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[選手権]「勝てばウチらが全国区!」初出場・市立西宮が高校ナンバー1FW白崎の山梨学院撃破!!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 市立西宮3-2山梨学院 西が丘]

 強風の西が丘で“ジャイアントキリング”が起きた。2日、第90回全国高校サッカー選手権2回戦16試合が行われ、西が丘サッカー場(東京)の第2試合では09年度以来2大会ぶりの日本一を目指す山梨学院(山梨)と初出場の市立西宮(兵庫)が激突。昨年12月にセレッソ大阪へ練習参加しているMF後藤寛太(3年)の2ゴールなどによって3-2で勝った市立西宮が、初戦最大の番狂わせを起こした。市立西宮は3日の3回戦で近大附(大阪)との関西勢対決に臨む。

 “ジャイアントキリング”を果たした市立西宮の大路照彦監督は「選手たちには『勝てばオレらがヒーロー』『勝てばウチらが全国区』だと言っていた。選手たちは(素直に)乗ってくれました。本当に爽快な、信じられへん感じ。兵庫県の公立校に夢を与えられたと思う」。相手は清水エスパルス加入内定の高校ナンバー1FW白崎凌兵主将(3年)やU-18日本代表GK山田修平(3年)らを擁する優勝候補の山梨学院。市立西宮は兵庫県大会準決勝で昨年度日本一の滝川二を3-2で破っているとは言え、下馬評で山梨学院の優位は動かなかった。

 実際、前半は山梨学院の一方的な展開。前半18分にMF荒木克仁(3年)の右CKからMF萱沼優聖(3年)が先制ヘッドを決めると、その後も「切り返しが速くて一回逆を取られたら無理やと思った」と市立西宮CB帷智行主将(3年)が評した白崎らが怒涛の攻撃を繰り広げた。市立西宮に「あそこまでやられるとは思わなかった」「10点取られるかと思った」と言わせるほどに攻め立てていた山梨学院。ただ33分に白崎が反転から決定的なシュートを放つなど前半だけでシュート11本を打ち込んだが、GK中野啄冶(3年)の好守にあうなど、2点目を挙げることができない。

 逆に、なかなかアタッキングサードで前を向くことができず、苦し紛れのようなミドルシュートしか放つことができていなかった市立西宮が、前半終了間際に突如牙を剥く。右サイドからテンポよくPAへボールを運ぶと後藤のポストから飛び込んできたFW大道壮毅(2年)が背後から倒されてPKを獲得。キッカーの帷が右足シュートを一度山田にストップされながらも、こぼれ球を左足でゴールへと押し込んで同点に追いついた。

 後半、強風の風上に立った山梨学院は再び圧力をかけるが、ロングボールが増え、前半は捌き役とフィニッシャー役との両面で怖さを発揮していた白崎もやや意識がゴールへと向かいすぎたか、両ボランチを含めて全体が前がかりになってしまう。攻め急いだ山梨学院に対して先にスコアを動かしたのは市立西宮の方。後半10分、速攻から後藤が右サイドへはたくと、MF新井友博(3年)の折り返しを後藤が右足でゴールへと沈めて逆転に成功する。

 その後も難波祐輔前野俊哉(ともに3年)の両ボランチと最終ラインとが献身的に相手を挟み込んで守る市立西宮は、攻撃面でも相手のプレッシャーが緩くなったことで最終ラインが落ち着いてボールをつなぎ、中盤も前を向く回数が増やす。そして強引に仕掛けてくる相手に何度も逆襲。1年生FW細井優希や後藤のスピードを活かしてボールを大きく動かし、FW指田真宏やSB山口駿太郎(ともに3年)が決定機を迎えた。一方、山梨学院は25分にSB山口聖矢(3年)の右クロスに萱沼が飛び込んだが、ボールはゴール左ポストを直撃。また白崎が強引なドリブル突破で1人、2人とかわすなど技術、パワーで上回る山梨学院はPAへと迫り続けたが、攻勢をスコアに結びつけることができなかった。

 耐えた市立西宮は後半37分、自陣でボールを奪うと高速カウンター。指田から送られた左サイドのスペースへのパスで抜け出した後藤が、DFを振り切ってPAまで持ち込むと、勝敗の行方を大きく傾ける左足シュートをゴールへと流し込んだ。あきらめない山梨学院は3分が表示されたロスタイムの43分に混戦からCB藤原光晴(3年)が追撃ゴールを決めたが時既に遅し。試合再開直後に終了を告げるホイッスルが鳴り響き、市立西宮イレブンが東京の空に拳を突き上げた。

「自分の甘さが出た」と涙の止まらない白崎ら山梨学院イレブンに対し、市立西宮は歓喜を爆発。興奮のスタンドと一体となって最高の結末となった80分間を喜んだ。3年生9人は全て14日に大学入試センター試験を受験予定。参考書を宿舎へ持ち込んで毎日深夜1時、1時半まで受験勉強をしながら大会へ臨んできた。帷は「(受験勉強で培った)精神力が大きかった」と振り返り、大路監督も「ウチは何もないふつうの公立高校。(ただ)ディフェンスは力がある簡単には失点しないと思った。(受験勉強を含めて)メンタルの部分の頑張りでここまでこれたと思う」。

 昨年度優勝の滝川二に続き、一昨年度の日本一である山梨学院も撃破した。この冬最大のインパクトを残している「元・無名の公立校」市立西宮。兵庫県大会16強レベルから一躍全国区となったチームの“物語”はどこまで続くのか。

(取材・文 吉田太郎)

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