を結んだのが後半17分だ。左サイドからドリブルで切り込んだ途中出場のMF吉田慎吾(3年)が同点弾を右足で叩き込む。ついに突破口を開いた佐賀東は3分後に、これも途中出場でU-17代表のFW平秀斗(2年)が、飛び出した相手GKをすりぬけ、逆転ゴールを奪う。
 佐賀東が誇る途中出場の2選手が、今度はがっちりと試合を引き寄せる。

 だが、富山南もただでは終わらない。
「スカウティングをしていてU-17の平選手もスタメンでなく、予選では9番(今大会は14番)をつけていたはずの吉田選手も出てない。後半出てきて、やっと真剣になってくれたと思った。1-2になってもいける気持ちはあった。3点目を取られずよかった」と富山南の前田篤監督は語る。

 富山南には劣勢の場合の攻撃オプションがひとつ、あった。最終ラインのDF土田輝(3年)を右サイドに上げ、パワープレーに持ち込むというもの。この変化が、佐賀東のDFラインの意識を中央から分散させ、後半34分のFW大原史裕(2年)のこの試合2点目、ゴール中央からの同点ゴールにつながったといえる。

 PK戦は佐賀東4人目のDF長薗真之輔(2年)がキックを左ポストに当ててしまい、キックを全員成功させた富山南の勝利となった。

 富山南の前田監督は「80分集中を切らすことなく勝利を目指した結果」と言い、佐賀東の蒲原晶明監督は「スタートはベストメンバーではなかった。長い大会を逆算して選手を起用した」と言った。
 佐賀東はゴールを決めた吉田と平が途中出場、守備の中軸、DF岩崎誠(3年)は使わずじまい。我慢強いサッカーを続け、一度は試合をものにしかけただけに、スタメンからフルメンバーであったら結果は違ったものになっていたかもしれない。
 対して富山南はまさに一戦必勝の構え。少ないチャンスを決めきるしぶとさと、試合のペースとは関係なくゴールしてみせるずぶとさがあった。

 両チームの異なる思惑が奇妙な均衡状態を作り出したこの試合。最後に富山南のキャプテン、MF田村裕真(2年)の言葉が印象的だった。
「1トップの清水くんにボールを当てて、そこから展開するシンプルな意思統一で試合に臨みました。自分たちは今大会の(出場チームで)上位じゃないし、きっと下から数えた方が早いほどの実力、弱い。だからシンプルにやっていこうと」

 両チームの戦術に正解も不正解もないし、比較できる類のものではない。でもこの試合の勝利の女神は、この試合を一心不乱に駆ける男たちに微笑んだ。

[写真]初陣勝利を喜ぶ富山南イレブン
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文/伊藤亮)


【特設】高校選手権2011

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