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奇跡のシュートで川崎Fが劇的4強入り、憲剛は堂々V宣言

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[7.29 ナビスコ杯準々決勝第2戦 川崎F3-0(延長)鹿島 等々力]

 1万3581人の観衆で埋まった等々力陸上競技場が揺れた。誰もが川崎フロンターレの敗退を覚悟した後半ロスタイム、奇跡が待っていた。

 「自分でもラストプレーだと感じていた」。FWジュニーニョは試合後に、そう明かした。第1戦は0-1の敗戦。90分間を戦い終え、残すはあとロスタイムの4分間のみとなってもスコアは0-0のまま動かず、手元の時計はすでに49分台に入っていた。

 川崎Fのスローインで始まった、そのラストプレー。MF中村憲剛が前線にロングフィードを送ると、こぼれ球がジュニーニョの前にこぼれた。そのままPA内右サイドに進入。角度のない位置でDF岩政大樹と対峙した。

 「あのシュートの形はずっと考えていた。05年にアウグストがいたとき、よくああいうシュートの話をしていた。トゥーキック気味にあの角度から打つ。アウグストにやっと決めれたって連絡するよ。彼もずっとあのゴールを狙っていて、決められなかったからね」

 ゴールまで角度はなかった。岩政も「クロスの確率が高いと思っていた」と認める。ところが、ジュニーニョの選択肢はシュート。「シュートを打つスペースがあるのは見えていた。普通ならセンタリングを判断するけど、あえてそれを破って自分で打った」。こん身のひと蹴りは岩政の脇を抜き、ニアサイドを破って豪快にゴールネットに突き刺さった。

 「あのシーンでは自分が決めるか、出血するぐらいの何かを受け止めるか、どちらかだった。なぜならゴール前には味方がいたし、あれが入らなかったらきっとみんな文句を言いに来ただろうからね」。そう笑ったジュニーニョだが、あながち冗談ではないだろう。おそらく日本人なら、あの場面でシュートは選択できない。外したときのリスクを恐れ、安全にクロスを上げていたはずだ。シュートの技術、精度はもちろんだが、あそこで自分の責任で、自分でリスクを負ってシュートを打てることこそが、ブラジル人と日本人の違いなのだろう。

 この一発で試合の流れは決まった。「向こうは九分九厘、自分たちの勝利だと思ってたはずだし、あの1点で落ち込んでるのは明らかだった。延長の最初にたたみかけようと。そうみんなで話していた」。中村の言葉通り、延長前半4分、ジュニーニョの左クロスからFWレナチーニョがヘディングで勝ち越しゴールを決めると、同12分にもFW鄭大世が強烈なミドルシュートで加点。一気に試合をひっくり返した。

 すでに準々決勝進出を決めているACLとともに、悲願の初タイトルへ大きく前進した。「鹿島を倒したからには優勝しないといけない」。王者・鹿島に国内公式戦19試合ぶりの土を付けての4強入り。中村は力強く、堂々と優勝宣言した。

<写真>川崎F・MF中村
(取材・文 西山紘平)

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