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[選手権]「福島の方が勝たせてくれた」尚志が“3度目の挑戦”で初の8強入り!

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[1.3 全国高校選手権3回戦 桐光学園3-3(PK2-4)尚志 ニッパ球]
 第90回全国高校サッカー選手権は3日に3回戦が行われ、横浜市のニッパツ三ツ沢球技場では桐光学園(神奈川)と尚志(福島)が対戦した。打ち合いのシーソーゲームとなり、3-3の末にPK戦に突入した一戦は、尚志が4-2で勝利。過去2大会連続で16強止まりだったが、3度目の挑戦でついに壁を破り、同校初の8強入りを果たした。5日の準々決勝では桐生第一(群馬)と対戦する。
 2度のリードを奪いながらも追いつかれ、さらに一度は逆転される苦しい展開。それでも尚志は3-3に追いつき、PK戦で初のベスト8をつかんだ。3度目で壁を突き破った仲村浩二監督は「技術は桐光学園のほうが上だった。選手たちはよく走りきってくれた。あきらめないでやろうと話したが、福島県民の方が勝たせてくれた。県民の方に支えられたと思う」と振り返った。
 前半の序盤は両軍ともに“いいところ”まではいくが、なかなか決定機が作れない展開が続いた。しかし、一瞬の仕掛けでチャンスを作った尚志が先制点をつかんだ。前半22分、FW皿良優介(2年)がFW後藤拓也(3年)のパスからシュートを放った。これはクリアされたが、こぼれ球にMF高慶汰(1年)が反応。きっちりと左足で押し込んで1-0リードをもたらした。
 桐光学園は早い時間に手を打ってきた。「右サイドが機能していなかった」(佐熊裕和監督)ため、前半30分にMF小林研人(3年)に代えてMF木場田征実(2年)を投入した。その後、桐光学園はサイドを起点に、尚志はショートカウンタを主体に攻撃を構築した。同37分に桐光学園は連続CKでチャンスを得たが、ゴールは奪えず。前半は尚志の1-0で折り返した。
 OBの中村俊輔藤本淳吾が応援に駆けつけていた桐光学園。試合前に先輩から激励を受けており、早い時間に追い付きたかったが、後半8分に同点にした。右サイドからFW佐野弘樹(3年)のクロスに、DF高橋将吾(3年)がヘディングシュートを放ち1-1と試合を振り出しに戻した。ここから壮絶な点の取り合いが始まる。
 尚志は後半13分、MF山岸祐也(3年)が中央やや左でパスを受け、右足のアウトサイドでPA左に芸術的なスルーパス。長い距離があったがしっかり通し、これを快足を飛ばして受けたFW皿良優介(53分)が左足で決めて2-1とした。桐光学園も負けていない。2分後、CKのこぼれ球からMF生部麦(3年)がシュートを放ち、これが運良く中央のMF橋本裕貴(2年)のもとへ。きっちりと押し込み、再び2-2と同点に持ち込んだ。
 2度目の同点劇。尚志にとっては、厳しい展開となった。そして後半24分、ついに桐光学園が逆転に成功する。左サイドをDF三浦凌(3年)が仕掛けて中に入れ、後半11分から途中出場のFW高橋孝友(3)が右足でしっかりと決めてついにリードを奪った。「逆転されたときは、またベスト16で負けるのかと思った。何とか、この壁を越えたいと思っていた」と尚志の後藤。普通なら、これで気落ちしてしまうところだが、粘りを見せた。
 後半33分、皿良のスルーパスを受けたFW後藤拓也(3年)がドリブル突破。落ち着いて左足で流し込み、土壇場で3-3の同点に追いついた。値千金弾の後藤は「ボールを呼び込んでパスを貰った。決めたときは、とにかくうれしくてあまり覚えていないです。とにかく嬉しかったです」と声を弾ませて振り返ったが、まさに大きなゴールだった。
 そんな中で迎えたPK戦。尚志のGK秋山慧介(2年)が桐生第一の1番手・エースFW佐野弘樹(3年)のキックを止めるなど奮闘。4-2で初のベスト8進出を果たした。歴史を作った仲村監督は「目標は優勝ですけど、今日は決勝戦のつもりでやれ、捨て身でやれと話した。本当によく頑張ってくれました」と選手たちを褒めた。
 なぜ、粘り強い戦いができたのか。やはり、東日本大震災を経験してたくましくなったからだ。福島県郡山市に位置する尚志サッカー部も、甚大な被害受けた。グラウンドにも亀裂が入り、満足のいく練習ができない時期が続いた。そして、自分たちが全国の舞台で活躍し、福島の人を元気づけたい思いがあった。
 前夜は、ミーティングの後、昨年6月に放送された「あの日の携帯メール~3・11アスリートの葛藤と決断~」のDVDをチームのみんなで見て、気持ちを高ぶらせたというイレブン。鹿島アントラーズMF小笠原満男やプロゴルファーの石川遼らアスリートたちが、震災をどう受け止め、スポーツを通じて何ができるのかなどを追ったドキュメントだが、自分たちもこの大会を通して何ができるかをもう一度、考えたという。そんな強い思いが粘り強さにつながったと言える。
「次も勝って、頑張っているところを見せたいと思います」と後藤は強い決意を語った。5日の準々決勝の相手は、桐生第一と戦うことが決まった。相手は攻撃力のある強敵だが、尚志もプレミアリーグイーストで流通経済大柏(千葉)を5-1で下すなど実力はある。まずは4強入りを果たして国立のピッチへ。福島県民の思いも背負って戦う。
(取材・文 近藤安弘)

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