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Jを目指せ! by 木次成夫

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第231回「『地域決勝』決勝ラウンド特別編 1日目」
by 木次成夫

世の中には、いったい何の意味があるのか理解に苦しむ規制や規則が多々ありますが、地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)も同様です。例えば、一次ラウンドで敗退した福島ユナイテッドはクラブ公式HPで「写真掲載規制」に関して記しています。他クラブのHPを見ても、試合写真が、ほとんど掲載されていません。実は「バナー広告のあるクラブHPへの試合写真掲載は禁止と言われた」(複数の参加チーム関係者)のだとか。

Jリーグでは許可されていることが、なぜか地域決勝では不可。マスコミに報道される機会が相対的に少ない地域リーグ所属クラブにとって、自前のHPは貴重な情報発信の場。そして、地域決勝は絶好のPR機会。言い方をかえれば、規制はクラブにとって、大きなダメージです。抗議しないクラブ側も、どうかしていると思いますが……。

●12月3日
『地域決勝』決勝ラウンド
1日目 第2試合
カマタマーレ讃岐 0‐0(PK7-6) 長野パルセイロ

幸いにも、雨から一転して“暑いほどの”快晴になったものの、ゴールから対面のゴール方向に吹く強風は、試合中どころか、夜まで続きました。前半はカマタマーレが風上で、後半はパルセイロが風上。さらに、後半の風下は、逆光(太陽が右前方)。つまり、カマタマーレGK家木大輔(24歳、前・姫路独協大学)は試合終盤、風に加えて、陽の眩しさとも戦ったわけですが、最後まで果敢なプレーを披露しました。

カマタマーレとパルセイロが対戦するのは、今季3試合目。10月の全社(全国社会人選手権)決勝は2-0、11月の地域決勝一次ラウンドは1-1(PK3-2)。つまり、3戦3勝です。

≪シュート本数≫
カマタマーレ=13本(前半=8本)、パルセイロ=5本(前半2本)

数字だけみると、カマタマーレが圧倒していますが、実際は、互角の展開でした。ただ、
どちらが、ゲームプラン通りのサッカーができたかというと、カマタマーレでしょう。
パルセイロは一見主体的にボールを回しているようで、カマタマーレの組織的な“寄せ”にハマり、前に進むにつれてサイドラインに追いやられ、“ほぼ”内に切れ込めず。悪い時の典型ですが、FW宇野沢祐次の単独突破はシュート前に止められ、両SBは効果的に攻撃参加できず。その一方で、カマタマーレでは風下でも、丁寧にボールをつないで、決定的チャンスも演出しました。

試合後、カマタマーレの北野誠監督いわく「勝ち点2を獲ったと言うよりは、勝ち点1を失った。勝ち点3を獲って勝ちたかったし、勝てる試合内容だったと思う」。

そこまで言うほど内容が良かったとも思えませんが、今まで同監督の話を何回か聞く限り、報道陣を通して、選手を鼓舞する(自信をつけさせる)ことも狙っているように感じます。

[カギは元バンディ・コンビ]
安定した守備の軸になっているのは、かつて地域決勝で複数回“悲劇”を経験した前・バンディオンセ加古川(07年までは、バンディオンセ神戸)所属のCB神崎亮佑(28歳、元・川崎)と右SB下松裕(30歳)です。

例えば、07年の決勝ラウンド。2人とも主軸だったバンディは2日目終了時点で首位にたちながら、3日目に4位に脱落。JFL昇格を果たしたのは、ファジアーノ岡山、ニューウェーブ北九州(現ギラヴァンツ北九州)、MIOびわこ草津。

パルセイロ戦後、神崎に07年のことを問うと「あの時は、皆、上がれると思ってしまいました」と笑いつつ、今は「勝利で浮足立っている選手は1人も、いません」(神崎)。

ちなみに神崎は05年、06年、07年、08年に続き、今回が5回目の地域決勝出場です。

[飯塚亮のモチベーション]
すでに町田ゼルビアは何人かの選手の契約満了(要は戦力外)を発表しました。その中には、石堂和人、雑賀友洋らJFL昇格に貢献した選手たちも――。

しかし、ゼルビアからカマタマーレの期限付き移籍中の飯塚亮(23歳)は、「まだ何も言われていません」(本人)。つまり、今回の地域決勝は飯塚にとって、ゼルビア首脳陣にアピールする『最後のチャンス』でもあるわけです。

[パルセイロの意地]
ライバルの松本山雅に追いつくことが、クラブ関係者にとっても、選手にとっても、最大のモチベーションでしょう。ただ、その一方で、危機感がプレッシャーになっている感もあります。そういう観点では、初戦PK敗は、開き直りのチャンス。ちなみに、昨年の決勝ラウンドでは、山雅がツエーゲンに初戦でPK敗、その後、2勝しています。

カマタマーレ戦後、かつて山雅の戦力外になった経験のあるMF土橋宏由樹いわく「もちろん、来年のクラシコ(パルセイロ対山雅)は勝つつもりですよ」。

山雅は大方の予想通り、多くの選手を戦力外にしました。この際、土橋と一緒にプレーした経験のある選手が、こぞってパルセイロに移籍すれば、さらに県内が盛り上がるのでは?

[高まる地元の注目度]
香川県からは、新聞は複数社、TVはNHK高松支局の他、民放数社が出張取材に来ています。瀬戸内海の対岸にある岡山(ファジアーノ岡山)の影響が大きいようです。要は、『岡山に追いつけ!』という気運。また、チームへの関心を高めてもらうべく、北野監督がマスコミ関係者との懇親会を開くなど積極的にマスコミ対策を講じて来た成果ともいえるでしょう。

そして、長野県からは、例えばサッカー報道に積極的な地元の有力紙、信濃毎日新聞はカメラマン1人と、記者複数の体制で取材。パルセイロがJFL昇格を果たした際は、『昇格記念グラフ誌』を発行する予定だとか。

●第1試合
YSCC 1-2 三洋電機洲本

[試合総括]
三洋は4分に先制されたものの、20分と78分に“流れの中で”相手守備陣を崩して逆転。
企業サッカー部らしい、組織的な“まとまり”のあるサッカーを終始展開しました。言い方を代えると、JFLのホンダロックなど同様に、『一緒に働き、一緒にサッカーをしている仲間たち』らしいサッカー。その一方でYSCCは、中盤のパスワークは美しいものの、相対的に淡泊なプレーが目立ちました。

[写真]勝利に歓喜するカマタマーレ讃岐の選手たち

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