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【特集】[リレー総括]08年Jリーグを振り返る(第4回)

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08Jリーグ総括(第4回)
(潮智史/朝日新聞編集委員)

 上位陣の勝ち点が伸びなかったことに物足りなさが残った。優勝した鹿島アントラーズ小笠原満男の負傷離脱後、足踏みをした時期があったし、浦和レッズガンバ大阪もリーグ戦とACLを同時に戦う難しさの中で勝ち点を伸ばせなかった。優勝に値するチームという意味で、もう少し勝ち点を取ってほしかったというのが正直な感想だ。リーグ全体で感じるのは、プレーのスタンダードを上げてほしいということだ。欧州では毎試合毎試合が厳しく、質の高い。Jリーグの場合、「ベストを尽くす」という言葉はよく耳にする。実際に、100%の力を尽くしているか、最後まで走りきっているのか。細部を突き詰めているだろうか。特に中堅、下位のチームは波が大きく、素晴らしい試合をしたかと思うと、次の試合ではまったく別のチームのようなパフォーマンスを見せることがよくあった。これが、残留争いが団子状態になった要因のひとつだろう。

 無冠に終わった浦和に関しては、かつての常勝軍団から転落していった東京Vや磐田の姿と重なるものを感じている。勝てなくなると、選手がやるべきこともやらずに監督を批判し、責任を転嫁する。クラブ側も選手の言い分に耳を傾けるばかり。結局、選手の発言力ばかりが大きくなり、肝心のサッカーの質がどうなのかということを見失い、迷走していく悪循環に陥った。来季の浦和はクラブなり監督なりが、選手をしっかりとコントロールしていかないと、東京Vや磐田と同じ道を歩むことになる危険をはらんでいると思う。

 ACLを制したG大阪はクラブW杯に出場し、3位に入った。マンチェスター・ユナイテッドなどと対戦するG大阪の試合を見ながら、日本代表と重ね合わせていた。日本のチームが、実力が上の欧州や南米のチームと戦うとき、どういうサッカーを志向し、どうやって戦えば、勝つ可能性が高くなるのか。G大阪の短いパスをつなぐコレクティブなサッカーは、岡田武史監督が率いる日本代表のサッカーにも共通する部分がある。07年のクラブW杯に参戦した浦和は、引いて守ってカウンター狙いというサッカーでミランに0-1で敗れたが、G大阪は持ち味の攻撃力を前面に押し出して、マンチェスター・Uに3-5と善戦した。結果はより点差の開いた負けだったが、力の差を考えれば、守って守ってあわよくば1-0に持ち込もうとするサッカーでは可能性は広がっていかないだろう。G大阪のようなスタイルで世界に挑む方が、日本人の特性を生かせるし、世界との距離を縮める道だということを再認識できた。


▼関連リンク
第1回(吉田誠一/日本経済新聞運動部・編集委員)
第2回(セルジオ越後/サッカー解説者)
第3回(田村修一/フットボールアナリスト)

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