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慶應義塾大ソッカー部主将戦記

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絶対に負けられない戦いが、もう一つある

独自の高校サッカー人気とJリーグというプロ組織の間にあり、大学サッカーが影を潜めていたことも、一時あったと聞くが、近年の大学サッカーにおいては、その多くがプロフェッショナルクラブ化し、サッカー選手養成学校になりつつあるように感じる。芝生・人工芝の練習グラウンド、フルタイムの指導者、スポーツ推薦制度の拡充で、Jリーグの施設を凌ぐ良好な環境が用意されているところもしばしば…。

弊部においても、OBの方々のご尽力もあり、クラブハウスが新設、3年前には人工芝のグラウンドが用意された。私が1年生の時にはまだ、水溜りの水をスポンジで吸出して練習場を確保したり、ブツブツ言いながらグランド整備や草刈りをやっていた思い出があるが、5つ6つ歳上の先輩に伺えば、「照明がないから、路地の街灯の光があるグランドの隅に集まってトレーニングしていたよ」と言っていた。自分があの程度で不平を漏らしていた恥ずかしさを感じると共に、現在は、本当にいい環境でトレーニングに集中できていることを改めて確認できる。

こうしてプロ化していく大学サッカーであるが、プロとは一線を画す部分がある。そしてこの時期は、各大学どんな優秀な選手も、睡眠時間を削って取り組むべきもの。「絶対に負けられない戦い」それが、

「テスト」

である。ソッカー部では、サッカーで一流の選手を目指すことと同時に、勉学に於いても他の学生の見本になるように取り組む事を求めている。先日も私がレポート資料を探しに、キャンパスのメディア(図書館)に向ったところソッカー部後輩が血眼になって勉強しているところに出くわした。「(国際貿易の政治的構造…、スペイン語ベーシック…)、テスト今日2つあるんですよ~」と、顔を歪めていたが、先輩も皆通ってきた道は避けて通れない。
個人的には、きっと生活に関係のない勉強一つ一つにも、こうして一生懸命取り組むことが、知性となり、たとえ忘れてしまっても感性として、自分を成長させてくれるだろうと思う。また、こうした中でも、きちんと時間を作り計画的に自主トレに励んでいる選手こそが、大学を経て世界で活躍する選手になる。こうした信念がソッカー部に於いて「勉強」に重きが置かれてきた理由だろう。

かつて英国のパブリックスクールで盛んに行われていたものが、教育「体育」の一環として師範学校(現在の大学に相当)に持ち込まれたことに端を発する日本サッカー。かつてプロクラブが存在していなかった当時の日本サッカーを先駆していたのは、大学サッカーであった。その大学サッカーも当時から状況が変化し、サッカーに集中することができる環境になった。
新陳代謝が繰り返され、サッカー面においても継承されている伝統も多いが、大学サッカーマンには、ずっと昔から変わらず求められている部分がある。それが、「文武両道」への努力であり、パブリックスクールに起源を持つサッカーの「紳士道」「ディシプリン」「教育」といった側面だろう。

9月上旬に来る成績表で“波に乗って”後期リーグ戦を迎えたい!

※本コラムは不定期更新です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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