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Jを目指せ! by 木次成夫

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253回 JFL開幕 松本山雅対ブラウブリッツ秋田
by 木次成夫

4月23~24日、JFLが前期7節から開幕しました。前期1節と7節の対戦カードを比べると、例えば、長野パルセイロは「運にも恵まれた」と言えるでしょう。

前期1節:SAGAWA SHIGA(昨季2位)対パルセイロ
前期7節:パルセイロ 4-0 ジェフリザーブズ(同16位)

『アウェーでSAGAWA』と、『ホームでジェフリザーブズ』では、状況が大きく違いますから――。

●JFL前期7節
松本山雅 1-2 ブラウブリッツ秋田

山雅は昨季、ホーム平均観客数JFL史上最多の5080人を達成しました。そして、クラブ側は今季の目標を『平均7000人』と設定。しかし、結果は晴天にもかかわらず、6319人。前期7節『全8試合』では最多だったものの、幸先の“悪い”スタートになってしまいました。

≪試合経過≫
山雅のフォーメーションは4-4-2、対する秋田は4-3-3。山雅の吉澤英生監督いわく「秋田が3トップだということを考慮して、3-5-2から4-4-2に変えました」。

31分 1-0(得点:山雅、FW木島徹也)
*右MF須藤右介からのパスを受けて、ドリブル→鋭い切り返し→左足シュート

山雅は序盤から、FW木島良輔(31歳=今季加入、前・町田ゼルビア、元・横浜Fマリノスなど)とFW徹也(27歳=加入2年目、前・沖縄かりゆし)兄弟のスピードを生かすサッカーを実践しました。つまり、『采配、大当たり!』。

61分 1-1(得点:秋田、FW比嘉厚平)
*左ウイング比嘉が、山雅の右SB今井昌太(26歳、前びわこ成蹊スポーツ大学)をかわして、内から外にスライドしたMF畑田真輝へパス→畑田がダイレクトで比嘉に戻し→角度のないところからカーブを掛けて、巧みにシュート

後半、山雅の運動量が落ちる一方で、秋田はポゼッション・サッカーを実践。「自分達のサッカーをすれば勝てると思っていました」(秋田の横山博敏監督)。同点ゴールは、パスを“ゆったりと”つなぐブラウブリッツに対して、山雅守備陣が油断した結果。それまで比嘉を“ほぼ”抑えていた今井のマークも、畑田に対するボランチ松田直樹の『寄せ』も緩すぎ、でした。


88分 1-2(得点:秋田、CF松田正俊)
*右CK(川田和宏)が左足でファーサイドへ→ヘディング。185㎝の松田(30歳、前・栃木SC)が185㎝の山雅CB飯田真輝(25歳、前・東京V)に完勝。快心の逆転劇

[柏レイソル育ちの20歳コンビ]
比嘉厚平(今季加入、柏から期限付き移籍。元U-16など世代別日本代表)と攻撃的MF畑田真輝(今季加入、甲府から期限付き移籍)は共に柏レイソルの下部組織育ちの同級生です。コンビネーションが良くて、当然。Jリーガーとして別々のクラブでプレーしてきた期間よりも、レイソルで一緒にプレーしていた歴史の方が長いのですから。また、2人の溌剌としたプレーを見て、思いました。慣れない新天地での生活も考慮すれば、特に若手の場合は、『セットで獲得』が効果的かもしれない、と――。

秋田から松本への移動はバス。今後も、Jリーグ・クラブでは“ありえない”長距離移動を続けることになりますが……、

「慣れるしかないです。というか、もう10時間のバス移動も経験したので、慣れました」(比嘉)。

[川田和宏の新境地]
国見高校時代は大久保嘉人(神戸)らと共に『高校3冠』を達成。福岡大学卒業後に大分に加入し、ガイナーレ鳥取、山雅への期限付き移籍を経て、08年シーズン終了後に戦力外通告。09年はガンジュ岩手(当時は岩手県2部)、昨季は秋田カンビアーレ(東北1部)でプレーしました。そして、今季はカンビアーレからの期限付き移籍。昨季同様、カンビアーレの子供向けスクールでコーチを続けているそうです。

山雅に所属していた頃と比べると、はるかに身体が締まり、昨年に国体で会った時と比べても、全体的に若返ったような感がありました
本人いわく「サッカー、真面目に、やってますから」(笑)。

本職のボランチではなく、不慣れな左SBに関しては、
「面白いっすよ」。

山雅ファンも吉澤監督も川田の武器は精度の高いキックだと熟知しているゆえに、決勝点をアシストされたことは、『痛恨の極み』だったでしょう。

[フェルヴォローザの思い出]
ブラウブリッツの主将でCBの小林宏之(31歳=今季加入、前・大分)は、07年シーズン、北信越1部のフェルヴォローザ石川・白山でプレーしていました。クラブはシーズン途中に経営破たんしたものの、選手たちの多くは無報酬でプレーを続け、リーグ5位。優勝した山雅とは1勝1敗。その後、小林はTDK(ブラウブリッツの前身)→大分→ブラウブリッツ。07年当時、その後の活躍が想像できませんでした。ちなみに、小林とCBコンビを組んだ千野俊樹(25歳、元・甲府)は、06年の地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)でJFL昇格を決めた当時からの主力です。選手の成長、衰えは人様々だと、改めて痛感しました。

[山雅の懸念材料]
昨季、山雅は7位で、ブラウブリッツは8位。両者の対戦は1勝1敗。つまり、ほぼ同格。とはいえ、今季に向けた強化という観点では、山雅の方が有利な状況だったと思います。大型補強、九州合宿、練習試合を組みやすい地理的環境、中部電力圏内……。対するブラウブリッツは雪などの問題で室内練習しかできなかった期間が長い上に、大震災後はガソリン不足で苦労したそうです。

その上、スタメンのうち今季加入選手は、山雅=4人、ブラウブリッツ=7人。にもかかわらず、チームの熟成はブラウブリッツの方が勝っていました。

もちろん、木島兄弟の破壊力は大きな武器です。とはいえ、エース的存在の木島兄が欠場したり、コンディションを落としたりした場合は、攻撃力低下必至。この試合も、途中出場したFW塩沢勝吾を含めたバックアッパーを活かす『攻撃の形』は皆無でした。

例年よりも夏バテが懸念される日程に変更されたことも考慮すると、松田直樹(34歳)を含めたベテランがコンスタントにプレーできるかも、疑問です。

次節(30日)はホームで長野パルセイロとの信州ダービー。前日(29日)には09年シーズンの両クラブをメインで追ったドキュメント映画『クラシコ』が松本市内で上映されます。この際、松田をはじめ全選手、全スタッフで観賞して、気合いを入れ直すのが『最善の強化策』かもしれません。

[写真]試合後の松本山雅・松田

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