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Jを目指せ! by 木次成夫

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第229回「地域決勝・特別編 激戦区『C組の3日間』第3日目」
by 木次成夫

『3グループ中、最上位の2位』も決勝ラウンドに出場できる規定ならば、一次ラウンド3日目(最終日)は全6試合を同じ時間に開始すべきではないのか? そんな疑問を感じつつ、『最上位の2位』を巡る展開を振り返ります。

[2日目終了時点の順位]
1位:カマタマーレ(勝ち点6、得失点差+2)
2位:長野パルセイロ(5、+3)

この時点で、パルセイロはカマタマーレに『90分』で引き分けても、『PK戦』で勝てば、勝ち点で並び、得失点差で上回り、1位になる状況でした。

[3日目]
第1試合の結果(カッコ内は勝ち点、得失点差)
■Aグループ
HOYO アトレチコ・エラン(4) 2-3 YSCC(6)

*この結果、YSCCの2位以上が確定。第2試合は相模原(2日目終了時点=5)対レノファ山口(同0)。相模原は『90分』で引き分ければ、PK負けしても勝ち点6(+3)。つまり、YSCC(6、+1)と勝ち点で並ぶものの、得失点差で1位。その一方で、レノファが『90分』で勝った場合、1位はYSCCで、相模原は2位(勝ち点5、+2以下)。

■Bグループ
Shizuoka.藤枝MYFC(4) 4-1 札大GP(4)
*第2試合はグルージャ盛岡(2、-1)対三洋電機洲本(5、+3)。グルージャが3点差以上で勝てば、グルージャと三洋が勝ち点5で並び、得失点差でグルージャが1位。

■Cグループ
福島ユナイテッド(4) 4-0 さいたまSC(0)

[最上位の2位になる条件]
第1試合の結果により、『勝ち点6』が2位で決勝ラウンドに進出する条件となりました。つまり、パルセイロとカマタマーレは、『90分』で引き分ければ両チームとも決勝ラウンドに進出。その一方で、『90分』で勝敗が決すれば、敗れた側が一次ラウンド敗退に終わる可能性が残っていました。

●11月23日
第2試合
カマタマーレ讃岐 1-1(PK3-2) 長野パルセイロカ

≪得点経過≫
18分 0‐1(得点=パルセイロ:FW宇野沢祐次)
*右サイドから右SB野澤健一(26歳、前・佐川印刷)がクロス→ヘディング

この時点で、相模原がレノファに2―0で勝っていたため、カマタマーレは一次ラウンド敗退の危機。0-1でカマタマーレが敗れれば、YSCCと「勝ち点6、+1」で並ぶものの、総得点(YSCC=6、カマタマーレ=4)の差で、YSCCが『最上位の2位』。

22分 1-1(得点=カマタマーレ:DF波夛野寛)
*FK(右SB下松裕)→ヘディング

[試合総括]
守備重視の安定策で入ることも“ありえる”と思っていたのですが、両チームが選択したのは一見して、真剣勝負でした。試合後、「終盤に指示がでるまで、90分で引き分ければ決勝ラウンドに進出できるとは知らなかった」と語った選手は、少なくとも複数。

C組1位と『最上位の2位」は決勝ラウンド(12月3日~5日、千葉県市原市)の初戦で対戦することが決まっていたため、お互いが「どうせ次も戦うなら、今のうちに叩こう」と考えたのかもしれません。

試合を通して印象的だったのは、パルセイロのサッカーが“突然”好転したこと。前線を狙ったロング・パスと、中盤で“つなぐ”パスを効果的に使い分け、上々のパフォーマンスを披露しました。まだ完全復調ではないものの、攻撃的MF佐藤大典がスタメンに入り、ベストの布陣で臨んだことも、その要因でしょう。他の選手を活かしつつ、自分も持ち味を出すフリーランニングなど、「やっぱり、大典の存在は大きい」(薩川了洋監督)。

両チームが引き分け狙いのプレーに転じたのは、後半40分を過ぎてから。パルセイロFW宇野沢がカマタマーレ陣内のコーナーフラッグ付近でボール・キープし、その後は、ボールを蹴って出されて→スローイン→キープ→再び出されて……、というパターンの連続。経験豊富な宇野沢には、『千両役者』的な風格があったものの、中には『演技』に戸惑う選手もチラホラ。

[カマタマーレ人気上昇の要因]
全社(全国社会人選手権)で初優勝を果たした約1ヵ月後に、近隣の高知で地域決勝一次ラウンド。多くのファンが観戦し、複数の地元報道機関が取材に訪れ、初の決勝ラウンド進出決定。そして、今季からチームを率いる北野誠監督は地元・香川県出身の元Jリーガー。四国リーグ2位、全社(全国社会人選手権)2回戦敗退に終わった昨季と比べると、様々な面で『タイミングが合っている』と実感します。全社にしても今年は山口県開催。昨年開催の千葉県に比べると近場です。

また、北野誠監督の人望には、カマタマーレ関係者すら驚いたほどだったようです。個人後援会が発足した他、支援者が自動車をクラブに貸与してくれたり、とある銭湯が選手の利用料金を無料にしてくれたり。今まで「(選手は)うどん定額で食べ放題」など独特の支援を受けてきたクラブならでは――。ちなみに、町田ゼルビアから期限付き移籍した飯塚亮いわく「風呂屋が無料なので助かります。1日に2回行くこともありますよ」とか。

その飯塚いわく「福島(ユナイテッド)戦はヤバかったっすよ」――。実は、緊張しまくっていたのだとか。その翌日、さいたまSC戦で得点を決めるなど、好結果を残せたからこそ言えるのでしょうが「JFLでは経験できない緊張感です。でも、2度と経験したくないですけどね」(笑)。

[写真]カマタマーレ讃岐対長野パルセイロの終盤、ボールをキープする宇野沢祐次(右端)

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