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[MOM565]市立船橋MF渡辺健斗(2年)_チームメートも知らなかった「名手」が鮮やかな先制FK

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.7 全国高校選手権準決勝 大分1-2市立船橋 国立]

 公式戦で初めて蹴ったFKが国立競技場での全国準決勝。それも「絶対に決められると思った。ゴールしか見えなかった」と言い切る自信があったというから驚きだ。市立船橋の2年生MF渡辺健斗の鮮やかな右足FKが名門を7年ぶりの決勝進出へと導いた。

 19,392人の観衆が訪れた国立競技場を沸かせる一撃が決まったのは前半24分だ。市立船橋はFW和泉竜司(3年)がペナルティーアークでFKを獲得。本来ならばMF菅野将輝やMF杉山丈一郎(ともに3年)がFKのキッカーを担当するところだが、この日は両者ともにベンチスタートだったため、主将の和泉は渡辺をキッカーに指名した。FKまでのインターバルの間に渡辺は朝岡隆蔵監督から攻撃面の指示を受けていたため、ボールをセットしたのはかなり間が空いてから。ただ、淡々と準備してゆっくりと助走に入った背番号23の右足から放たれた一撃は、鮮やかな弧を描くと、クロスバーをかすめてそのままゴールネットへと吸い込まれた。

 公式戦のゴールも初めてという渡辺の千金弾。全国大会を迎えるまではチームメートもその右足の存在を知らなかったというが、大会開幕直前の居残り練習でFKの5本中3本でゴールを決めて、重要なFKキッカーのうちのひとりに任命された。「遊びで蹴ったら上手くいった。(みんなも)『うまいじゃん』と」。中学時代もFKのキッカーは務めていた。ただU-18日本代表候補でもある守護神、積田景介(3年)から奪った練習でのゴールは「積田さんより上手いGKはいない。ふつうに蹴れば入ると思う」という自信となり、国立での貴重な先制弾につながった。

 朝岡監督は渡辺を右SBとして期待してきたが、怪我と3年生の台頭の影響でポジションを失い、千葉県予選は途中出場のみ。だが、今大会初戦で先発を務めると準々決勝、決勝でも運動量と守備力の高さを活かし、3ボランチの一角として連続先発を果たした。守備面だけでなく、鋭い突破など攻撃面でもチームに貢献。千葉県選抜として出場した山口国体ではSBとして全国制覇した(静岡と両チーム優勝)。自らのFK弾で全国2冠に王手を懸けた渡辺は「選手権は(両校優勝ではなく)市船が優勝する」と宣言。チームに突如現れた“名手”が決勝でも日本一奪還のための貴重な武器となる。

(取材・文 吉田太郎)

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