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[選手権]“PK職人”山石が奮闘! 古豪・山陽が猛攻をしのいでPK戦で初戦突破

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[12.31 全国高校選手権1回戦 西目0-0(PK3-4)山陽 NACK]

 第90回全国高校サッカー選手権は31日に各地で1回戦2日目を行い、埼玉のNACK5スタジアム大宮の第1試合では、6年ぶり12回目出場の西目(秋田)と12年ぶり8回目の山陽(広島)が対戦した。0-0のスコアレスのままPK戦に突入した中、山陽が4-3で2回戦進出を果たした。1967年度大会に優勝(洛北との両校優勝)している古豪は、2回戦で名門の清水商(静岡)と対戦する。

 古豪の山陽が粘り強く守り、勝利を手にした。スコレスでPK戦に突入した一戦。後半39分にPK戦に備えて投入されたGK山石寛英(3年)が西目の2番手・渡部裕幸(3年)のキックをセーブするなど期待に応えた。5番手を務めたエースFW萬代翼(3年)がきっちりと決めて4-3で勝利をつかんだ。山陽としては2大会ぶり、1992年度の第71回大会以来となる選手権勝利をつかんだ。

「緊張したのか、動きが硬かったですね。予想以上に、西目の技術が高かった。前半に失点しなかったのが良かった。セカンドボールを拾われて、攻撃させてもらえなかった。相手のシュートミスがあったり、運が良かったです」

 山陽の竹本浩監督は安堵の表情を浮かべていた。序盤から圧倒的に攻め込まれ、いつ失点してもおかしくない状態だった。前半のシュート数は2対7だったが、それ以上にボールを支配された。広島県予選は3-4-3の攻撃サッカーで勝ち上がってきたが、この日はまるで5-4-1の状態。「めっちゃ緊張した。広島県はこれまで結果を残しているし、勝ち上がらないといけないというプレッシャーがあった。それに足元が滑った。ピッチが最初、凍っていた」と萬代が明かしたが、思うようなサッカーができなかった。

 そんな中、DF大江真輔(2年)をスイーパーとした3バックが耐え抜いた。「これくらい攻められることは想定していた。自分は一人余って、前の選手に声をかけてマークをはめて、カバーしようとやった。相手は個の力があったけど、負ける気はしなかった。守り切らないと、前の選手も安心して攻撃できないので頑張った」と大江。強気な守備の要を中心とした5バック+ダブルボランチが必死に跳ね返した。

 前半26分、西目のCKからDF高橋マイカル(3年)にヘディングシュートを打たれたが、DFが体を張ってクリア。同36分にはFKのピンチで決められかけたが、正守護神二井建治(3年)の背筋痛で出番が回ってきたGK大浦翔太(3年)が好セーブを見せるなど奮闘。運にも助けられ、前半を何とか0でしのいだ。これが大きかった。

 ハーフタイム。竹本監督が「元気がないよ! 緊張もそろそろとけただろ!! もっとアグレッシブにやならいといけないぞ!」と選手にゲキを飛ばした。しかし、ロッカールームに暗い雰囲気はない。選手たちの表情は明るかった。本来は攻撃的なチームが守備面で結果を残せたことで、全国大会でもやれる自信が芽生えたという。戦術的な変更はなく、セカンドボールをしっかりと拾うようにと指示を受けた選手たちは、後半に入ってリズムを取り戻した。

 シュート数は相変わらず3対7と劣勢だったが、前半よりはボールもつなげ、カウンターが繰り出せた。後半19分には萬代の落としからMF三谷幸聖(2年)がシュートを放ったほか、左サイドで縦パスに途中出場FW西川拓未(2年)が抜け出してクロス。MF田口翔輝(3年)がシュートまで行くなど決定機も作った。後半34分にもゴールまでパスをつないで、最後はエースの萬代がGKと1対1でシュートを放った。決められなかったが、前半とは全く違うチームのようだった。

 そんな中で迎えたPK戦。チームメイトから“PK職人”として期待されているGK山石が奮闘した。ヒーローは「勝てて嬉しかった。無我夢中でプレーしていました。PKになるまでは緊張していたけど、始まってからはいつも通りのプレーができました」と納得の表情を見せた。大江は「確実に、この試合で成長できたと思う」と胸を張った。チームは粘りを見せられたことで大きな自信をつけた。

 勝利を捧げたい人がいた。山陽は1967年度の第46回大会で優勝しているが、今年10月、当時の監督だった渡部英麿さん(元日本代表GK)が膵臓癌のため87歳で亡くなられた。渡部さんは神主でもあり、選手たちは毎年1月2日に渡部さんの邇保姫神社(広島市)を参り、必勝祈願をしていた。歴代の選手たちはその際、人生訓やサッカーの話を聞き、心を奮い立たせていた。今の選手もうそう。恩人の弔いのためにも、選手権で一つでも多く勝ちたい思いがあった。

 次の2回戦の相手は、強豪の清水商(静岡)となった。この日は守備陣が頑張っただけに、今度は攻撃陣の奮起が求められる。数回あった決定機を外した萬代は「きょうはDFのおかげで勝てた。厳しい相手だと思うけど、しっかりと決められるようにしたい。ほんと、今日の自分のプレーは悪かったので、決めるところをしっかり決めたい」と気を引き締めた。今度は攻守ともに前半から自分たちのサッカーを展開し、番狂わせを狙うつもりだ。

[写真]古豪・山陽が復活勝利
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 近藤安弘)

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