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Jを目指せ! by 木次成夫

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247回 頑張れ!ソニー仙台
by 木次成夫

上の写真は、昨年、JFLのソニー仙台(ソニー株式会社・仙台テクノロジーセンター)取材に訪れた際に撮影した同社ビルです。JR仙台駅から石巻方面に向かって約20分。最寄りは多賀城(たがじょう)駅。仙台市ではなく、多賀城市にあります。

3月11日、地震があったのは14時46分。ソニー仙台の選手たちは「当初は松島のグラウンドを使用する予定だったのですが、ダブルブッキングになってしまい、宮城県サッカー場に変更しました。地震に遭ったのは練習の最中です」(田端秀規監督)。

後者は利府町にあります。比較的、内陸かつ山にあることも幸いだったようで、全員怪我もなく、無事。地震後は練習を中止し、選手たちは帰宅したり、避難したり。例えば、攻守の要であるMF瀬田貴仁(25歳、前・東京学芸大学)は「会社の防災委員もしていますし、責任感も強いので、会社に戻って、業務をこなしたようです」(田端監督)。

さすがは、元・日本代表の守護神(GK)を父親に持ち、リーダーシップに定評がある瀬田兄弟の弟(兄は横河武蔵野所属のDF達弘)!! 企業アマチュアの鏡!!

「(瀬田からは)社内で避難しているので無事という連絡を受けました」(瀬田と大学時代の同期で長野パルセイロに所属しているSB高野耕平)

[JFL開催中止]
JFLは3月13日に開幕する予定でしたが、地震当日に1節の中止を決定しました。そして、15日(月)には2節(20日、21日)と3節(26日、27日)の中止も決定。現状では、4月2日あるいは3日に予定されている第4節が初戦になります。

ちなみに、「天災など不可抗力で試合開催ができなくなり、試合運営や遠征に関わるキャンセル料が派生した場合は、JFLが負担する」という趣旨の規約があるそうです。ビジター・チームの遠征費(飛行機運賃、バスのチャーター料金、宿泊料など)は最多で26人分、ホーム・チームの試合運営費用は最多で20万円。つまり、運営費が20万1円以上かかった場合は、ホーム・チームの赤字になるということですが……。

[震災の影響]
ソニー仙台は工場が被災するなどダメージを受けており、15日夕方段階で、「多くの社員が自宅待機という状況で、サッカー部の活動再開も未定です」(田端監督)。

他にも、活動に支障をきたしている「JFL以下」のチームは多数あります。例えば、

グルージャ盛岡(東北1部)
「通常であれば、まだ屋内で練習している時期なのですが、(地震後は)施設の安全確保が十分ではないなどの理由で、暫定的に練習を中止しています。公共バスの便数が減少し、ガソリンも不足しているのも、問題です」(クラブ関係者)

福島ユナイテッド(東北1部)
「福島市営の練習場が全面的に使用中止で、練習ができない状況です。下部組織を含めて、活動再開は未定です」(クラブ関係者)

ブラウブリッツ秋田(JFL)
「練習は通常通りできています。ガソリン不足など心配な面もありますが、リーグ開幕に向けて、日々の練習を頑張るだけです」(ブラウブリッツ広報、岩瀬浩介氏=昨季までDFとしてプレー)

東京電力の計画停電により、平日の練習を夜間に行っている横河武蔵野と栃木ウーヴァは、「オフ」(あるいは自主トレ)に変更せざるをえない状況になりました。

[チャリティ・マッチは、いかがですか?]
試合延期は致し方ないとはいえ、クラブ側からすれば、目先の収入が得られないのは大問題です。また、選手たちはフィジカル、メンタル両面でコンディション維持が難しい。そこで――、試合ができる地域のクラブは、予約済みの競技場を利用して、「チャリティ・マッチ」を開催するのは、いかがでしょうか?

ガソリン不足が問題であれば、近隣の地域リーグ(都府県リーグ)所属クラブ、あるいは大学や高校のサッカー部と対戦するのもアリ。こういう時期だからこそ、地域密着を様々な面で考え直すという意味でも、有意義ではないでしょうか?

対戦相手が見つからないなら、有料で紅白戦をして、急遽、『ファン感謝デー』のようなイベントを開催するのもアリ。そして、収入の一部をソニー仙台などへの支援に使う――。

[JFL展望]
現状(15日時点)では、4節以降も開催できなくなる可能性もあります。ただ、JFLは予備日を設定していない上に、仕事をしている選手が多いチームは平日の試合開催が至難。つまり、近々に現実的な決断をせざるをえなくなるかもしれません。

例えば、あくまで私案ですが、『ソニー仙台に、可能な範囲での参加を認めて、勝ち点などの計算はしない』とか……。

家は損傷していないものの、ライフラインなどの問題で、付近の小学校に避難している関係者もいる状況下、約2週間後にソニー仙台FCがJFLに参戦するのは……、非常に難しいと思います。

「被災者たちのことを考慮すれば、サッカーなんか、やっている場合ではない」と考える人は多いもしれません。ただ、それは「仕事なんかしている場合ではない」と主張しているのと同義だと思います。

仕事とサッカーを両立している選手にとって、サッカーは仕事の一部です。プレー報酬を得ていなくても、有料でスポンサーを募ったクラブの一員であれば、同様です。そして、当たり前のことですが、利益をあげなければ、チーム(クラブ)運営は、できません。

言い方を変えれば、被災していない地域のクラブも経営難になるような事態は、絶対に避けなければいけないと思います。

[将来を見越した競技場整備を!]
この際、Jリーグ基準を改めて、災害時の避難所という機能を含めて、より多くの人たちのためになる競技場整備を推進して欲しいものです。例えば、1万人収容に加えて、一定量の食糧備蓄とテント装備を義務つけるとか。そして、1年に1回、関係クラブのファン感謝デーで、避難訓練をしつつ、備蓄食料を食べる――。

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