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ピッチに恋して by 松原渓

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日本対アルゼンチン戦
by 松原渓

キリンチャレンジカップ
日本×アルゼンチン…57735人

強豪アルゼンチン相手に歴史的な勝利を収めた、ザック・ジャパン。
かつて、これほどまでにインパクトのある「初陣」があったでしょうか…
過去6戦全敗だった南米の強豪を本気にさせ、スター軍団を完封した90分間の戦いぶりは、サッカーファンの心を掴むのに十分でした。

6万人近くの観衆で埋め尽くされたさいたまスタジアム。今回はゴール裏の自由席で応援したのですが、こちらはもうお祭り騒ぎでした。もちろん、90分間立ちっぱなし。特に、長友選手の粘り強いディフェンスや本田選手の無回転FKなど、ワールドカップで日本中を沸かせたプレーに割れんばかりの歓声が飛び、他にも惜しいシュートや、アルゼンチンの凄いテクニックに対する賞賛など、老若男女問わず肩を寄せ合って大勢が一喜一憂するゴール裏の風景は刺激的でした☆
同時に、初めてスタジアムに応援に来た人でも入って行けるような雰囲気もありました。この雰囲気は日本が誇れるところではないでしょうか。スタジアムの外では、メッシのユニフォームを着た若い女性が多かったのも印象的でした。

さて、まず何と言っても、欧州年間最優秀選手賞(バロンドール)にも輝いた世界最高のFWメッシ選手を含め、ベストメンバーで日本に来てくれたアルゼンチン代表に感謝したいと思います。ケガ明けでハードな日程の中、ヨーロッパとは時差の大きい日本ですが、テベス選手と共にフル出場!
日本代表選手と並んでも目立つほどに小柄でしたが、その小柄さを生かした動きの軽快さからは信じられないほど、ボールを持った時のブレない体幹の強さが印象的でしたね。

今回の日本の快挙の要因として、2つの大きなポイントがあったように思います。
一つ目は「戦術面」。
記念すべきザック・ジャパン初陣の先発の座を勝ち取った11人は、GK川島選手、DF内田選手、今野選手、栗原選手、長友選手、中盤は遠藤選手と長谷部選手のダブルボランチ、右に岡崎選手、左に香川選手、トップ下に本田選手、FWは森本選手の1トップ(4-3-3)。
序盤からボールを支配され「さすがアルゼンチン…」という空気も漂いましたが、日本は素晴らしいカバーリングとゾーンディフェンスでゴール前に鍵をかけ、前半19分にはその献身的な全員守備にご褒美。
長谷部誠選手の強烈なミドルシュートをキーパーが弾いたところに岡崎選手が猛然と飛び込んでゴールネットを揺らし……超強豪相手にある意味予想外とも言える先制ゴールに、一瞬の間をおいて、スタンドは狂喜乱舞!
いい守備を続けていれば必ずチャンスが来る。これもザッケローニ監督が仕掛けた「必然」だったのだと思います。イタリア仕込みのゾーンディフェンスは各ポジションで守備の「持ち場」に対する責任を明確にし、「自分が抜かれても次の選手がいる」味方への信頼感が、さらに守備の精度を高めたのでしょう。早いカバーリングの前にアルゼンチン得意のカウンターも沈黙。
守備に比べると、攻撃はシンプルでした。縦に早い攻撃は無駄な横パスを減らし、シュートへの意識の高さは素晴らしかったですし、枠に飛ばす精度がありました。
私はドイツで好調の左サイドの香川選手に注目していましたが、さすがに研究されていたせいかマークが厳しく、その分、空いた右サイドからの攻撃が生きていました。

もう一つは「精神面」。
特に、得点に絡んだ本田選手、長谷部選手、岡崎選手のワールドカップ組が安定していましたし、川島選手のいくつかのビッグセーブが日本に流れを呼び込むポイントだったと思います。先発のうち海外組が7人を占め、個の力の高まりを感じました。代表合宿は今月4日から始まり、連携に関しては「即席」でしたが、ザッケローニ監督はシンプルな決まり事の中で各選手の持ち味を引き出すべく、個々に自信を与えたのではないでしょうか。ギリギリまでスタメンが分からない緊張感もモチベーションを高めていたと思います。

新生日本代表にとってこれ以上ない素晴らしい船出ですね。ただ、12日の韓国戦はケガ人も出てしまった中でどんな布陣で臨むのか。この喜びが束の間にならないようにしてもらいたいですね。韓国との対戦はワールドカップ前の親善試合で完敗して以来。いよいよ成長の真価が試される時がきました。
韓国戦では、金崎夢生選手に注目しています☆

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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