beacon

中盤に君臨した"皇帝"、柏が進化を証明

このエントリーをはてなブックマークに追加
[2.22 PSM 柏3-1千葉 柏]

 “魔術師”に引けを取らない輝きを放った。第15回ちばぎんカップのMVPを受賞したのは、糸を引くような鋭いスルーパスを繰り出した柏レイソルのMF杉山浩太(24)。ゴールはおろかシュートもない。しかし、ボランチの位置でゲームを組み立て、再三の好パスでチャンスを量産した杉山のプレーにはMVPの価値があった。

 「(スルーパスが)よく通ったね」。前半7分、ハーフウェーライン付近からの1本の縦パスが、GKと1対1の状況をつくり出した。FW菅沼実は難なく右足で流し込み先制点。2-1の後半14分にも左サイドのスペースを突く絶妙なスルーパスからFWポポが抜け出し、FW李忠成の3点目につながった。

 「MVPは初めて。あんま目立たないタイプなんで」と照れたが、試合後、ゴール裏のサポーターから一番大きな歓声を浴びたのも杉山だった。清水から期限付き移籍中という身だが、この日はキャプテンマークを左腕に巻き、ゲームキャプテンも務めた。「(主将は)高校以来。緊張した。真さん(高橋真一郎監督)が気を遣ってくれたんだと思う」と、重責を務め上げ、ホッと安堵のため息をついた。

 清水でプレーしていた05年シーズン途中に気管支炎を発症して以降、1シーズン通して万全の状態でおくれたことはない。清水の長谷川健太監督も「サッカーセンスは抜群」と評価していた逸材だが、病気とケガとの闘いが続き、満足なプレーができないシーズンが続いた。「(病気は)しょうがないことだから」。今でもいつ再び発症するかは分からない。うまく付き合いながらやっていくしかないという歯がゆさもあるが、体調さえ万全なら日本代表クラスのポテンシャルを持っていることをこの日も証明した。

 石崎信弘前監督から高橋真一郎監督に代わり、チームは昨季までのプレッシングサッカーからの転換を目指している。菅沼は「前線から(プレスに)行くところと、ブロックをつくるところを使い分けた。主導権を握って、ボールを大事にしながらアクションを起こす。去年のボールを奪うサッカーにプラスして、自分たちからアクションを起こす部分ができれば、もっともっと強くなる」と言った。

 プレスからの速攻一辺倒ではなく、ポゼッションしながら遅攻も組み立てる。そのときクローズアップされるのが中盤でボールを引き出し、パスを供給する杉山でもある。「ゆっくりできるところはゆっくりやる。気の利くプレーというか、あんまり慌てすぎないようにしてバランスを取った」。

 FWフランサだけにボールが集まれば、相手のマークも集中する。フランサと杉山。2つの起点ができれば、チームの攻撃にも幅が生まれる。前線に君臨する“魔術師”フランサ。あとは中盤で杉山が“皇帝”となれれば、新生レイソルの未来も広がっていくはずだ。

(取材・文 西山紘平)

TOP