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[選手権]広島皆実・秦、強い思いが実らせた先輩に捧げる1点(広島皆実vs徳島商)

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[高校サッカー注目選手クローズアップ]

[1.2 第87回全国高校サッカー選手権大会2回戦 広島皆実(広島)2-1 徳島商(徳島) 駒沢]

 「崎原(拓也)先輩の為にも、チームの勝利の為にも、あれは入れたかった」。広島皆実(広島)の2年生DF秦和広が、"強い思い"と"計算"を実らせ決勝点となるゴールを叩き込んだ。後半21分。右CKを得た広島皆実は、いつもとは違うキッカーが蹴ることになった。通常ならば、MF浜田晃(3年)かMF谷本泰基(3年)がキッカーを務める。しかし、この時はいつもと違った。「あの時は先輩達に"蹴っていいよ"と言われた。風上でゴールに向かって強い風が吹いていたので、これはイケると思った。まさに狙い通りのシュートです」。秦が右CKからゴール側に巻き込むようなクロスを左足で蹴り込むと、高く上がったボールはゴール前で急激にカーブを描き、そのまま左端のゴールネットを揺らした。「崎原先輩の為にも決めたかった」という秦は、ゴール後スタンドの崎原に指を一本立て自らのゴールを報告。崎原はガッツポーズで秦に応えた。
 
 秦は、帝京(東京A)との1回戦でベンチを温めていた。しかし前半17分に、左SBとしてスタメンで出場していたDF崎原が帝京FWへの危険なタックルという判定で一発退場。崎原の穴を埋める左SBとして秦に白羽の矢が立った。初の選手権のピッチでも秦は臆することなく最終ラインを守り、タイミングをみて前線に上がるなどチャンスも作った。その試合後、松岡祐介主将(3年)は「途中交代した秦が本当に積極的に動いて素晴らしい活躍をしてくれた」と大絶賛。2回戦では出場停止中の崎原に代わり堂々のスタメンを張った。「出られなくなった先輩の為に」という強い気持ちが、この日も秦のプレーを研ぎ澄ませた。額には痛々しいガーゼと包帯が巻かれている。理由を聞くと「4日前の練習中に仲間と接触して8針縫う怪我を負ったんです。でもヘディングしてもあの通り、へっちゃらです」。秦は大抜擢されたこの2試合で大いに自信を深め楽しんでいるという。
 
 明日対戦する作陽(岡山)は、08年の高円宮杯全日本ユース選手権で高校勢として唯一の4強入りを果たした同じ中国地方の強豪。同時に優勝候補の一角だ。この日も対戦相手の星稜(石川)のSBを徹底的に疲れさせる戦術で後半3得点を決める底力を見せている。その強敵相手に、秦がSBとしてどこまでやれるのか。ここに注目したい。「明日も出場したい。そもそも自分は目立つようなプレーヤーではない。だからチームのバランスを見て、陰で勝利に貢献できるようにしたい。明日もそこを見てほしい」。そう抱負を語った秦のプレーに注目だ。

(取材・文 山口雄人)

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