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Jを目指せ! by 木次成夫

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252回 練習試合 町田ゼルビア対SC相模原
by 木次成夫

東京都町田市VS.神奈川県相模原市。やがて、日本を代表する『ダービー』に発展してほしいという期待も抱きつつ、『史上初』の町田ゼルビア対SC相模原を見に行きました。

●4月17日 練習試合
町田ゼルビア 5-2 SC相模原

≪得点経過≫
1-0 (町田:ボランチ柳崎祥兵、26歳=加入5年目、前・駒澤大学)
2-0(町田:右MF鈴木崇文、23歳=加入2年目、前・東京学芸大学)
2-1(相模原:左SB天野恒太、23歳=今季加入、前ザスパ草津U-23←国士館大学)
3-1(町田:FW勝又慶典、25歳=加入4年目、前・桐蔭横浜大学)
3-2(相模原:CB八田康介、29歳=今季加入、前・徳島)
4-2(町田:勝又)
5-2(町田:勝又)

[昇格請負人“4チーム目”の挑戦]
SC相模原は08年に神奈川県3部からスタートし、09年=同2部→10年=同1部。昨季はJFA特別措置で出場した地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)で、一次ラウンド敗退。『飛び級』昇格を逃したものの、その後、入替戦を経て、最低限の目標である関東2部昇格を達成しました。そして、今季は戸塚哲也氏(写真)を監督に招聘し、再び『飛び級』に挑戦するようです。JFA特別措置に期待しつつ、『全社(全国社会人選手権)経由』も意識して――。

FC岐阜(06年)、MIOびわこ草津(07年、全社経由)、町田ゼルビア(08年)に続く『昇格請負人』の手腕は、いかに? 少なくとも、「去年は守備が脆かったようですね」(戸塚監督)という課題を克服し、バランスの良いチームになりつつあることは実感できました。 

[前ウーヴァ中川勇人の再挑戦]
今季、SC相模原のカギを握る存在として期待しているのが、新加入CB中川勇人(27歳)です。地元、相模原出身で、神奈川大学→ゼルビア(06年=関東2部~09年=JFL)→栃木ウーヴァ(昨季=JFL)。戸塚監督の中川への評価は高く、ゼルビア監督就任1年目の08年途中、レギュラーに抜擢し、翌09年はJFL30試合に起用しました。その後、中川はゼルビアの戦力外になり、栃木ウーヴァに移籍。主力として活躍したものの、恩師の戸塚監督が誘ってくれたことと、「(SC相模原には)Jリ-グ参入という明確な目標がある」(中川)ことに魅力を感じ、JFLから関東2部という道を選んだそうです。もちろん、地元のクラブゆえの思い入れもあったでしょうが……。

現在、SC相模原は平日練習を昼間に行っています。中川を含めて多くの選手がサッカーと仕事の両立だそうですが、「僕がゼルビアに入った時と比べると、練習環境も行政などの支援も相模原の方が良いですよ」(中川)。

確かに、子供用の小さなグラウンドで平日夜間練習していた当時のゼルビアとは比になりません。とはいえ、戸塚監督がゼルビアを率いていた頃に恒例だった『6km走』など、フィジカル強化も重視した過酷な練習は、SC相模原でも同様だとか。「あれだけ走り込まされたら、たいていのチームに負ける気がしない」と当時の選手に言わしめた『戸塚流』。好選手を多く擁しながらも淡泊な面もあったSC相模原を変えるのは、そんなに難しいことでないかもしれません。 

「ゼルビアは厳しい練習を含めて、限界まで戦うことで、強くなってきたと思うんです。うち(SC相模原)も、どこまで戦えるチームになれるか……、ですね。」(中川)。

[ゼルビアFW勝又の決断]
この試合ではPKを含めて3得点。随所で際立ったプレーを披露しました。昨季はJFL33試合出場18得点。実力と将来性を考慮すれば、Jリーグ・クラブに移籍するのが順当と思っていたのですが……。

実際、J2など多くのクラブからオファーがあったようです。とあるクラブに赴いた際、「強いチームを作りたいということは伝わってきたんですが、どんなサッカーを志向しているのかは、よくわかりませんでした」(勝又)ということもあったとか。

今季、FWでパートナーを組むのは新加入のセルビア人、ディミッチ(29歳)。勤勉かつ的確なプレーが特徴の『セカンド・トップ』タイプです。切れ味鋭いドリブル突破が持ち味だった木島良輔(31歳、山雅)とコンビを組んでいた昨季と比べると、本人いわく「監督の要求も多いので、大変ですよ」(勝又)。

そう言いながらも、悩んでいるというよりは、楽しんでいるという感じでしたが……。未知のクラブへ移籍するよりも、慣れ親しんだゼルビアで、名将ポポビッチ監督のもと、個人としてもチームとしても上を目指すということかもしれません。

[史上最高のゼルビアへの期待]
個性とイマジネーションを重視した戸塚監督→組織としての規律も重視してスピーディなサッカーを展開した相馬直樹監督→そして今季は……、個と組織の“さらなる”調和への挑戦?

ゼルビアを初めて見たのは関東2部に所属していた06年のことですが、当時、監督を務めていた守屋実氏(現・代表)の時代から現在まで、「攻撃的につなぐ」という志向性は変わっていません。何が何でも勝てば良いという考え方とは対極的ですが、だからこそ、継続的に見ていて、面白いのだと思います。

「昨季と最も違うのは、ダイレクトやツータッチのパスが増えたことです」(柳崎)。 

個人的には『史上最高のゼルビア』を期待しています。昨季3位ながらも、Jリーグに参入できなかったゆえに、昨季以上に魅惑的かつ攻撃的なサッカーが見られるかもしれません。プレーに馴染みのある選手たちのコンビネーションが熟成する様を見るのは、未知の大物の活躍とは違った喜びが、あります。もし、Jリーグに参入していたら、どこまで通用するかという、新たな楽しみがあったでしょうが……。

幸いにもホームの町田市立陸上競技場は改修が一段落。メインスタンドは未着工ゆえ、今後、Jリーグの理解(要は、完成時期などの猶予)も求めていくそうですが、芝生席だったゴール裏とバックスタンドにも固定席が設置されました。バックスタンド側にも出入り口が設けられるなど、利便性も向上。その一方で、自然の地形を活かし、四季も楽しめる環境は保持されています。その上、今季は、名物の『スタ飯』もスケールアップし、来る24日の横河武蔵野戦(南北多摩合戦)は「過去最多の屋台が集う予定です」(ゼルビア関係者)とのこと。

町田対相模原

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