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Jを目指せ! by 木次成夫

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第233回「『地域決勝』決勝ラウンド特別編 3日目」
by 木次成夫

JFL昇格を決めたのはカマタマーレ讃岐と長野パルセイロ。そして、三洋電機洲本はアルテ高崎との入替戦へ。今年も地域決勝はドラマチックでした。世の中、これほど面白い無料イベントは稀ではないかと思うほど――。

[2日目終了時点の順位]
1位:カマタマーレ讃岐(勝ち点5、得失点差+1)
2位:長野パルセイロ(同4、+4)
3位:三洋電機洲本(同3、-3)
4位:YSCC(同0、-2)

●12月5日
『地域決勝』決勝ラウンド
3日目 第1試合
YSCC  0-0(PK3-1) 長野パルセイロ

[昇格のシナリオ]
パルセイロ:90分間で引き分ければ、2位以内が確定→昇格決定
YSCC:90分間で勝利し、第2試合で三洋が90分間で敗れれば、勝ち点3で並び、得失点差で上回り、3位→アルテ高崎との入替戦に進出

[試合総括]
お互いがパス・サッカー志向で、相手の良さを消すよりも、自分たちの持ち味を活かすことを重視するタイプ。その上、YSCCは90分間で勝たなければ昇格の可能性がゼロになる状況となれば……、期待していた通り、序盤から見応えのある展開になりました。

≪シュート本数≫
YSCC=14本(うち前半9本)、パルセイロ=14本(うち前半3本)

前半は、どちらかというとYSCCペース。中盤後方から左右を揺さぶる『横のパスワーク』でパルセイロを翻弄するシーンもあったほど。ところが、後半は徐々にパルセイロがペースを握り、決定的チャンスを何度も演出しました。パルセイロの修正能力が高かったと言うよりは、YSCCは3試合とも『ペースダウン』が早かったという印象です。

[ボランチ大橋良隆の2年間]
試合後、嬉し涙を流す選手が多い中、ひと際、目立ったのが大橋(27歳)でした。一時は号泣。後に話を聞くと、「NECトーキンのことも思い出しちゃいまして……」(大橋)。

08年、大橋はNECトーキンの主軸として全社(全国社会人選手権)に出場し、悲願の『地域決勝』出場権を獲得したものの、会社の方針で参加辞退→サッカー部廃部。翌09年、『仕事とサッカーの両立』という環境ながらも、パルセイロを新天地に選び、主軸ボランチとして活躍。しかし、「(JFL昇格という)期待に応えることができませんでした」(大橋)。

現在はガソリンスタンド勤務。大橋がいることを知って、来店するようになったファンもいるそうです。

[パルセイロの今後]
薩川監督は今季が柏レイソルから出向3年目。以前から「昇格しても、大幅な選手入替は、したくない」と言っていました。来季の去就は未定だそうですが、今大会2日目に聞いたところ、「そりゃあ、ここまでやってきたんだから、次も(パルセイロの監督を)やりたいよ」(薩川さん)とか。

是非、レイソル首脳陣には寛大な配慮を、お願いしたいものです。まあ、今「レイソルの宝」である薩川さんを戻すタイミングではないことは、誰もが認識しているでしょうが……。

●第2試合
三洋電機洲本 0-1 カマタマーレ讃岐

[昇格のシナリオ]
カマタマーレ:90分間で引き分け以上→1位→昇格。90分間で敗北→3位→入替戦
三洋電機洲本:90分間で勝てば、1位。

≪得点経過≫
58分 0-1(讃岐得点:神崎亮佑)
*直接FK(下松裕)→クロスをヘディング

[試合総括]
“これが地域決勝の難しさなのか”と実感させる試合でした。カマタマーレは前半、大苦戦。全社から前日(地域決勝決勝ラウンド2日目)までとは、まるで別のチームであるかのように、選手の動きが鈍く、これでは敗戦もありえると思ったほどでした。

「選手に指示しても反応がなかった」(カマタマーレ関係者)。
「縮こまっちゃいましたが、それでも前半を無失点で抑えたのが大きかったです」(主将の右SB下松裕)

最終的にチームを救ったのは下松と神崎の前バンディオンセ神戸(加古川)コンビでした。まるでドラマのような劇的結末ですが……。

[右SB下松裕の2年間]
試合後、下松は涙で声をふるわせながらも、他の選手たちに整列など様々な指示をだすなど主将としての役割を全うしました。カマタマーレの加入したのは、09年。08年の地域決勝一次ラウンドで敗退後、バンディは運営会社が経営危機に陥り、神崎、下松ら多くの主力がチームを離れました。ただ、神崎が早々にカマタマーレ加入を決めたのに対して、下松はセレクションに参加。合格が決まる前、「プロ契約には、こだわっていません。サッカーが続けられるなら、それで良いです」と語っていたのが記憶に残っています。

現在の仕事を問うと「スポーツ・デポで働いています」(下松)。

この際、クリスマスに向けて『JFL昇格記念スパイク特別フェア』 でも開催して、プレースキックも得意な下松が商品説明をすれば効果絶大では?


[写真]昇格決定後、歓喜するカマタマーレ讃岐の神崎亮佑(左)と下松裕

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