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Jを目指せ! by 木次成夫

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第235回「FC琉球トライアウト→松本山雅 退団選手送別会」
by 木次成夫

少子高齢化と地方格差が社会問題の昨今、人間的にも魅力のある選手たちを手放すのは、クラブだけではく、地域全体として、もったいないことでは? そんなことを考えた先週末でした。Jリーグを目指すプロセスとして、トップチーム強化は大事なことでしょうが、地域ぐるみで『現役時代はサッカー人生の一部』と考えて、縁あって田舎(地方)に来た選手には生涯住んでもらうという狙いもアリでは? 自治体主導で「短期的に解雇されるJ2クラブと違って、うちは、引退後に教員などの就職も保証します」とアピールするとか……。
 
例えば、冒頭の写真。松本山雅を去る小林陽介(27歳、前・ロアッソ熊本←横河武蔵野←浦和レッズ←同ユース)は、『もったいない』の典型だと思います。際立ったセンス、イケメン、ファンへの気配り。すでに新加入が発表された選手と比べても、何が問題なのか理解不能。百歩譲って、たとえ小林の能力不足でJ2参入を1~2シーズン逃したとしても、やがて引退後に、例えば女子チーム(U-15、U-18、トップ、オバサン、オバアチャン)を作って、指導責任者に就任するとすれば……、
嬉しくないですか? 予約殺到では? また、長野県は女子サッカーの普及は圧倒的に遅れていますし、大問題の『子供の運動能力低下』の改善にも、つながるのでは? 

●12月18日
FC琉球トライアウト

会場は、さいたまスタジアムの隣にある人工芝ピッチ。一次セレクション後に即、二次セレクションという形式でした。『一次』の参加者は、一見して60~70人程度。プロ契約が期待できるという観点では、JFLトップクラスの人気があってしかるべきFC琉球の割には参加者が地味……。と思いきや、『一次』終了間際に、JFLや地域リーグ強豪クラブ所属選手が続々と登場。例えば、町田ゼルビア(石堂和人など)、V・ファーレ長崎(伝庄優など)、横河武蔵野(桜井直哉など)、福島ユナイテッド(渡辺学など)。その他、ファジアーノ岡山から松本山雅に期限付き移籍していた武田英明などJリーガーも――。

つまり、有力選手は『一次免除』だったわけです。ちなみに、『二次』参加者は20数人でしたが、うち『一次』合格者は、わずか3人という狭き門。また、視察している人たちの中に、“なぜか”福島ユナイテッドの時崎悠コーチを見かけました。

最も印象に残ったのは、ゼルビアの石堂(28歳)。昨季はほとんど出番がなかったものの、左足を駆使したパスセンスは相変わらず際立っていました。ゼルビア時代、子供向けスクール・コーチとして絶大な人気を誇っていた実績も加味すれば、例えば福島Uにとっても、『狙い』だと思うのですが……。

●12月19日
松本山雅サポーター主催
「退団選手送別会」

松本山雅は昨季まで数年、シーズン終了後に選手とサポーター(ファン)が交流できる『パーティ』を開催していました。しかし、今季は、なぜかナシ。そこで代替として、サポーターが主催したのが『退団選手送別会』でした。

会場は、山雅がメイン・ホームとして使用している競技場アルウィン。契約が満了した13人のうち6人が参加(齋藤智閣、竹内優、小澤修一、高沢尚利、大西康平、小林陽介)。サポーター・グループのHPに概要が発表され、サポーターのブログやツイッターなども通して参加者を募っただけにもかかわらず、一見して1000人内外が集まりました(信濃毎日新聞記事によると「約1500人」)。

事前に告知された日程は『10時30分開始で30分程度』。しかし、実際には、挨拶などのセレモニー後に競技場外で写真撮影、サイン&会話などの交流時間もあり、最終的に選手が去ったのは午後1時前。日本全国、クラブ側の対応に満足しきれないサポーター(ファン)の皆さんには、是非、今後の参考にしていただきたいです。

[ゆっくり待つサポーター、去らない選手]
選手との記念撮影では数十人単位で順番を待ち、その後は、適度にバラけた選手の前で列になって『交流』の順番を待つ――。ほとんどの人が“我先に”と急がない。先に並んでいる人を急かさない。にもかかわらず、それぞれが『満足できる時間』を共有している(ように見える)。また、選手たちからも「この場を早く去りたい」という雰囲気は感じられません。

お互いの顔が見える関係、お互いに顔を見ようとする関係。今まで培ってきた信頼関係の賜としか評しようがありません。是非、クラブ首脳陣にも見てほしかったです。サポーター(ファン)が求めているのは、サイン会やサッカーがらみのイベントだけではなく、直接的なコミュニケーション、つまり、『会話』だという光景を――。

ちなみに、試合後の監督記者会見では、流れに関係なく、クラブ側が一方的に「では、最後の質問を、お願いします」と言うのが恒例です。

●松本山雅 応援ありがとう 握手&サイン会

会場は松本市の隣、塩尻市にある大型商業施設内。参加したのは、契約更新をした阿部琢久哉と石川扶。当初の予定は、『15時半開始で、トークショー、ビンゴ大会、サイン会などをして、17時に終了』でしたが、実際に終わったのは18時くらい。1時間以上、サインと記念撮影に応じた2人は、さすがに疲労気味。ちなみに、このイベントでもサポーター(ファン)たちは、列になって順番を“じっくり”待っていました。複数のサインを求める人もいれば、写真を何度か撮りなおす人も――。また阿部と石川も、カメラの画面を見てチェックして、思案気味の人に対して、「もう1回、撮りますか?」と声をかけるなど配慮は抜群。ファン・サービスという観点では、もはや『二大エース』と言っても過言ではない2人とはいえ……。

イベント終了後、阿部いわく「さすがに、今日はキツかったです」。サインで手が疲れたのかと思いきや、「ずっと椅子に座っていたので腰が……、あと、顔が引きつっています(笑)」。

阿部からすれば、『親友の竹内優の分まで頑張る』ということかもしれません。阿部と竹内は駒澤大学で同期。共に推薦入学ではなく、一般受験。そして、4年時には揃ってインカレ(全日本大学選手権)優勝に貢献しました。卒業後、阿部はTDK(秋田)へ加入したものの、翌年には、竹内が所属している山雅へ移籍。以来3シーズン――。

「サポーターがたくさんいるのは、ありがたいことです」(阿部)。

ファン数では山雅に“はるかに”劣るTDK(現ブラウブリッツ秋田)でプレーした経験も活きているということでしょう。

サポーターに好かれるチームとは? サポーターが増えるチームとは? そもそも、サッカーは技術だけではなく、心を含めたコミュニケーション・スポーツなのに――。

例えば、4年ぶりの出戻りが発表されたFW片山真人(前・水戸)にしても、「ほとんどの選手の皆さん、初めまして、片山です」という状況は、タイミングが悪いのでは?

今後、サポーターの方には、是非、同じアルウィンの外で『GMと監督に感謝する会』を主催してほしいものです。山雅はコミュニケーションが最大の財産だということを退団選手が教えてくれた後に、「我々は断る」というわけにはいかないでしょうし――。

[写真]ファンと話す小林陽介。既婚ながら、女性人気も抜群でした
山雅送別会

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