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南アフリカW杯便り

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「自信」で人間はこんなにも変わる

[6月25日午前5時@ラステンバーグ]

 日本サッカーの歴史に新たな1ページが刻まれました。自国開催以外では初の決勝トーナメント進出。文句のない快勝でした。相手は勝つしかないという日本にとって有利な状況、展開ではありましたが、ここまでの3試合の中でベストパフォーマンスだったのは間違いありません。

 カメルーン戦、オランダ戦、デンマーク戦。試合を重ねるごとに内容も良くなり、選手も生き生きと躍動しています。選手の話を聞いても、彼ら自身がW杯に入ってからのチームの成長を身を持って感じているようです。

 岡田武史監督は「苦しい状況でチームが一丸となって初戦に勝てたことがみんなの自信になった」と話していました。「自信」という言葉を何度も繰り返したのが印象的でした。

 選手は、そして岡田監督も、カメルーン戦までは自信を失っているように見えました。システムの変更、選手の入れ替え、スタイルの転換…。本大会直前にこれほど変貌を遂げるチームは記憶にありません。

 岡田監督は「踏ん切りを付けなきゃいけない」「思い切って決断しないといけない」と、当時の心境を初めて明かしました。「これはある意味で当たった」と、“賭け”であったことも認めました。この決断がどれほど大きく、重いものであったか。もしもカメルーン戦で結果が出ていなかったら、チームは本当に崩壊していたかもしれません。

 「W杯の勝利はどれも忘れられないが、自分としてはカメルーン戦の1勝の方が大きかった。あの1勝がなかったら何もなかったと思うので、非常に印象深い1勝だった」。岡田監督の言葉は偽らざる本音でしょう。

 「自信」がこれほどまでに選手のプレーを、チームのパフォーマンスを変えるのかと、僕自身、驚いています。W杯前の親善試合では「守備しかしてない」と文句を言っていた大久保嘉人も、今では「点を取られなければいい。守備もしないといけないけど、それはそれでいい」と喜んで(?)守備に奔走するようになりました。選手は、人間はゲンキンな生き物です。気持ちひとつで、ここまで変わるのです。

 チームは今、確固たる「自信」を持っています。ベンチの選手も含め、一丸となっています。カメルーンに勝てたのは、正直、「運」も味方したと思っていました。それは今も変わりありません。

 しかし、今日のデンマーク戦の勝利は完全なる「実力」でした。「運」が「自信」を呼び、「実力」につながったのであれば、これはもう本物の「強さ」だと思います。

 「世界を驚かす」。その言葉とともにスタートした岡田ジャパン。少なくとも、世界が驚く前に僕は驚きました。同じ気持ちを抱いているサポーターの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 さあ、次は本当に「世界を驚かす」番です。パラグアイは簡単な相手ではありません。しかし、今の日本なら、ベスト8という前人未到の領域にも達することができると信じています。

(文 西山紘平)

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