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[選手権]誓い守った5戦連発、大迫勇が個人得点記録並ぶ(前橋育英vs鹿児島城西)

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[高校サッカー注目選手クローズアップ]

[1.10 第87回全国高校サッカー選手権準決勝 前橋育英(群馬) 3-5 鹿児島城西(鹿児島) 埼玉]

 鹿児島城西(鹿児島)のU-19日本代表FW大迫勇也(3年)が選手権の歴史に名を刻んだ。試合前の時点で4試合連続2得点の計8得点をマークしていたストライカーは、前橋育英(群馬)戦で1得点。99年度のFW石黒智久(富山一、現富山)と03年度のFW平山相太(国見、現F東京)が持つ1大会最多得点9に並んだ。

 エースの一撃が逆風に苦しんでいたチームを勇気付けた。強烈な向かい風が吹き付けるなかで試合を行った前半、鹿児島城西は前半3分から3連続失点するなど2点をリードされた。22分にFW野村章悟(3年)の5戦連発となるゴールで1点差に詰め寄ったものの、セカンドボールが拾えず、連続攻撃のできないチームはなかなか追いつくことができない。
 だが43分だ。素早く左へボールを展開すると、オーバーラップしていた左SB松井駿佑(3年)が敵陣のスペースを突く。この試合初めてかというほどスムーズにボールが展開されたチャンスを、エースが逃すわけがなかった。「出せ!」。足元へのボールを要求しながら猛然とニアサイドへとダッシュし飛び込んだ大迫勇は、松井の左クロスをスライディングしながらの右足ダイレクトシュート。これがゴールを破り同点に追いついた。

 11日間で5試合目の試合。相手の激しいマークを受けた後に、大勢の報道陣にも囲まれてきたエースの調子は良くなかった。「体が動かなかった。(勝ったけど)自分自身は悪かった。みんなに感謝です」と明かす。シュート7本で1点に終わったこの日は納得できるプレーから程遠い内容だった。
 ただ、昨秋の敗戦後に立てた誓いだけは守った。昨年9月23日に行われた全日本ユース選手権準々決勝・浦和ユース戦。大迫勇は両チーム最多タイのシュート5本を放ちながら、浦和のトップチーム昇格組4人を擁する浦和ユースの堅守を破ることができず、ノーゴールに終わった。チームも敗退。そのとき誓ったことが「どういう状況でも点を取れるようにする」という目標だった。

 今大会の鹿児島県予選は5試合全てで計11得点。そして全国大会では「全くダメだった」というこの日を含めて全試合で点を取ってきた。浦和ユース戦を「情けなかった」と振り返るエースは今大会開幕前に「どんな状況でも点を取ることにこだわってきた」と話していた通り、どんな相手からも点を奪ってチームの決勝進出に貢献。そのエースをDF成元将平(3年)は「頼りになります」と絶賛していた。

 さあ、12日の決勝は高校生活最後の試合。「反省しかない」準決勝では今大会初めて1得点“だけ”に終わったが、決勝では再び爆発を狙う。個人最多得点記録更新もかかる大迫勇は「まずはチームに貢献する」。派手なゴール宣言こそ出なかったが、「どんな状況でも点を取る」という気持ちに変わりはない。2日後、自らのゴールでチームを日本一へと導く。

<写真>鹿児島城西FW大迫勇(9番)
(取材・文 吉田太郎)

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