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慶應義塾大ソッカー部主将戦記

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Breathtaking Field

 一昨日(19日)、関東大学サッカーリーグも第三節を迎えました。平塚陸上競技場で東海大学との一戦に臨んだソッカー部は、前半にMF中町公祐(4年=湘南ベルマーレ)・FW深澤良(3年=清水東高)、後半にもDF黄大城(2年=桐生第一高)・MF織茂敦(4年=国学院久我山高)が得点し、守備陣も最後まで集中を切らさず4-0で勝ち点3をあげることができました。

 今節、完勝できた理由の一つに、試合会場となった平塚陸上競技場のフィールドが挙げられると思います。当競技場、J2湘南ベルマーレのホームスタジアムとして使用されており、2006年には、ベストピッチ賞を受彰するほどの良質なピッチです。パスワークを重視する慶應にとっては、大きなアドバンテージになったと思いますし、何よりこうした非常に綺麗なピッチでプレーできることは、全選手にとって大きな喜びでもあります。グラウンドキーパーや競技場管理の方には、本当に感謝です。

 こうした環境に目を向けると、私達は、大学生でありながら、非常に優遇された環境下でスポーツに興じる事ができているということを改めて感じます。ピッチを含めた試合会場施設のみならず、ソッカー部においては、人工芝の練習場・照明設備も充実しましたし、こうしたハード面だけでなく、コーチングスタッフや地域住民の方々の後押しといったソフト面でも従来に比べ飛躍的に恵まれてきているのではないでしょうか。個人的には2007年度から、株式会社デサントからle coq sportifのスパイクを提供していただいており、こうした用具の面でのバックアップにも大いに感謝しているところです。(軽さと皮質が他社に比べ抜群にいい!!)
これら総じて、良環境やそれを提供してくださる方々への感謝を忘れず、特にサッカー環境・実態について、私達は、“無知であってはならない”と強く思います。そこで一つ問題。

 皆さんは、サッカーボールがどこの国で作られているかご存知でしょうか。

 現在、世界では、約3千万個のサッカーボールが生産されており、そのうちの70%以上が“パキスタン”で製造され、毎年約2千万個のサッカーボールがイギリスや日本といった先進国(及びサッカーボール消費大国)へ輸出されています。インド国境に近い、パキスタン北東部の都市シアルコットを例にとって見れば、そこでは「子ども1人が、1日8・9時間の労働で1~3個のボールを作り、大人の半分の給料である月に平均750ルピー(約2000円)で労働している。約7千人の子どもたちがフルタイムで働き、ほぼ同数の子どもたちが学校の授業に合わせて半日就労している。」(FLO 2005)状況です。
 ソッカー部の部員に聞いてもごく僅かの部員しかMADE IN パキスタンボールの存在を知りませんでしたし、以前、草の根援助運動学生班(P2ユース)の活動に参加し、神奈川県の住吉高校で授業(一般的にいう開発教育ではありません)をさせていただきましたが、その際もほとんどの学生が、この問いに答えられませんでした。普通知らないですよね。私も「フェアトレード」の研究を進めていた際、偶然知り得えました。また、聞いた時には、本当驚きでした。
 実際には、上記のサッカーボールにおける児童労働問題や劣悪労働環境問題は、大々的にマスコミ報道された1998年W杯フランス大会以降、世界的な生産者搾取の撤廃が叫ばれ、生産の機械化や企業のコンプライアンス遵守等も相俟って、解決されつつあります。シアルコットも2000年にパキスタン政府から「児童労働撤廃モデル都市」に指定されました。
しかし、その他にも「世界では、毎秒サッカーコート一面分の緑が消えている事実」ある国では、「同年代の学生が、軍隊として戦場の最前線に送りだされている事実」また「1時間に1人が地雷で大事な脚を失いサッカーが出来ない身体になっている事実」といった私達の知らない事実が多くの地域で存在しています。問題解決へ大々的に行動を行えないとしても、私達サッカー人は、改めて包括的にサッカー環境の実態を知識として養い、現状に問いかけるべきだと思います。

 私が、ゼミで専攻する「地域開発」や「フェアトレード」の研究領域から多少ズレがあるので、問題提起までしかできませんが、多くのサッカー人がサッカーを取り巻く環境とその事実に視野を広げてほしいと思います。

各データは、
①フェアトレードサッカーボールを取り扱うわかちあいプロジェクトの松木傑氏へのインタビュー取材
②FLO2005年度調査資料
③WCFSD概要報告書
④地球白書2008
に基づきます。古いデータで事実と異なる記述が多少ある点、ご容赦ください。

(写真=ピッチコンディション確認する甲斐・藤田)

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