beacon

[MOM561]大分FW牧寛貴(2年)_ラスト5分からの初出場で決勝点となる公式戦初ゴール

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.5 全国高校選手権準々決勝 市立西宮2-3大分 埼玉]

 頭に描いていたイメージどおりの光景が目の前に広がった。2-2の後半35分からピッチに入った大分(大分)のFW牧寛貴(2年)は、残り5分でゴールだけを狙っていた。

「アップのときから先生に『自分がピッチに入ったイメージを持ってアップしておけ』と言われていた。自分が得意な抜け出すプレーをイメージしながらアップしていた。GKが蹴って、最初の競り合いで来るんじゃないかなと思った」

 試合終了間際の後半39分、GKからのロングフィードが競り合いからこぼれると、迷わずゴールに向かってダッシュした。FW武生秀人(3年)がこぼれ球をダイレクトでスルーパス。最終ラインの背後を取った牧にきれいにボールが渡り、GKと1対1になった。

「GKが右に寄っていたのが見えたので、左に蹴ればいけるかなと。蹴った瞬間、入ったと思った」。GKの脇を抜けたボールがゴールネットを揺らす。「最高のゴールです」。牧にとってうれしい公式戦初ゴールが、チームを国立に導く劇的な決勝点となった。

 待望の今大会初出場だった。1回戦から3回戦までは出番なし。大分県大会も「ベンチに入ったり、入らなかったり」で、3回戦の佐伯豊南戦(11-0)では唯一先発したものの、前半途中で交代した。「動きが悪いと、すぐに代えられるので。監督からは何も言われないし、自分でやるしかない」。悔しさをバネにはい上がり、チームの、大分県の歴史を塗り替えるゴールを叩き込んだ。

 大分県勢初の準決勝進出を決めた大分だが、普段、学校のグラウンドは野球部が使っているため、選手たちは自転車で別の練習場に通い、練習を行っている。土のグラウンドはボコボコで、「土が柔らかいから、走るとすぐに穴が空く」。更衣室もシャワーもないため、選手たちは水道の水で体を洗い、屋外で着替える。「冬は水も冷たいし、雨が降っていたら屋根があるところで着替える」という厳しい環境下でトレーニングに励んできた。

「芝のピッチでサッカーができるのは気持ちいい」と話す牧は「途中から出る選手は決めてなんぼだと思うし、きっちりチャンスに決めていきたい。今日みたいに結果を残して、準決勝も勝って、決勝も勝って、優勝したい」と意気込んだ。新たな歴史を切り開く“台風の目”に現れたニューヒーロー。その存在が、さらにチームを勢い付けそうだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
【特設】高校選手権2011

TOP