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[大学MOM_12]神奈川大MF吉田一樹主将(4年)_小さなカリスマ

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[大学マン・オブ・ザ・マッチ]

[5.4 関東大学サッカー1部第5節 明治大 0-1 神奈川大 多摩]

 今季初勝利を挙げた神奈川大。圧倒的な存在感でその中心にいたのが160cmの小柄なMF吉田一樹主将(4年=鹿島ユース)だった。ピッチ上を誰よりも走り回り、チームメイトのプレーが悪ければ容赦なく厳しい声をぶつける。ただその声で奮い立った神大は“格上”の明治大に押し込まれながらも耐えて試合終了間際に値千金のゴールを奪う。そのゴールも吉田主将が必死に出したラストパスから生まれた。
 0-0で突入した後半ロスタイム、神大は途中出場のMF阪口翔太(4年=横浜創英高)が前線へフィード。相手DFにクリアされたものの、そのこぼれ球に猛然と突っ込んできた吉田主将が160cmの身体をいっぱいに伸ばしながら足先でスルーパスを送る。反応したMF郷内勇太(4年=横浜FMユース)が右足を振りぬくと決勝ゴールとなった。
 「非常にうれしい」と吉田主将。押し込まれたが「DFが相手の正面に入ってシュートを打たせないということが徹底できていた。ゼロに抑えるという部分ができていたと思う」と納得の笑顔を見せた。吉田主将自身、前半は守備の意識が高かったが後半はボランチでコンビを組むMF内村淳(4年=大宮ユース)を信頼して思い切った飛び出しを繰り返した。それが最後の最後でゴールにつながった。

 開幕から3連敗もあり前節までの順位は11位。チームのムードが悪くなりかねない成績だ。それでも「日本一になるためのプラン通りです。最初の4試合くらいは、メンバーを固定するよりも全員を出して経験につなげるという狙いだった。3連敗しても後で勝てば問題ない。結果が出なければ責任はボクと監督でとる気持ちで信じてやってきました」と平然。チームが成長するために耐えて、後で大きくジャンプすればいい。その信念は揺るがなかった。
 Jクラブユース勢や全国の名門校出身の選手が多いライバルたちに対し、神大は神奈川県内の無名選手中心。それでも、わずか4年間で神奈川県リーグから関東1部の強豪となった。そして今年は日本一という目標を掲げて全員で成長して戦っている。チームのために闘将は嫌われ役も苦にせずこなす。「(ウチは)チャレンジ精神でやるしかない。でもそれが試合で出せれば苦しい時に粘ることができる。ボクも選手にいい影響を与えたいから、ピッチ上で怒ります。そうしないとチームにアクセントがつかないですから」と語った。
 「確実に良くなってきていると思う」と自信を見せる内容とようやく出てきた結果。これからさらにチームを盛り上げていくつもりだ。日本一を目指して戦う軍団の160cmのカリスマは、より一層練習から叫び、走り回る。
 
(取材・文 吉田太郎)

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