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[選手権]奈良育英、理想のゲーム運びで快勝!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 帝京大可児0-3奈良育英 等々力]

 奈良育英(奈良)が試合を終始支配し、効果的に得点を重ね快勝した。
 帝京大可児(岐阜)は標榜するトータルフットボールを思い通りに発揮することができず悔しい初戦敗退。奈良育英は1月2日の2回戦で初出場の富山南(富山)と等々力で対戦する。

「前半15分くらいは(緊張で)ロボットだったかな。いいところ(時間帯)で点が取れた。あとは守備。ディフェンスは(これまで)弱かったけど、修正した部分をちゃんとやってくれた」
 奈良育英の上間政彦監督は上機嫌に試合を振り返った。
「ディフェンスの修正点は、“最後までついていく”ということ。ゴール前で仕事をさせないためにです。特に帝京(大可児)さんはフリーな状態を作り出すのがうまかったので。力の差はなかったです、技術的には相手が上です」
 相手の長所を見事に押さえた会心の勝利だったといえる。

 一方、帝京大可児の仲井正剛監督はこう語る。
「相手(奈良育英)はハードワークができる、最後(ゴール前)のディフェンスが固いと思った。でも今大会のテーマは相手のよさを消すのでなく、自分たちのよさをいかに出すかだった。だから自分たちのサッカーができずにロングボールを使う戦術にはしなかった。それをやったら僕も選手も納得できなかったと思う」
あくまでショートパスを主体にした「美しいサッカー」=自分たちの長所で勝負したかった。
「結果としては悔いがある。でも全国の舞台で自分たちのやろうとしたサッカーを貫いたのはよかったと思う。ミスもあったが、前半ラスト10分からそれができた。後半も立ち上がりから修正ができたし、この3年間の意味はあった」

 自分たちの長所を貫くか、相手の長所を消すことを優先するか。シンプルだが勝敗を左右する難しい選択だ。結果として、この試合に関していえば、思惑がはまったのは奈良育英の方だった。

 初戦の緊張感が徐々にとけて先手を握った奈良育英。前半18分、FW黄山晃宏(3年)のロングシュートがDFに当たったこぼれ球を左サイドからしぼっていたMF三國純(3年)が流し込んで先制。チャンスの数を増やしていき、そろそろゴールがほしいタイミングでの先制点だった。
 そして帝京大可児が落ち着いてきた前半も終了に近い35分、今度はセットプレーからFW黄山の蹴ったボールをMF片山公太郎(3年)が頭で合わせて追加点。2点のリードで後半を迎える。

 試合のポイントは後半にあった。
 帝京大可児が本来の持ち味を発揮しはじめる。2点を追うため、リスクをおかして攻勢をしかける。対する奈良育英は守備を基本にカウンターで応戦。次の1点をどちらのチームが奪うかで試合は大きく変わりそうな気配だった。

 帝京大可児はキャプテンのMF三島栄高(3年)を筆頭に、局面でイマジネーションを働かせたショートパスとドリブルで打開を図る。前半に比べ、明らかにゴールの予感が漂ってくる。
 しかし奈良育英は「全員守備、全員攻撃」を実践。集散が早く陣形は常にコンパクト。相手をフリーにさせなければスペースも与えない。三島主将の弟で、U-16代表として注目された帝京大可児のMF三島頌平(1年)の動きもほぼ完璧に抑えてみせた。
 そして後半34分、ついにカウンターが決まる。
 MF三國純(3年)が中盤からボールを持つと、DF一人を引き連れてドリブル。GKが前に出ていると判断するや、30メートル以上はあろうかというループシュートを決めて帝京大可児に引導を渡した。

 常に相手の一歩先に結果を出した奈良育英が3得点&0失点の快勝を得た。
 しかし、もしどこかで帝京大可児が1点を得ることができていれば、ここまで差がつく試合になったかどうかはわからない。その可能性は、ピッチでプレーしていた両校がもっともよくわかっていたようだった。

[写真]奈良育英は3ゴールで快勝発進
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 伊藤亮)


【特設】高校選手権2011

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