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[選手権]“最終ラインの司令塔”松井「もっとやりたかった」(富山一vs筑陽学園)

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[高校サッカー注目選手クローズアップ]

[12.31 第87回全国高校サッカー選手権大会2回戦 富山一(富山)0-1 筑陽学園(福岡) 埼スタ]

 結果は0-1で涙を呑むことになった富山一だが、小気味よいパスサッカーで持ち味を存分に発揮した。
 その丁寧かつ効果的なパスワークを見せたチームにあって、DF松井奏多(3年)はCBのポジションからゲームを作った。ロングボールで逆サイドのプレーヤーにピンポイントのパスを送ったかと思えば、最後尾の位置から前線のFWの足元にズバッと球足の速いボールをグラウンダーで通したりもしてみせた。もちろん、第一の職務であるディフェンスで面でもしっかりと相手の攻撃を跳ね返し、バルセロナのマルケスを彷彿とさせるプレーで攻守にチームを引っ張った。
 松井がCBを務めるようになったのは今年に入ってからだ。昨年までは中盤の選手として活躍していた。コンバートを言い渡されたときは抵抗もあった。中盤がやりたいと監督に直訴したこともある。しかし、コーチや指揮官と話をしていくうちに「それでチームが勝てるなら後ろでもいい」と思えるようになり、気がついたらチームを第一に考える自分がいた。
 富山一が見せた抜群のコンビネーションは時間をかけて築き上げた賜物だ。スタメンのほとんどが小学生時代から県トレを通して一緒にプレーしてきた仲間。「お互い分かり合えているので話し合って解決できた」と松井は胸を張る。それだけに「仲がいいチームだったのでもっとやりたかった」と初戦敗退に悔しさをにじませた。
 しかし、大舞台で見せたサッカーに悔いはない。「チームのために全力でやったつもり。100%出し切って後悔もない。結果は負けですけど、自分たちのサッカーはできたし、十分戦えました」と敗戦にも顔を下げることはなかった。
 「自分の目標は高校サッカーで、そのことしか考えていなかった」。
 将来のことは一切考えずにここまで突っ走ってきた。今はまだ先のことを何も考えられないという。だが、サッカーをやめる気はない。「大学でもサッカーはやるつもり」と松井。ここまで3年間一心不乱に走り、ようやく訪れたブレイクタイム。しばしの休息を終えたとき、松井の新たなサッカー人生が始まる。

(取材・文 神谷正明)

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