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Jを目指せ! by 木次成夫

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249回 栃木ウーヴァ “原点回帰の”リスタート
by 木次成夫

関東地方(東京電力圏内)の電力不足状況は、平日の練習を夜間に行っていたチームにも多大な影響を与えています。もし、JFL前期7節(4月23日、24日)以降が日程通りに開催されても、『計画停電』が実施される限りは、節電は必要不可欠。つまり、夜間練習は至難。横河武蔵野(東京都武蔵野市)と栃木ウーヴァ(栃木県栃木市)は、厳しい状況が続くでしょう。

3月27日(日)、栃木ウーヴァは紅白戦を行いました。会場はリーグ戦でメイン・ホームとして使用している栃木市総合運動公園陸上競技場。幸いにも温暖かつ快晴だったことも影響したのかもしれませんが、大震災以降、週末の活動も中止していた割には、選手たちの動きが良いのが印象的でした。

チーム練習を実施しなかったのは、ガソリン不足も理由だったそうです。その間、選手たちは、暗い中で走り込んだり、トレーニングジムで電気不要の器具も使ったりして、自主トレの日々――。

「サッカーがしたくて、待ち遠しかったんじゃないですかね」(ウーヴァ関係者)。

[ウーヴァ展望]
JFL昇格1年目の昨季は15位。今季はFW高橋駿太(昨季33試合13得点。今季:FC琉球)、MF石舘靖樹(昨季24試合7得点。今季:ツエーゲン金沢)、DF中川勇人(昨季29試合1得点。今季:SC相模原)らが移籍した穴を、どう埋めるかが重要なテーマです。

今季加入選手は、以下の8人。

≪セレクション≫
DF:高櫻健太(23歳、前・徳島ヴォルティス・セカンド)
MF:武藤勝利(24歳、前・長野パルセイロ)
FW:本田洋一郎(27歳、前・ヴェルフェたかはら那須←栃木SC)

≪一本釣り≫
GK:原田欽庸(24歳、前・水戸)
GK:原裕晃(32歳、前・松本山雅←栃木SC)
MF:竹内優(26歳、前・松本山雅)
MF:上西涼(22歳、前・東洋大学)
MF:石堂俊介(25歳、前・埼玉SC←ウーヴァ)

この日の紅白戦では、ファンタジスタ系MF濱岡和久(30歳、前バンディオンセ加古川、元・愛媛FC)と長身FW若林学(31歳、前・栃木SC)がツートップを組み、右MFに竹内、左MFに武藤という布陣に、期待感を抱きました。

[竹内優“5年目”の決断]
昨季後、山雅から戦力外通告を受けた際、「このままではサッカー人生を終えたくない」(竹内)という思いと、就職難の時代に20代後半を迎えた現実のハマザで悩んだこともあったようです。

駒澤大学4年時には巻祐樹、原一樹らと共にインカレ制覇。そして、山雅加入1年目は主力として北信越1部制覇。しかし、2年目以降は持ち味を発揮しきれませんでした。JFL昇格を決めた09年は怪我で長期的に離脱したこともあり、リーグ出場3試合出場1得点。昨季はリーグ8試合出場1得点。最終節、ソニー仙台戦での「復活ゴール」を最後に戦力外通告――。それは同時に、契約社員として勤務していた企業も離れ、新たな人生を模することを意味していたようです。

ウーヴァ移籍の“きっかけ”は、結果的に同じ道を歩むことになったGK原の存在だったそうです。原は元・栃木SCで、ウーヴァには元・栃木SCが多数所属しています。いわば、“わかり易すぎる”コネ。『プレー報酬0円』のクラブへの移籍は意外でしたが、大学時代に社会科の教員免許を取得していたことが幸いし、「栃木県内の特別支援学校に勤務できることになりました」(竹内)とか。

それにしても、保健体育以外の教員免許取得とインカレ制覇を両立させていたとは……、さすがは『努力の人』です。

紅白戦ではFW若林のヘディング・シュートをピンポイント・クロスでアシストするなど実力の片鱗を披露。本人いわく「精度は衰えてないってことですよね」(笑)。

確かに――。試合後は原らと共にピッチに戻って、長々とクールダウン。サッカーができる喜びを再確認しているかのような笑顔が印象的でした。

[がんばろう ニッポン]
例えば、日本代表の海外組が『壮大な夢』なら、地元クラブの選手は『身近な日々の糧』。 日本代表のチャリティ・マッチが典型ですが、壮大なトップダウン策には「継続性」あるいは「日常的」という観点で限界があります。

そして、地域のサッカーを“きっかけ”にした人の『つながり』は、地縁、血縁、学校、会社など従来の枠を超えた『もうひとつのコミュニティ』と言えます。社会的地位や年齢は関係ない独特の魅力(心地良さ)は、他競技の愛好者にも広がってきました。

日本が未曾有の大震災を経験した今(個人的には計画停電で苦労している程度ですが)、より多くの地域で、より多くの人が「他人事ではない」と感じる『もうひとつのコミュニティ』の重要性を再認識しています。もちろん、サッカー(スポーツ)に限らず、何か『もうひとつ』……。また、それがあれば、「何ができるか」も考えやすいのではないでしょうか? 例えば、「これに使う予定だった予算を削減して、被災者支援や被災地復興に使うべき」と考えることも、大事な「できること」だと思います。

[写真]アシストを決めた後、笑顔を見せるMF竹内優
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