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慶應義塾大ソッカー部主将戦記

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Back Stage

 前回、「早慶戦」への私(主将)や選手の想いを綴らせてもらいました。そんな早慶戦。激闘の裏に「もう一つの早慶戦」があったことを皆さんはご存知でしょうか。
 互いにライバル心を剥き出しにし、勝利を渇望する90分間の裏には、早慶両校が協力し、お互いを尊重しあわなければ成し遂げることのできない、早慶戦があったのです。

 今回、私(主将)に代わり、小坂井深(4年主務)が、そんな早慶戦の舞台裏を綴ってくれました。

『こんにちは。先日行われた第60回記念早慶サッカー定期戦で、塾ソッカー部は7年振りの勝利を掴み取ることができ、塾ソッカー部の一員として、早慶戦の運営を担う者として、大変嬉しく思います。しかし今回の早慶戦は、私にとって特別であり、ピッチ上の闘い以上に達成感のある感慨深い早慶戦となりました。今回のコラムでは、そんな早慶戦を一から作り上げる、運営を担う者として、どのような想いで早慶戦に携わってきたのか、また実際にどのようなことをしているのかをお話し、もう一つの早慶戦をご紹介したいと思います。

 私たち運営側の人間にとっての早慶戦と、選手にとっての早慶戦とは多少異なる部分があります。選手にとってはそのたった1日の試合に出場出来るか出来ないか、そして勝てるか勝てないかの90分間に凝縮された勝負であるのに対し、運営に携わっている者にとっては準備にかかる期間全てが勝負であり、早慶戦なのだと考えています。

 また、より具体的に早慶戦までの期間を大きく2つに分けると、早慶戦約1か月前までの期間をPR期間、それから早慶戦までの期間を当日運営準備期間と分けられます。PR期間では観客動員“1万人”を目指し、地域の小学校や付属校、OBや学生に声を掛け、1人でも多くの人に早慶戦を観戦に来てもらうために、企画・立案しPR活動を行います。今回も学内でのチラシ配りや、部員の出身チーム・少年サッカーチームへの呼び掛け、地域小学校とのサッカー交流を通してのPR等、多くの企画を実行して参りました。
 しかしながら近年この1万人動員という目標は果たされぬまま回数を重ね、今大会も大雨の影響もありましたが9071人動員と、目標は達成されませんでした。私は現在4年で現役部員として早慶戦に携わるのは最後であるため、この目標は信頼すべき後輩達に託すこととなりました。必ずや来年、この悲願を達成して欲しいと思います。

 そして早慶戦直前の当日運営準備期間では、備品の準備や当日の打ち合わせ、仕事の把握・振り分けなど、正に大会当日にどのような運営をするかをシミュレーションしつつ、この期間を過ごします。特に早慶戦に必要な膨大な数の備品を1つ1つ入念に準備し、チェックするマネージャーには脱帽です。また、当日の仕事の振り分けにはどこに配置したらその人が一番力を発揮出来るのか、特に同じ四年生の振り分けには熱い気持ちが込められます。

 そういった、早慶戦当日には見えない影の準備。この準備に全力で取り組み、完成させて初めて早慶戦の舞台が出来上がり、選手がピッチで駆け回ることが出来るのです。そして、選手がこの舞台を心から楽しみ感謝の気持ちをピッチで表してくれることが何よりの原動力となり、私達を突き動かします。

 この早慶戦は、10名にも満たない早慶両校主務・副務・マネージャー陣が運営の中心となり動かしています。しかし、私たちがこの一日のために残りの364日奔走できるのも、選手・OB、OG・保護者・地域の方々など、本当に多くの方の支えがあるからに他なりません。試合だけではない運営についても注目してみると、皆様にもまた一味違った早慶戦が見えてくるかもしれません。来年も、また再来年も、その他の試合とは一味も二味も違う大学サッカーのプライドを懸けたこの一戦を、聖地・国立にて楽しんでいただければ幸いです。ありがとうございました』

 小坂井深。小学校から慶應一筋の彼には、私(主将)以上に熱く、この早慶戦にかける想いがあったと察します。シャイな彼は、それを表に出しませんが、影でチームを支え、この部が日本で一番素晴らしい部になることを夢見て、深夜遅くまで、寝る間も惜しんで部の仕事に打ち込んでくれています。そして今回の早慶戦においても、誰よりも熱く、誰よりもこの部の事を考えて、運営に奔走してくれました。

 ソッカー部の部員は知っています。この大会の本当の殊勲賞は、彼なんだと…。

<写真>早慶戦を創りあげた両校学生スタッフ

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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