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慶應義塾大ソッカー部主将戦記

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 「夏を制するものは勝負を制す」。大学サッカーリーグが前期後期制になってから、夏の厳しいトレーニングで如何に成長できたかが後期の成績、ひいては総合成績に繋がることは自明です。

 しかし厳しい練習は、怪我と表裏一体の関係にあります。ソッカー部でも怪我をしてしまう選手が頻発しました。怪我は本当にがっかりするもので、折角頑張った努力が水の泡になってしまったかのような感覚に陥ります。

 ただ、私個人としては、怪我をしたことには、自己管理がきちんと出来ていなかったり、気の抜いたプレーをしていたり、細かなことを含め、何らかの落ち度が自分にあったからこそ起きてしまったことだと考えます。
 つまり、怪我をした時に、自分が「あーやっちゃったな」くらいに思うのであれば、それは「オマエがサッカーを楽しむ資格なんかない」と神様に見放されたのかもしれない。逆に自分が「努力してきたのになんでだよ!」と心から思える怪我であれば、きっとそれは幸運で、サッカーが出来ない変わりに「今のうちに筋トレをして身体を大きくしろ」とか「ピッチを外から見て客観的に何をすべきか考えろ」とか、神様が導いてくれているのかもしれないと考えるわけです。
 サッカーに於いて、人生に於いて、いろいろな事が因果律にあって、決まってくるもの。願えば叶うし、どこか効率よくやろうとしたり、うわべだけでやったりすれば、“怪我”のように、後で後悔することになると私は思います。

 「スティーブ・ジョブズ氏の感動スピーチ」をご存知でしょうか?

 マッキントッシュやI-podを創った彼が、スタンフォード大学の卒業式において、人生を振り返り語った際のスピーチのことで、因果律や私達がきつい練習を乗り越える意味を教えてくれるような気がするのです。ジョブズは大学時代、不真面目で、半年で退学してしまいましたが、カリグラフィ(飾り文字)のクラスだけは、熱心で、研究に没頭しました。
 そして後に、美しいフォントを搭載した世界初のコンピュータを作り、後にI-podのようなセンサブルな製品ができたわけです。ジョブズは、スピーチで「自分の興味の赴くままに当時、懸命に身につけたことの多くは、あとになって値札がつけられないくらい価値あるものだとわかってきた」と振り返っています。

 私達は、大学生活を通じて、サッカーに精進しているわけですが、シュート練習や筋トレも、この夏の走りこみだって、生きていく上では、なんら役に立ちそうもないものばかりです。でも、もしジョブズが大学で、何の役にも立たなそうなカリグラフィに励んでいなかったらアップル製品は、複数字体も時間調整フォントも入っておらず、ウィンドウズ製品の単なるパクリに過ぎなかったでしょう。
 きっと同様に、痛くても、辛くても、頑張ったシュート練習、怪我を乗り越えて走り込んだこの努力が、いつか活きてくるのではないでしょうか。

 ジョブズは、事業にも成功したかもしれない、浮浪者になっていたかもしれない。なぜ成功したか。それは、興味の赴く、自分の大切なことに

“一生懸命だったから”

 自分が大学サッカー生活を死ぬ気で頑張りぬいた経験は、プロになった人にも、ビジネスマンとなった人にも、きっと「成功」を齎してくれるのではないでしょうか。「怪我」をしてしまった時、なぜ、負の「点」に繋がってしまったのかもう一度考えてみる。過去の「怠惰」だったのか何だったのか。どうしたら正の「点」に結びつくかも考えてみる。カリスマCEOが言うように、未来に先回りして「点」と「点」は繋げられないけど、過去の「努力」は、未来の行き着く「点」を「成功」に向けられるはず。
 そう考えると一日一日が無駄に出来ない。怪我なんて、脚が痛いなんて言っていられない。もっともっと練習しなきゃ、頑張らなくちゃ、後期開幕は…

9月5日!

<写真>Cチームと指示を送る柳生グラウンドマネージャー(中央)

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