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慶應義塾大ソッカー部主将戦記

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What’s the problem?

11月24日には、関東大学サッカー第17節、対専修大学戦が埼玉スタジアム第3グラウンドで行われました。立ち上がりから専修大の流動的な攻撃に対応しきれず、先制点を献上。勝ち点3を奪いに行くため攻撃を厚くした事が、裏目に出てしまい、カウンターから2失点。0-3の完敗を喫してしまいました。流石にがっくりきました。4戦連続で勝ち星が奪えない状況は、まさに危機と言えますが、「今は、(必ず訪れる)苦難を如何に乗り越えるかが試されている時」、こんな風に捉え、難局に立ち向かいたいと思います。

 そんな前節、負け戦に悔しさを噛み締めながらトボトボと浦和美園駅へ帰る道は、如何せん“遠い”ものでした。一時の心理状況がそうさせるのかとも思いましたが、事実、駅からグラウンドまで歩いて20分以上かかり、何もない駅近くのさら地を眺めながら、「なーんでココに建てなかったんだろう?」とボヤいていました。

皆さんもそんな思いを感じたことないでしょうか?地価や、試合後の誘導問題、いろいろな事が考えられて立地されたのだとは思いますが、折角日本を代表する大型サッカー専用スタジアムなのですから、利便性を優先してほしかったなぁと欲がでます。なにせ以前訪れたミラン・インテルのホームスタジアム“サンシーロ(ジュゼッペ=メアッツァ)”はトラム(路面電車)を降りて目の前でした。トラムに乗りながら徐々に「近づいてきた」という雰囲気が溢れ、駅に着けば既にボルテージの上がった両サポーターの歓声がスタジアム内からこだましてくる。やっぱりこうしたゾクゾク、ドキドキする雰囲気を楽しむことが、サッカー観戦の醍醐味なのだと思いますし、昂ぶった気持ちそのままに試合観戦したいですよね。試合の予想・批評を語りながら歩くのもまた良いのかも知れませんが…。

熱狂的なサポーターで埋め尽くされる埼スタはまだしも、例えば、地元静岡のスタジアム“エコパ”の立地は、エスパルス(静清水)とジュビロ(磐田)の中間地点で(それもまた駅から丘陵地を結構歩く)どちらのサポーターにとっても不便です。立地の問題だけではないと思いますが、W杯を機に建設が進められた各都市のスタジアムは、ハコモノ競技場になっているところが多いようで、一向に赤字経営が改善されていません。満員になるのは、SMAPやB‘zのライブだけだとか…。税金の無駄遣いが取り沙汰されている昨今、改めて、スポーツに関わる施設・設備といったハード面についても、有効活用の手立てを考えるいい機会ではないでしょうか。

ところで埼玉スタジアムには、バスケットコートやフットサルコートが幾つも隣接していて、先日24日(土曜日のお昼)には、関東大学サッカーリーグと並び、少年サッカー(小学校低学年?)の試合も行われていました。直向に、がむしゃらにボールを追う少年の姿は、10年前の自分を見るようで、懐かし思いでした。また、審判やコーチをするお父さん方やコート脇で応援するお母さん方も、一緒になってサッカーを楽しむ光景は、本当に清々しいものでした。
ただ一転、(こじ付けのようですが)ソフト面の問題が表象化している光景とも見て取れます。「保護者のバックアップ」が、交流の域を超え、不可欠な存在となっています。食事面やグラウンドへの送迎はまだしも、サッカーの指導、審判等々、練習場の管理、地域スポーツ団体の運営に携わる人の数が圧倒的に足りていません。私は、小学校・中学校とクラブチームに所属していたので、(加えて静岡というサッカーがかなり根付いていた地域だったので)、相体的に充実した環境だったと思いますが、それでも手を借りていますし、部活動や少年団ともなると更に父母への依存は濃いのではないでしょうか。私が中学生の時、担任の先生が、土日明けに「自分の子どものクラブのお手伝いもしなければいけないし、顧問であるバスケ部の面倒も見なければいけない」と嘆いていました。当時は「ぐーたらな先生」だと思いましたが、なかなか難しい問題を孕んでいたのだと回想します。

スタジアムというハードの面の問題、サッカー団体のマネジメントというソフト面の問題、小さなことであり、現状維持で済んでしまう程のことです。寧ろ問題として、とり挙げるのは贅沢なのかもしれません。しかし、ソッカー部で開講している「慶應サッカースクール(KSS)」で、グラウンドを解放し、大学生が指導にあたっていたり、横浜市体育教会の要請で、各小学校に部員が出向き、教師の補佐(寧ろメインでやってますが)をしていること、等々…大学生の余剰能力を活用できる場が、もっとあるように感じます。またこれが上記の問題解決への糸口となっているとも考えられます。
KSSはソッカー部OB組織三田ソッカー倶楽部の専門部会ゆえに、OBの方が主体としてマネジメントしてくださっていますが、今年で31周年(!)。全国の大学各校サッカー部でも盛んにサッカースクールが開講されていますが、KSSの充実した取り組みを発信していきたいですし、サッカー団体マネジメントのヒントとなり、サッカー界底上げへと繋がれば最高です。ただ何より、(負担なく)親子の心通わすひと時ができる機会を提供し続けることは、変わらず重きを置いていくところだと思います。

「W杯ベスト4」そして「世界を驚かす!」と誓う日本サッカーにあって、日本代表選手の強化ではなく、とりわけサッカー界、スポーツを取り巻く外環境から世界を驚かす、素晴らしい仕組みを築いていかなければ、この誓いが現実味を帯びる事もないでしょう。私達皆が当事者です。ぜひ皆で世界を驚かしましょう!

昨年、アジア最終予選(vsタイ)の観戦以来、日本最大のサッカー専用スタジアム「埼スタ」の地を訪れて、ふと思う日本の現在地。

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