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[選手権]2戦連続ロスタイム同点弾!“ミラクル四中工”が20年ぶり国立4強へ

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 中京大中京2-2(PK1-4)四日市中央工 駒沢]

 “ミラクル四中工”が20年ぶり国立進出! 第90回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、初の4強・国立進出を狙う中京大中京(愛知)と全国制覇した91年度以来となる4強入りを懸けた四日市中央工(三重)が激突。1-2の後半ロスタイムにFW浅野拓磨(2年)の4試合連続となるゴールで追いついた四中工が2-2で突入したPK戦を4-1で制して準決勝進出を決めた。四中工は1月7日の準決勝(国立)で尚志(福島)と対戦する。

 ドラマは「またしても」後半ロスタイムに訪れた。1点を追う四中工は残り5分を切ってから大黒柱のMF國吉祐介主将(3年)を前線へ移行させ、後半18分に投入していたFW金平将輝(3年)と並べる形をとる。176cmの金平と179cmの國吉は半数以上が180cm台の長身選手である中京と比べると小柄だったが、このパワー勝負が功を奏す。2分が提示されたロスタイム突入後の41分、四中工は自陣からCB坂圭祐(1年)が前線へ放り込むと、競り勝った國吉の頭を経由したボールがディフェンスラインの背後へ。信じて飛び込んだ浅野が右足で合わせて劇的な同点ゴールとなった。

 立命館宇治との3回戦でも0-1の後半ロスタイムに左CKから浅野のゴールで同点に追いついている四中工。樋口士郎監督は「何かこの大会は不思議な空気があった。(3回戦の後)『頑張った選手たちのベクトルがひとつになるとこういうことが起きるんだぞ』、と言っていた。(きょうも)何か起こりそうな雰囲気はしていた」。信じて頑張った選手たちが再び起こした「奇跡」。3回戦と同じように持ち込んだPK戦では「PK戦になってこれは勝つやろ、と思った」というGK中村研吾(1年)が相手の1人目・熊谷知紀(3年)のシュートを右へ跳んで左手で弾く。これがクロスバーに当たってゴールの外へ。人生でPK戦無敗という1年生守護神の2戦連続のビッグセーブでリードを奪った四中工に対して中京は、この日先制ゴールを叩き込んでいる3人目のFW宮市剛(1年)の右足シュートもクロスバーの上を越えてしまう。3人連続で成功した四中工は4人目のMF川島裕介(3年)が冷静にシュートを左隅へ流し込んで東海決戦に決着をつけた。

 常に試合をリードしていたのは中京の方だった。3回戦2ゴールの宮市へのロングボールによって相手のディフェンスラインを押し下げると、間延びした四中工の中盤からボールを支配し、連続攻撃を繰り出す。そして前半17分、敵陣でインターセプトした宮市が間髪いれずに右足の弾丸シュートをゴール左隅へ突き刺して先制した。直後にもMF加藤優汰(1年)とのワンツーから宮市が決定的な右足シュートへ持ち込み、熊谷が鋭い突破から決定機を演出する。それでも「開き直って気持ちが前へ前へ行くようになった」(樋口監督)という四中工は浅野やFW田村翔太(2年)がDF間を抜ける絶妙なドリブルなどでチャンスを作り出すと、32分には田村翔のヒールパスで抜け出した浅野が決定的な右足シュート。そして32分、左サイドでボールを受けた國吉が逆サイドのPAへ飛び込んだMF寺尾俊祐(3年)へ完璧なクロスを通すと、PAで寺尾が倒されてPKを獲得した。

 ただ、キッカー・國吉の右足シュートは中京GK平岡侑樹(3年)が左へ跳んでストップ。同点の絶好機を逃した四中工にとっては痛すぎる失敗となったが、國吉が「昨年はメンタルの部分が弱くて負けていたら自分たちで変えられなかった。でも今年はチームでひとつのことをやったり、一体感がある」と評するチームはすぐに主将の失敗をカバーする。35分、右サイドで寺尾がDF2人にプレッシャーを受けながらパスをつなぐと、抜け出した浅野のグラウンダーのラストパスを田村翔が左足で同点ゴールを押し込んだ。

 それでも中京は後半8分、熊谷が獲得したペナルティーアークやや外側からのFKを左SB河合弾(2年)が左足のグラウンダーシュートをゴール左隅へと突き刺して再び勝ち越しに成功する。対する四中工は15分に右サイドでDFを振り切った浅野のクロスをファーサイドの田村翔が折り返すも、中央のMF田村大樹(2年)は合わせられず。16分には田村大の左クロスから浅野が決定的なヘディングシュートを放ち、20分には浅野がDF3人をかわして右クロスまで持ち込むも田村大の決定的なヘディングシュートはGK正面をついた。高い個人技をベースに局面で想像性溢れる崩しを見せていた四中工だったが、同点ゴールは遠かった。それでも土壇場で見せた驚異的な粘り。「レフティモンスター」FW小倉隆史らを擁して優勝した91年度を最後に準々決勝では3連敗していたチームがついに鬼門を破った。

 近年、三重県の優秀な中学生が県外チームを選択することが増えているという。今大会でも市立船橋や中京に三重県出身の名。ただ、現2年生の世代は三重県内の優秀な選手が四中工に憧れて門を叩いてきた。「三重県の優秀な子が残れば全国で勝負できるとぜひ書いてください」と笑った樋口監督は、「(名門の四中工は)ベスト8では『ちょっとがんばったな』ぐらい。20年間『国立行ってないやないか』と言われていた。(選手たちを)国立へ連れて行きたいと思っていた。良かった」。

 名門にとって20年ぶりに臨む国立の準決勝の対戦相手は尚志。國吉は「自分らは『もってる』と思う。でも次はもっとしっかりと勝ちたい」。「ミラクル」で勝つのももちろんいい。だが20年ぶりの国立では、ボールをしっかりと動かして2トップのスピードを活かす自分たちのサッカーをより表現してしっかりと勝利する。

[写真]後半ロスタイム、四日市中央工の浅野が劇的な同点ゴール
(取材・文 吉田太郎)

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