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[戦評][女子W杯]ぎりぎりの戦いで得た財産(日本vsドイツ)

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[9・17 07年中国女子W杯グループステージA組第3戦 日本女子 0-2 ドイツ女子 杭州]

 なでしこJAPANはドイツに0-2で敗れ、グループステージ敗退した。この日は相手の力強いサッカーの前に内容的には完敗。至近距離からのシュートをことごとく跳ね返していたGK福元の好守がなければ、5点差以上ついてもおかしくない展開だった。ただ、エースストライカーのFW荒川が負傷で満足にプレーできないというハンデを抱えながらも前回女王のドイツに必死に食らい付いた。前半3分に左サイドをMF澤とMF柳田で崩すなどサイドから決定的な場面もつくった。相手アタッカー陣のパワーとスピードの前に2人、3人がかりでも崩される場面があった守備陣も、試合終盤までぎりぎりのところで2点目を許さず、最後まで日本の決勝トーナメント進出への望みをつなぎ続けた。2試合連続のロスタイム弾で重ねた勝ち点ともに、この試合でも見せた世界に対しての粘り強い戦いぶりは十分に光るものだった。

 大会前の親善試合で対戦したブラジル女子代表監督が「非常に利いていた」と評価していた荒川が不調だったことで、前線でボールがおさまらず攻撃力は大きく低下。大橋監督が思い描いていたような試合は1試合もなかったかもしれない。だが内容的にも苦しい試合が続いた中で、勝ち点4というグループステージ過去最高の成績を残したことは大きい。悔いの残る大会だったことは間違いないが、出場権を獲得している来年の北京五輪で雪辱するだけ。澤は「結果を残せなかったことは残念だけど、楽しく出来た。出た課題を修正してよりいいサッカーができればいいと思う」と話し、柳田も「トレーニングして世界のトップ5に入れるように頑張る」と前を向いた。粘り強い戦いぶりで女王ドイツを慌てさせるなど、ぎりぎりの試合を3試合も経験。苦しみぬいたW杯から日本は、来年、真の成果を発揮するための財産を得た。
 
(文 吉田太郎)

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