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Jを目指せ! by 木次成夫

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242回 グルージャ盛岡セレクション
by 木次成夫

2月5日、千葉県浦安市の明海大学でグルージャ盛岡がセレクションを開催しました。参加選手は約20人。中には、長野パルセイロ、栃木ウーヴァなど複数のセレクションで見かけた大学生もいました。ただ、わずかに期待していたのですが、JFLクラブを戦力外になった選手は0人。昨季のグルージャをベースに見て、『チーム力アップ必至』と感じるレベルの選手も0人。JFLに「プレー報酬ナシ」のクラブが複数ある中、遠隔地の地域リーグ所属クラブで上を目指すモチベーションを見出すことは容易ではないということかもしれません。

セレクションは、『参加者選抜』対明海大学サッカー部という形式で行われました。参加者の希望ポジションとの兼ね合いでしょうか、グルージャ所属のGK斉藤洋平(27歳)とMF松田賢太(前・八戸大学、26歳)も『参加者選抜』でプレー。パスを受ける際のカラダの向き、トラップの角度など、松田の巧さは際立っていました。

[群雄割拠の東北]
グルージャが短期的大補強の成果で、地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)に初出場したのは05年。その後、クラブは経営難に陥り、リスタート。06年は東北1部2位に終わったものの、07年以降は4連覇中です。しかし、5回出場した地域決勝は、すべて一次ラウンド敗退。ちなみに、昨季は三洋電機洲本と勝ち点、得失点差で並びながらも、総得点で及びませんでした。

07年のTDK(現ブラウブリッツ秋田)以降、東北地域からJFL昇格を果たしたチームは、ありません。結果的に、「Jを目指すクラブ」が群雄割拠するという観点では、日本随一の地域になりつつあります。例えば、

東北1部:グルージャ、福島ユナイテッド(昨季2位。地域決勝一次ラウンド敗退)
東北2部:ヴァンラーレ八戸(昨季2部北ブロック2位)、ガンジュ岩手(今季昇格)、コバルトーレ女川(昨季1部最下位)

岩手県3部:アンソメット岩手八幡平

[Jを目指すクラブと国体のタイミング]
岩手県は2016年に国体(国民体育大会)を開催する予定です。伝統的に、国体開催自治体は競技場などのインフラ整備に加えて、選手(チーム)の強化も積極的。開催数年前から、子供(学生)の強化に力を入れたり、相対的に実力がある社会人を公的機関で雇用したり。サッカーなどチーム競技では、特定のチーム(あるいは、特定のチームをメインにした選抜チーム)を『国体強化チーム』に指定して、特別な予算を配分したり――。

40数年に一回の地元開催に向けて、異例の税金を使うわけです。『Jを目指すクラブ』にとっても、他人事ではありません。例えば、

07年:秋田国体
*国体と「Jを目指すクラブ」のタイミングが合わなかった典型例。TDKを『強化チーム』にして、複数のサッカー競技場を整備した一方で、当時の秋田県には「Jを目指す」動きがなかったことも影響したのでしょうが、Jリーグ参入に向けた競技場整備は、しませんでした。

11年:山口国体
*レノファ山口が『山口選抜』のメイン。地元国体優勝→中国リーグ優勝→ファン激増→JFL昇格→国体のために整備した競技場の有効使用、となるのが理想的シナリオですが……。

12年:岐阜国体
*『強化チーム』はFC岐阜セカンド。国体に向けて競技場を改修した点も含めて、FC岐阜はタイミングが良いです。

14年:長崎国体
*V・ファーレン長崎はプロ・クラブゆえ、『国体選抜』として出場できませんが、ホームの競技場は改修中。この際、『V・ファーレン・セカンド』を作り、税金の援助を受けて、選手強化を促進する策もアリだと思います。

15年:和歌山国体
*今季、関西2部に昇格するアルテリーヴォ和歌山の動きに注目。

[2016年岩手国体に向けて]
一般的に、国体に向けて、最も多額の税金を使う大義名分になりやすいのは、開会式(閉会式)も開催する陸上競技場です。つまり、国体サッカー競技とは関係ない事情で、改修(整備)すれば、「Jリーグ基準のクリア」に、つながる可能性があるということ。

では、岩手県は……、盛岡市にJリーグ基準の競技場は、ありません。そして、国体のメイン競技場は、北上市総合運動公園陸上競技場。岩手県の行政及びスポーツ教育関係者にとって、「Jを目指す」ム―ブメントは、どうでも良いことなのでしょうか? 

[J2⇔JFL降昇格導入まで、あと2チーム]
グルージャと福島U関係者は「群雄割拠になる前に、JFLに昇格したい」でしょうが、もはや『早抜け』がベストの道とは限らないと思います。今季、J2は20チーム。あと2チームが参入を果たし、合計22チームになった後には、JFLとの降昇格が始まる予定です。福島県にも、秋田県にもJリーグ基準を満たした競技場がない状況下、例えば、2016年までの5カ年計画で、東北地域全体の『将来的理想像』を模索することも大事ではないかと思います。


[写真]グルージャ盛岡のセレクションが開催された明海大学の人工芝グラウンド

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