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Jを目指せ! by 木次成夫

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第223回「JFL後期12節 松本山雅『5連勝』で4位との『勝ち点差3』に接近!」
by 木次成夫

山雅は後期1節の琉球戦に敗れて以降、後期11節まで『7勝3分』。7節(9月12日)のV・ファーレン戦(1-1で引き分け)を見た際は、その後の『4連勝』を“まったく”想像できませんでした。

だからこそ、Honda戦を見たくなったのですが……、結論は、さながら『劇的ビフォーアフター』。試合結果以上に、『サッカーの質』の高さに唖然としました。“神様お願い”クロス、“とりあえず”ロング・フィード、(1人よがりの)“特攻”ドリブルなどが激減した一方で、『3人目の動き』が活性化。いわば“自分たちをギリギリまで信じる”サッカーへ転換(の最中)。過去2シーズンの終盤は多大な幸運にも恵まれましたが、今季の『強さは本物』かもしれないと思ったほどです。

●10月24日
JFL後期12節
Honda FC  0-3 松本山雅

≪得点経過≫
5分 0-1(得点:FW石田祐樹=今季加入、29歳、前・徳島)
*FK後に、相手のカウンターを防いで“つなぎ”→後方からロング・フィード→右サイドからクロス→ヘディング。守備から攻撃に素早く移行しようとしたHondaの狙いを逆手にとって、スピーディに“つないだ”末の得点。

50分 0-2(得点:石田)
*MF弦巻健人(23歳=今季途中加入、前・東京V)がDFラインの裏を狙ったパスを出し→石田が絶妙のタイミングで抜けだし→ドリブル→相手GKも“かわして”→無人のゴールへシュート。弦巻いわく「石(田)さんは、ボールを受ける動きが巧いんです」。

89分 0-3(得点:MF今井昌太=加入4年目、26歳、前びわこ成蹊スポーツ大学、長野県出身)
*86分に石田と交代出場した今井が、弦巻からのフィードに反応して飛び出し、ドリブル→シュート。“スーパーサブ”の面目躍如。「得点を決めた直後、今井は一目散にバック・スタンドの方向へ走り、スポンサー・ボードを飛び越え、ファンと抱き合いました。当然、イエローカード。とはいえ、「地元出身選手が最後を締める」のは最高の結末。地産地消、地域密着という観点でも――。

[試合総括]
試合運び、得点の時間帯、得点パターンなど様々な観点で、山雅の快勝でした。ホームのHondaからすれば『痛恨の敗北』。ちなみにHondaがホームで3点差の敗戦を喫したのは今季初でした。

≪山雅を変えた①小林陽介≫
何が山雅を変えたのか?『攻撃面の連動』という観点ではFW小林陽介(26歳=加入2年前、前・熊本←横河武蔵野←浦和)が効いていました。

小林は後期8節の秋田戦で久々にスタメン復帰し、チームは“その後”5連勝。持ち味は、巧みなボールタッチからの展開力と、献身的なフリーランニング。つまり、他の選手を活かすことで、自分を“より”活かすプレーです。例えば、小林の“はじく”ようなダイレクト・タッチが“つながる”時は攻撃が多彩になり、相手守備陣を引きつけるフリーランニングが効いた時は、チームメイトの得点チャンス増大。

小林は試合後「それが僕の持ち味ですから」と言っていましたが、『絶対に勝たなければいけない試合』では、中々できることでは、ありません。彼に限らず、勝利を意識し過ぎると、『1人よがり』に“なりがち”ですから。

≪山雅を変えた②弦巻健人≫
山雅が停滞していた時期、中盤から後方での横パスがメインで、“相手守備陣を崩す”縦パスは皆無でした。つまり、相手からすれば“怖くないサッカー”です。例えば、シンプルなクロスあるいはオープンスペースを狙ったロング・ボールは、“意図が明確”ゆえに、相手も対応しやすい。そして、そんな状況を変えたのが『読売クラブ』(現・東京V)の伝統を引き継ぐパサー、弦巻です。当たり前のことですが、横方向よりも、縦方向は「距離間を把握しにくい」ゆえに、好パスを出すのは至難。言い方を変えれば、縦方向のキラーパスを出せる選手は貴重であり、チーム全体が活性化する『起爆剤』にも、なりえます。Honda戦の2アシストは、その証ですが、弦巻いわく「SAGAWA戦の方が(出来は)良かったです。それに、(山雅は)もっと、できるチームです」。

≪吉澤監督の凱旋≫
山雅の吉澤英生監督は現役時代、Hondaの左SBで、後に監督を務めた経験もあります。現在、Hondaの主将を務める石井雅之(32歳)とは現役時代からの“長い付き合い”。昨年の地域決勝時、石井は「山雅のことが気になって、ケータイでチェックしていました」とか。そして、かつての左SBが“古巣で”かつての後輩を翻弄。その上、1点目は“吉澤監督のポジションだった”左SBサイドからのクロスから――。例えば、来季の天皇杯で『続編』が見たいものです。

[観客数は頭打ち]
チームが大健闘しているにも関わらず、山雅はホーム開催試合の観客数が“頭打ち”気味です。例えば、後期10節(10月17日)の横河武蔵野戦は5568人。今季最多の6102人(前期9節、5月2日、対流通経済大学FC戦)には及びません。残すホームは後期13節(対佐川印刷)、後期14節(対町田ゼルビア)、そして後期16節(ガイナーレ鳥取)の3試合のみ。GMらが率先してチラシ配布などのPR活動や、“選挙運動さながらの”街頭演説をしないのは“もったいない”。地元マスコミを含めて、日本全国の長野県出身者(あるいは、その子供など長野県に縁がある人)などに『サッカーの質も高い』とアピールしないのも“もったいない”。

J2の現状を見る限り、Jリーグ参入を果たした後は、
1:試合放映権料が高額になり、地元局での放映が激減するのは必至。
2:チーム順位は低迷する可能性が高い。J2とJFL間に『降昇格』制度が始まるまで続くかもしれません。

是非、『ガイナーレ鳥取よりは“かなり”勝ち点が少ないけど、観客数ダントツ1位で、Jリーグに参入しようキャンペーン』程度のことは、してほしいものです。

[躍進を続けるためには]
多くのJクラブにも言えることですが、選手の成長よりも“速いペースで”強いチームになることを期待する(目指す)ため、多くの選手が若くして『戦力外』に、なります。見方をかえると、選手『使い捨て』の連続でチーム強化するのではなく、選手の成長ペースに合わせて、多くのファンが楽しむクラブがあっても良いのでは?

そもそも山雅が「秋から好調になる」ということは、開幕前の練習環境が相対的に良くないにもかかわらず、新加入選手が多いことも影響しているはずです。見方を変えれば、恵まれない環境下で、バックアップ選手たちも真面目に練習をしてきたからこそ、長らく低調だった小林や石田が復調したのでしょう。

とすれば、選手のモチベーションを高めるために、例えば、「もし4位以内になったら、報酬などの条件が格段に良くなるとは保証できないが、希望選手全員と来季も契約をする」と宣言する策が効果的。『サッカーの質』という観点でも、発展途上のチームが、最多で“あと5試合”しか見られないのは“もったいない”。早速、弦巻と飯田真輝(前・東京V)らと移籍“延長”交渉をしてほしいものです。そうすれば、もし『5位以下』で終わっても、来季は万全の状況でスタート・ダッシュできるのは?

<写真>Hondaに勝利した後、バックスタンドの山雅ファン

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