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[選手権]市船の堅守支えた2年生CBコンビが連覇誓う、「この気持ちを味わったら…」

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[1.9 全国高校選手権決勝 市立船橋 2-1(延長)四日市中央工 国立]

 快足2トップを抑え込んだ。市立船橋(千葉)のDF種岡岐将(2年)、DF小出悠太(2年)が、2人で5戦12発のFW浅野拓磨(2年)、FW田村翔太(2年)の四中工2トップをセットプレーによる1失点に封じ、チームを日本一に導いた。

 2年生CBコンビvs2年生2トップ。注目の対決は、四中工が開始1分に先制する意外な幕開けとなった。CKから田村翔のシュートをGKが弾き、こぼれ球を浅野に押し込まれた。警戒していた2トップに奪われた先制点。それでも市立船橋守備陣は慌てなかった。

「無理に攻めて、2失点目をするのが怖かった。リスク管理をしてやった」(種岡)、「攻撃陣は絶対に点を取ってくれると思っていた。最初から延長を含めたゲームプランも考えていた」(小出)。1点ビハインドの状況が続き、焦りがなかったわけではない。同点ゴールは後半のロスタイム。崖っ縁まで追い込まれたが、選手たちの気持ちは最後まで折れなかった。

「ロスタイムに入ってから雰囲気が変わった。みんなが声を出して、『気持ちで取るぞ』と」と小出は言う。そしてCKのこぼれ球をFW和泉竜司(3年)が押し込む起死回生の同点弾。「延長に入ったらうちが絶対に強いと思っていた。追いついて、いけるなと思った」。小出の言葉どおり、延長後半5分に和泉が勝ち越しゴール。劇的な逆転勝利で頂点に上り詰めた。

 90分間を終え、ベンチ前に戻ってきた市立船橋の選手たちの目には涙も浮かんでいた。朝岡隆蔵監督と抱き合った種岡は「あと20分、3年生とできる喜びが出てきて……」と感極まった。「よく耐えた。延長もしっかり集中していこう。お前ならできる」。朝岡監督の言葉に奮い立ち、気持ちを引き締め直して臨んだ延長の20分間。勝利のホイッスルが鳴り響くと、種岡は朝岡監督に抱き付かれ、感謝の言葉を言われたという。「あまりほめられたことがないので。ここに来てほめられて、うれしかった」と微笑んだ。

 名門の堅守を支える2年生CBコンビ。5試合で3失点、うち2失点はセットプレーからと、抜群の安定感を発揮したが、日本一までの道のりは決して平たんではなかった。昨夏の全国高校総体は初戦で桐蔭学園(神奈川)に1-1からのPK戦の末、敗退。「総体の敗戦から守備を一からやり直した」と言う種岡は「桐蔭戦もそうだったけど、うまい相手に対し、見てしまって、押し込まれることが多かった。それからは前にどんどんプレスをかけにいくようにして、ショートカウンターを仕掛けたり、相手陣内でサッカーをする時間が増えて、結果的に失点が減っていった」と振り返る。

 監督の指示を待つのではなく、選手同士でミーティングを重ね、対戦相手の映像を見ながら選手たちが自発的に対策を練った。ピッチの中でも外でも、遠征があれば宿舎で、とにかくコミュニケーションを重ねた。種岡は「選手だけでミーティングをすることで、相手を見る力が付いた。想定していないことが試合で起こると慌ててしまうし、相手の変化にしっかり対応していくことを心がけてきた。今日の試合も準備してきたことを出せたし、プランどおりだった」と胸を張る。

 来年度は最上級生として、全国王者として、1年間戦っていく。種岡は「プレッシャーもあるけど、自信を持ってやりたい。この気持ちは優勝したチームしか味わえないし、この気持ちを味わったら、また来年もここに来て、優勝したい」と力説。小出も「みんなの負けない気持ちが相手を上回ったと思う。そういう強さを来年も続けていきたい」と力を込めた。全国制覇の次は連覇。日本一のCBとなった2年生コンビの夢は、どんどん大きくなっていく。

(取材・文 西山紘平)

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