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[MOM552]矢板中央GK百合本泰広(3年)_「最初は悔しかった…」"PK戦要員"のGKが殊勲のストップ

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 矢板中央1-1(PK5-3)國學院久我山 埼玉]

 3年間での公式戦出場時間は、わずか2分にも満たないかもしれない。それでもチームが苦しいとき、勝利を呼び込んできたのは矢板中央GK百合本泰広(3年)だった。國學院久我山戦、1-1で迎えた後半ロスタイム2分、PK戦を見据えてピッチへ送られると、3人目のシュートをしっかりストップ。チームはPK5-3で全国8強進出を決めた。

 百合本は、これまでの高校生活でトップチームでの公式戦出場は、県大会準決勝の佐野日大戦のみ。当時もPK戦を見据え、終了間際の約1分ほどピッチに立つとPK5-4の勝利に貢献した。そして、この日もロスタイム2分から出場。試合終了の20分前から「そろそろ出番がくるかも」と思い初め、出場の5分前には「わくわくしてきた」という。チームメイトたちから激励を受け、ピッチに立つと「PK戦ではやってやるという気持ちでいっぱいだった」。そして殊勲のPKストップ。勝利の立役者となった。

 高橋健二監督は「すごく真面目で一生懸命練習に取り組んできてくれていた。県大会の準決勝でもPKを止めて、全国に連れてきてくれた。きょうも彼に託していこうと思った」と百合本の起用理由を話し、「3年間なかなか出場機会がなく、それでも腐らずに真面目にやっていた。そういう選手が最後に結果を出してくれた」と微笑んだ。

 同学年には3人のGKがいる。だからこそ、正守護神を巡っては「競争率が激しい。ケガをしたら一気に突き放される。ケガをしないようにしていたが2年生のときも、今年もケガをして、悔しい思いだった」と百合本は言う。しかし、何気なく遊びでやっていたPK練習を見た指揮官から「PK、上手いな」と声をかけられた。これによって状況は一変する。

 県大会直前に、指揮官から「PK戦を任せる」と一言。正守護神ではなく"PK戦要員"として、起用することを告げられた。これについては「最初から(試合に)出られないのは、悔しくてしょうがなかった」と唇を噛む。それでもチームのためにと奮闘。JチームのPK戦の映像を見るなど、研究を重ねた。そして、全国の舞台で値千金のPKストップ。「自信はありました。本当は3本止めようと思っていた」というとハニかんだ。

 負けず嫌いで研究熱心。学業にもしっかりと取り組んでおり、勉強の成績はクラストップ。サッカーだけでなく、文武両道で3年間努力を重ねてきた。その努力は裏切らず。"PK要員"の守護神が最高の舞台で、チームを8強に導き、主役として輝いた。

(取材・文 片岡涼)

(写真提供『高校サッカー年鑑』)


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