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Jを目指せ! by 木次成夫

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244回 JFL展望その1 横河武蔵野&町田ゼルビア
by 木次成夫

2月20日、横河武蔵野FCとFC町田ゼルビアの練習試合を見に行きました。結果は0-1(45分X3本)でゼルビアの勝利。改めて、「パスをつなぐチームどうしの対戦は面白い」と実感。本番のリーグ戦が楽しみです。

[横河武蔵野展望]
09年シーズンはチーム史上最高の2位と大健闘したものの、昨季は12位。横河電機社員と一般アマチュアの混成チームゆえ、『Jリーグを目指すクラブ』のような補強ができないことも、低迷した要因でしょう。社員選手の勤務時間は一般社員と同様で、サッカー活動への手当(報酬)は0円。アマチュア選手のプレー報酬も0円。そして、平日の練習は夜間――。

ただ、相対的に選手の入れ替えが少ないとうことは、チーム全体に安定感があるということ。また今季は、新加入選手だけでなく、昨季所属選手の成長という面でも『+アルファ』が期待できそうです。

≪5シーズンぶりの出戻り≫
カギを握るのは、『出戻り』FW小林陽介(写真右側=27歳、前・松本山雅←ロアッソ熊本←横河武蔵野←浦和レッズ←浦和レッズ・ユース)。04~06年シーズンに横河に所属し、06年はJFL23得点。その後、ロアッソと山雅で、それぞれ2シーズン、『プロ』としてプレーし、昨季終了後、なぜか、山雅の戦力外に――。

その後、「他のクラブのセレクションは受けませんでした」(小林)とか。横河は古巣ですし、就任5年目の依田博樹監督(横河電機社員)とは旧知とはいえ、プロから一転、「プレー報酬0円」のアマチュアを選択したことは意外でした。

ゼルビア戦はスタメン出場。繊細なポジション取りでDFの裏を狙う動きは、相変わらず。
ゼルビアのCBコンビ、津田和樹(28歳、前・甲府)と田代真一(写真左側=22歳、横浜Fマリノスから期限付き移籍)との駆け引きは、この試合の醍醐味のひとつでした。

小林は得点に至らなかったものの、クロスに合わせたオーバーヘッド・シュート、スルーパスに合わせたシュートなど、実力の片鱗を披露。かつて横河に所属していた当時のメンバーはCB瀬田達弘(27歳、前・東京学芸大学)、左SB小山大樹(30歳、前・群馬FCホリコシ=現アルテ高崎)ら少数ながら、『1月に合流した新人』とは思えないほど、プレー面でチームに馴染んでいたのも印象的でした。

「(小林は)ここ(横河電機グラウンド)が、(人工芝ではなく)土だった頃を知っている選手です。若い選手の手本になってくれると思います」(依田監督)

試合後、小林は自転車で帰路へ。

「近所に(家を)借りました。仕事は、探している最中です」(小林)

プレーを見れば見るほど、話せば話すほど、山雅の戦力外になった理由が、わからなくなりました。

≪加入5年目の決断≫
今季の飛躍が期待される選手の1人、MF桜井直哉(22歳)。都立久留米高校が統合前“最後の年”に全国高校選手権出場した際の主将です。その後、亜細亜大学に進学し、大学サッカー部ではなく、横河に加入。現在、大学4年生。町田ゼルビア、FC琉球、V・ファーレン長崎などのセレクションを受けたものの不合格になり、横河に残留する決断をしたそうです。一時は就職も考え、「内定も取ったんですが、断りました」(桜井)。

ゼルビア戦はボランチとしてスタメン出場。持ち味である巧みなボールコントロールとパスセンスに加えて、以前はイマイチだった『緩急のある動き』に成長を感じました。

[町田ゼルビア展望]
今季からチームを率いるポポビッチ監督(前・大分監督)のもと、選手は総勢23人(2月20日時点)。うち、今季加入は5人。

FWドラガン・ディミッチ(29歳、174㎝、セルビア出身)
DF田代真一(22歳、182㎝、前・横浜Fマリノス)
MFユン・ソンヨル(23歳、180㎝、韓国出身)
*横河戦は右SBでプレー
DF大竹隆人(22歳、171㎝、前・国士館大学)
DF三鬼 海(17歳、174㎝、前・名古屋グランパスU-18)

チーム全体としてSBの層が厚くなった一方、CBは津田(一昨季までは左SB)、田代、川邊裕紀(23歳=加入2年目、前・国士館大学)の3人だけという点は気になります。

ただ、補強の成果とも言えますが、横河戦は、スピーディなパス交換でサイドアタックを仕掛けるスタイルが印象的でした。衝撃的と言っても良いほど。組織的に凌いで、カウンターを狙う横河の粘りも見事でしたが……。

≪元Jリーガーは少数派≫
チームの軸は昨季同様、ボランチ柳崎祥兵(26歳=加入5年目、前・駒澤大学)。パスワークをスピードアップしたり、溜めたり、アクセントをつけたり、スペースを埋めたり――。見方をかえると、柳崎を経由しないと、スピーディながらも単調になりがち。新聞販売店勤務を経て、プロ契約2シーズン目。いったい、どこまで成長するのか? 潜在能力の高さには驚くばかりです。

ちなみに、Jリーグ・クラブのトップチーム所属経験者は『J準加盟』最少の6人。JFL昇格を決めた08年の地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)当時の主力は柳崎を含めて5人、残っています。

FW勝又慶典(25歳=加入4年目、前・桐蔭横浜大学=当時、関東2部)
FW山腰泰博(25歳=加入4年目、前・神奈川大学=当時、関東2部)
MF酒井良(33歳=加入6年目、前・草津)
DF津田和樹(28歳=加入7年目、前・甲府)

クラブ事情で相対的大補強ができない面もあるのかもしれませんが、地域リーグ経験者らが、どこまで通用するか(成長するか)を実感できるのは、Jリーグを目指すクラブならではの魅力だと思います。

≪VS.カマタマーレ讃岐≫
3月13日、JFL開幕戦の対戦相手はカマタマーレ讃岐(今季昇格)。キープレーヤーの1人は、「ゼルビアから契約更新のオファーを受けましたが、カマタマーレへの完全移籍を選択しました」と言うMF飯塚亮。共に素早いボール回しをベースにサイドアタックを仕掛けるスタイルゆえ、展開も楽しみです。

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