beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

250回 FC東京対松本山雅
by 木次成夫

正式名称:『2011Jリーグ 東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ FC東京VS.松本山雅FC』

主催:財団法人日本サッカー協会/社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)/社団法人長野県サッカー協会

主管:東京フットボールクラブ株式会社/株式会社松本山雅

つまり、会場は松本市のアルウィンにもかかわらず、FC東京のホームで、山雅はアウェー。JFL以下のカテゴリに属するクラブが有料のチャリティーマッチを『できるだけ早期に』するには、「これしかない」という策の手本です。

[気配りのなさが見える]
TVCM風に言うなら、気配りのなさも見えます。大会名には、東日本各地同様に地震の被害にあった『長野県北部(栄村=さかえむら)』の名が入っていません。試合に先立ち、FC東京選手は「東北地方太平洋沖地震」、山雅選手は「長野県北部地震」と分担して募金活動を行いはしましたが、大会名については配慮が足りないと思いました。Jリーグとしては、各地で開催するチャリティーマッチのうちの1試合なのでしょうが……。

試合後、FC東京は宮城県出身の今野泰幸、山雅は福島県いわき市出身の渡辺匠が挨拶をしました。その後に、長野県出身選手(例えば山雅FW塩沢勝吾)も挨拶すれば、さらに効果的だったのではないでしょうか? 

[なぜJFL以下ではダメなのか?]
そもそも長野県のチームが、長野県営の競技場で地震復興チャリティーマッチをするなら、まずは山雅対長野パルセイロが、ふさわしいと思います。そして、全員で県歌『信濃の国』を歌った方が、地域密着した文化の価値を実感できるのではないでしょうか? せっかく、両クラブのサポーターが一緒になって募金活動をした経緯もあるのに――。

ちなみに、その募金活動には、ベガルタ仙台とNECトーキンでプレーした経験のあるパルセイロMF大橋良隆が「自主的な判断で参加していましたよ。人柄もスゴく良い選手ですね」(山雅ファン)。

●4月3日
FC東京 4-0 松本山雅

観衆:10098人(公式発表)。一見して半数以上は山雅ファンでした。

[試合総括]
2点目を奪われるまで、山雅は善戦しました。攻めてくる相手には善戦できるという点は、昨季までと同様。その一方で、「守備的に引いた相手を、どう崩すか」という策が見えにくかったという点も、同様。つまり、開幕まで、いわゆる格上との対戦が多い点はリーグを戦ううえでは疑問です。

≪3-5-2≫
この試合、山雅のフォーメーションは3-5-2。CBは松田直樹(34歳=今季加入、前・横浜FM)。度々攻撃参加するなど、さながら『リベロ』。今後、攻守の要であるボランチ渡辺匠(29歳=今季加入、前・熊本)らとのコンビを熟成すれば、日本サッカー随一の流動的かつ魅せる『攻守の切り替え』も“ありえる”と思いました。

是非、松田には『リベロの真骨頂』を見せてほしいです。例えば、90年代のバレージ(ACミラン=イタリア)、ブリント(アヤックス=オランダ)のような――。

右MFに起用された今井昌太(26歳=加入5年目、前びわこ成蹊スポーツ大学)にも、可能性を感じました。本来は典型的なサイドアタッカーで、守備的役割も多いポジションに起用されたのは、今年が「初めてです」(今井)。3月19日の対FC岐阜戦で見た際は、裏を取られる上に、攻撃のタイミングを見極めることができませんでしたが、この日は、格段に向上。相手陣内深い位置まで走り込んでクロスを入れるなど、『今季のカギを握るかも』と思うほどのプレーを披露しました。昨季までは、悪い意味でトレードマークになっていた『膝のサポーター』もナシ。つまり、コンディションが良いという証。今井本人も、試合後、「楽しいです」。

懸念材料は、攻撃は木島兄弟(兄・良輔=今季加入=前・町田ゼルビア、弟・徹也)に『お任せ』気味なこと。交代出場したFW塩沢勝吾(28歳=今季加入、前・佐川印刷)とFW片山真人(26歳=今季加入、前・水戸)を活かすプレーは皆無でした。

[気配りも見える]
日本各地、サッカーに限らず、『自粛』が大きなテーマになっています。そんな中、山雅サポーター(ファン)は、普段のリーグ戦同様の応援スタイルで臨みました。また、この試合に向けて、ダンマク数枚を作成。そのひとつは、被災地を本拠にしたJリーグ、JFL、そして地域リーグのクラブ名をハートマークで囲んだものも(写真)――。それぞれのチームカラーを使って書きこむなど、『ダンマク作りが好き』な山雅サポらしい作品でした。

そして、新加入選手のチャントを、お披露目した他、「栄村(さかえむら)」や「ソニー仙台」などのコールも――。

≪がんばっぺ いわき≫
ゴール裏スタンドには「全国の皆様 多大なご支援 本当にありがとう! がんぱっぺ! いわき!!」と記されたゲーフラを掲げ、『匠』と記された大旗を振る人たちが……。山雅MF渡辺匠のために「福島から応援に来てくれました」(渡辺)とか。

≪東北で戦ったスネア奏者≫
あくまで個人的な印象ですが、山雅の応援にはスネア(小太鼓)のビートが欠かせません。しかし、この日、担当の『リズム班リーダー』は仕事の関係で不在。彼の本職は看護士。震災後には一時、宮城県に派遣されました。そして、ソニー仙台(社屋)が比較的近いことを知り、過酷な仕事の合間を利用して、昨年末の「退団選手送別会」で集まったカンパの余剰金などを、ソニー仙台に義援金として持参したそうです。

JFLは4月5日(火)、前期7節(4月23、24日)からリーグを開始することと、延期した前期1節から6節の代替日程を発表しました。

山雅対ソニー仙台は今季最終節(前期1節の代替)。被災地での経験を込めたビートが楽しみです。
    
ニュース

※感想やあなたの応援する“J未満”チームの情報をこちらまでお寄せください。

TOP