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[MOM566]市立船橋FW和泉竜司(3年)_“特別な勝負強さ”持つエースが大会の主役に

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.9 全国高校選手権決勝 市立船橋2-1(延長)四日市中央工 国立]
  
 混戦のトーナメントの主役は市立船橋の背番号10だった。後半ロスタイムに劇的な同点ゴールを決めて延長後半5分には右足で渾身の決勝ゴール。「チームが苦しいときに点が取れていることは自信になっている。キャプテンなので『助けたい』という思いが表れていると思う」とチームを優勝へ導いた2発について振り返った市立船橋FW和泉竜司主将(3年)。名門のエースは歴史的な逆転劇の立て役者として大会に名を刻んだ。

 国立を揺らした同点ゴールは後半46分だった。MF杉山丈一郎(3年)の右CKがゴール前に落ちると「こぼれ球を狙っていた。狙っている人にボールは来る」とチャンスを逃さずに右足でプッシュ。そして延長後半の決勝ゴールはMF宇都宮勇士(2年)からのスルーパスをPA内左サイドで引き出すと、飛び込んできたDFを冷静に切り返しでかわして得意の右足を一閃。GK中村研吾(1年)に反応されたが、強烈な一撃はその手を弾いてゴール左上へと突き刺さった。「(DFが)スライディングに来るなと。切り返してからでも打てると思った。ギリギリ入ってくれて良かった」。どちらかというとクールな主将だが、興奮を身体全体で表現したまま再び青い歓喜の中へ飛び込んだ。

 2年生だった10年全国高校総体で得点王に輝き、チームを日本一へ導くなど抜群の得点力と勝負強さを誇るエースはチームとともに戦っていた。キャプテンマークに記されたチームメートたちの名。「『つらいときはこれを見て頑張れ』と言われて。キャプテンマークを見て『みんながいる』という思いがあった」。この日は後半45分までリードを許す苦しい試合展開だったが、キャプテンマークを見て気持ちを奮い立たせた。「キャプテンとしてやらないといけない」と部員たちの思いを右足に込めて同点ゴール、そして決勝ゴールを叩き込んだ。
 
 10年の全国高校総体では山梨学院との3回戦で2ゴールを決めると、続く立正大淞南戦でハットトリックを達成。準決勝の桐光学園戦では試合終了間際に決勝ゴールを決めて滝川二との決勝でも貴重な同点ゴールをたたき出した。今大会では長崎日大との初戦では0-1の後半36分から2ゴール。そして大分との準決勝でも決勝ゴールを決めた。仲間が苦しいときに最大限に発揮される“特別な勝負強さ”は、決勝でも変わらず市立船橋の力となった。

 三重から「日本一になるために」千葉の名門の門を叩いてから3年。目標を達成して最高の高校サッカー生活を終える。地元・三重の四日市中央工の日本一を阻止したことで記者陣からは「地元に帰りにくいのでは?」という質問もあったが、和泉は「そんなことはないです。地元も結構自分の応援をしてくれた」と微笑。高校卒業後は今冬の全日本大学サッカー選手権で準優勝した明治大へ進学する。「大学チャンピオンを取れるチーム。そのチームに入って成長して大学選手権で優勝してその先にあるプロを目指したい」と日本一のエースは新たな目標を掲げていた。

(取材・文 吉田太郎)

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