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Jを目指せ! by 木次成夫

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第234回「福島ユナイテッド・セレクション」
by 木次成夫

12月12日、福島ユナイテッド(以下、福島Uと略)の『第1回セレクション』が千葉県流山市の江戸川大学で開催されました。首都圏で開催するのは、参加者のアクセスを考慮してのことでしょう。ちなみに昨季はグルージャ盛岡も同大学でセレクションを行いました。

セレクション参加者は約20人。うち、JリーグあるいはJFLクラブから戦力外通告された選手は、おそらく0人。福島県の取材関係者も0人。一般の見学者数人(ヒトケタ)。

JFLに最も近いチームのひとつゆえ、注目していたのですが……。ただ、選手の真剣なプレーぶりは、過去数年見て来た地域リーグ所属クラブのセレクションでは随一でした。

セレクション後には時崎悠コーチが、面接に進む6人の名前を発表し、同大学内のクラブハウスで、それぞれ10~15分程度の面接。寒い中、順番を待つ選手たちは、一般企業の就職面接さながらに真剣な面持ち。もし、アルバイトなどとの両立でも頑張ろうという覚悟があるなら、全員を合格にしても良いのではないかと思ったほどです。

[地域決勝敗退後の福島ユナイテッド]
福島Uは去る11月、地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)初出場を達成したものの、一次ラウンドで敗退しました。そして、12月7日には、地元新聞が『同クラブ代表が来年(11年)1月に退任し、チーム運営は県内の経済人などが新たに作る新会社が引き継ぐ』という趣旨の記事を掲載。しかし、その後、クラブ側は公の反応をしていません。

セレクションを見に行ったのは、そんな状況が気になったことも理由でした。そして、セレクション後に手塚聡監督に新体制への移行に関して問うと「そういう方向で進んでいます」という答。続いて、体制が決まっていない中でセレクションを開催したことに対しては、「今から準備して行かないと、(来季に)間に合いません」。さらには、「(今季の)緊急事態宣言のようなことは、2度とあってはならない。狼少年になってしまいますから」とも――。

[昇格か残留かは紙一重]
福島Uは地域決勝一次ラウンドで、後にJFL昇格を決めたカマタマーレ讃岐、長野パルセイロに次ぐ3位。カマタマーレには個人技による1失点のみ、パルセイロにはPK戦での敗北。つまり、惜敗でした。初出場としては、『上々の結果』とも言えます。

総合力では、試合結果以上の差も感じましたが、選手個人の能力差だけではなく、“慣れ”の問題もあったと思います。つまり、シーズン中、個々の競り合いで上回る相手との対戦機会が多ければ、選手たちも「1人で無理なら複数で対応しよう」などの対策ができたかもしれません。実際、全社(全国社会人選手権)の時と比べると地域決勝では、選手たちの対応に“慣れ”を感じました。

にもかかわらず、その後、福島U周辺で「あと少しだ」という気運が盛り上がらないのは、不思議です。就職するまで福島県に縁がなかった現代表が20代(当時)にゼロからスタートしてJFL直前に至っただけでも、大偉業なのに――。

[セレクション・シーズン展望]
福島Uのセレクション人気がイマイチだったのに対し、例えば、9日と10日に滋賀県内で開催されたMIOびわこ草津のセレクションには「約90人が参加しました」(MIO関係者)とか。来季でJFL昇格4年目。地域リーグ所属時代同様、ほとんどの選手がアマチュアで、平日の練習は仕事後の夜間という状況の割には、多くの選手が集まったという印象です。

Jリーグ・クラブの増加と共に、前Jリーガーが増え、大学新卒などのアマチュアにとっては「上を目指すクラブ」は狭き門になっているということかもしれません。ただ、MIOに限らず、前Jリーガーに比べて、学卒アマチュアが不利とは限りません。

JFL昇格を果たした2チームの今季を例にとると、長野パルセイロはプロ2人(土橋宏由樹と勇田勇一)で、カマタマーレ讃岐は下部組織のスクールでコーチをしている数人以外は、一般の仕事とサッカーの両立。例えば、パルセイロの宇野沢祐次(元・柏など)は、開幕当初に話をした段階では、信濃毎日新聞系列の会社で「社員の名刺などを作っています」(本人)とのことでした。

宇野沢のように「仕事との両立」を選択するか、現役続行を断念するかは人様々ですが、「仕事との両立」ができるか否かも人様々。つまり、サッカーの能力だけでなく、社会人としての『生活力』(自炊能力など)も問われるわけです。

JFL以下のほとんどのクラブは寮などの整備に力を入れていません。冗談ではなく、JFL以下のクラブに加入することが決まった選手は、『自炊の練習』もした方が良いと思うほどです。特に前Jリーガーは、多くの面でJクラブよりも劣った環境にもかかわらず、多大な期待を背負わされるわけですから。

≪長崎OR山雅≫
参加選手の選択という観点で注目しているのは、多くの選手を戦力外にしたV・ファーレン長崎と山雅です。セレクションは共に1月12日。V・ファーレンは長崎市で、山雅は東京都内で――。

V・ファーレン長崎:契約満了15人、引退1人、退団2人、移籍1人(12月14日時点、以下同)。
松本山雅:契約満了11人。引退1人。

同じJリーグ準加盟でも、山雅はスタジアムに“ほぼ”問題がない一方、V・ファーレンはスタジアム改修中で、13年春に完成予定。

果たして選手たちは、今週にセレクションを開催する町田ゼルビアを含めて、どのような判断をするか? 例えば、『あと1シーズンでJリーグ参入』という結果が求められる上に、現体制である限り、東京V(あるいは東京Vに縁がある関係者がいるクラブ)から選手が“降りてくる”であろう山雅よりも、長崎で「3年目にJリーガーを目指す」のもアリだとは思います。

[写真]セレクション中の手塚聡監督(手前)と時崎悠コーチ

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