beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第222回「『全社』総括→『地域決勝』展望」
by 木次成夫

例えば、決勝戦の観客数は200人(公式発表)。『観客の少なさ』とは対照的な『試合の熱気』。国体リハーサル大会の『全社』(全国社会人選手権)は、国体よりも“はるかに”参加選手の人生を左右する可能性が高いゆえに、観る側も“はるかに”楽しめると思うのですが……。大会関係者や地元報道機関は、なぜ、積極的にPRしなかったのか? 理解できません。これでは、“Jリーグを目指すムーブメントには興味はない”と言っているのと同じだと思ったほどです。

●10月20日
決勝 
カマタマーレ讃岐 2-0 長野パルセイロ 

≪得点経過≫
61分 1-0(得点:右SB下松裕、前・バンディオンセ加古川)
80+4分 2-0(得点:FW森田栄治、前・東海大学)

[試合総括]
カマタマーレの快勝でした。準決勝のSC相模原戦同様、堅守速攻。一見、パルセイロが優勢に見えた前半も、北野誠監督いわく「(相手にボールを回されていたのではく)回させていた。うちもポゼッション・サッカーはできるが、この大会では、そうする必要がない」。

対するパルセイロは、試合後のミーティングで鈴木強化部長が選手たちに向かって「今大会で最も悪かった」と語ったほどの不出来。その上、65分には右SB野澤健一(26歳、前・佐川印刷)が2枚目のイエローで退場になり、地域決勝初戦は出場できなくなってしまいました。

≪カマタマーレ流“山椒は小粒……”≫
小柄な選手が多いのがカマタマーレの特徴のひとつです。例えば、FW岡本秀雄(169㎝)、MF飯塚亮(163㎝)、MF(パルセイロ戦はFW)吉澤侑哉(172㎝)、FW(パルセイロ戦はサブ)脇坂仁智(175㎝)。当然ながら、速攻からハイクロスで勝負するのは効果的とは言えません。定番は、ボールを奪った後、スピーディーに逆サイド、相手DFの裏などを狙って→低く速いクロス→ピンポイントで合わせるパターン。つまり、ゴール前へ『放り込む』ではなく、いったん外に『放り出す』。現役時代、小柄ながらも切れ味抜群だった北野監督らしいサッカーとも言えます。

「(監督は)地域リーグには地域リーグなりの戦いがあると、よく、おっしゃっています」(カマタマーレ関係者)。

≪3or4、パルセイロの大問題≫
今大会、パルセイロは4-4-2で戦いました。薩川了洋監督いわく「(選手たちは)3-5-2の時よりも、前線で窮屈な感じがしているんだと思う。3バックの方が攻撃は活性化するだろうけど、今年は絶対に昇格しないといけないから」。

つまり、“数少ないカウンター攻撃で失点→敗戦”は避けなければいけないので、守備の安定も考慮する、という意味。実際、パルセイロは、08年の地域決勝を含めて、何度も『勝負弱さ』を露呈して来ました。

もちろん、4-4-2でも流麗なパスサッカーは可能ですが、今大会を見る限り、パルセイロ選手たちは、『慣れていない』か、上手くいかないゆえに、『個人プレーに固執』し過ぎ。宇野沢祐次(27歳、元。柏など)ら前線がドリブル突破を仕掛けるものの、両SBの攻撃参加を誘導するようなプレーは皆無。結果的にチーム全体的にチグハグになり、守備陣はストレスが溜まり、“以前よりも”脆くなってしまったという印象です。

●3位決定戦
SC相模原 5-1 福島ユナイテッド

≪得点経過≫
6分 1-0(得点:齋藤将基、30歳、前・沖縄かりゆし、元・東京Vなど)
39分 2-0(得点:金澤大将、26歳、前・水戸)
59分 2-1(得点:田中翔太、27歳、前アルテ高崎)
62分 3-1(得点:齋藤将基)
66分 4-1(得点:ジエゴ・カンポス、24歳、前シアノルテFC)
79分 5-1(得点:木下伸二、20歳、前・草津)

[試合総括]
個人能力の差が露呈してしまった試合でした。中でも顕著だったのは、相模原の攻撃陣に対して、福島Uの守備陣が“現実的な”対応を出来なかったこと。正々堂々と対峙して、かわされるシーンが散見しました。ただ、見方をかえれば、“東北リーグで経験できない”ことを経験したことは、地域決勝“本番”に向けて『幸い』とも言えます。

試合後、福島U選手たちはバスで帰路に就きました。運転手いわく「休憩も含めて、合計17時間くらいかかると思います」。地域決勝1次ラウンドは高知県開催のグループ。偶然ですが、「山口→福島」は、「福島⇔高知」のシミュレーションになったことでしょう。


[地域決勝一次ラウンド(11月21~23日)組み合わせ&展望]

全社枠で出場権を得たのが福島Uだけだったため、全国社会人連盟枠で『さいたまSC』(加盟チーム数が最も多い関東リーグ所属で今季1部2位)が12番目の出場権を得ました。

『4グループ』から『3グループ』に変更された今回は、“最も成績の良い2位も決勝ラウンドに進出できる”ため、昨季まで以上に、攻撃的スタイルのチームは苦戦するかもしれません。PK勝ちは「勝ち点2」、PK負けは「勝ち点1」。例えば、3試合連続PK勝ちは、2勝1敗と同じです。

●Aグループ(茨城県ひたちなか市)
HOYO Atletico ELAN、SC相模原、レノファ山口、YSCC
*相模原は地域決勝に先立ち、関東リーグ昇格を競う『関東社会人大会』に出場します。『JFA優遇措置』の正当性を証明するためにも、関東2部昇格を決めた上で、“天皇杯神奈川県予選で敗れた”YSCCにリベンジをしたいところ。

HOYOは全社1回戦敗退。レノファは国体1回戦敗退、全社2回戦敗退。共に貴重なチーム強化のチャンスを活かせませんでした。ただ、レノファは3年連続出場で、08年からの主力選手も多いため、モチベーションという点では4チーム中随一のハズ。国体を見た限り、流動的なパスサッカーは進化しています。浮沈のカギは“絶対的エース”福原康太へのマークを分散させること。例えば、今季、FWから左SBにコンバートされた安田忠臣(前・福岡)の役割は重大です。

●Bグループ(静岡県藤枝市)
Shizuoka.藤枝MYFC、グルージャ盛岡、三洋電機洲本、札大GP
*4チームとも全社1回戦敗退。ホームのMYFCと、4年連続出場のグルージャにとっては、どちらかというと“運が良い”組み合わせと言えるでしょう。

●Cグループ(高知県高知市)
福島ユナイテッド、カマタマーレ讃岐、長野パルセイロ、さいたまSC
*潜在能力という観点では、本命パルセイロ。カマタマーレは全社で持ち味を発揮したゆえに、相手からすれば、「少なくとも理論上の対策は容易」。福島Uは遠征経費という観点でも、厳しい組み合わせ。ただ、初戦は福島対カマタマーレ、パルセイロ対さいたま。福島Uが(“さいたま”も)PK勝ちすれば、波乱が起きるかもしれません。

ちなみに、高知市は『坂本龍馬ブーム』で観光客が多いようなので、観戦予定のファンの方々は、「ホテル手配など早めにした方が良いですよ」(カマタマーレ関係者)とか。

<写真>優勝したカマタマーレ選手の一部。後列左から波夛野寛、脇坂仁智、中島健太、前列左から、佐々木惇、吉澤侑哉

※感想やあなたの応援する“J未満”チームの情報をこちらまでお寄せください。

TOP