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Jを目指せ! by 木次成夫

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254回 JFL前期8節 信州ダービー
by 木次成夫

『ダービー』を盛り上げる神様は長野県にも居るのかもしれない――。そう思ってしまうほど、『信州ダービー』は今回もドラマチックでした。

松本山雅対長野パルセイロ。クラブの設立は山雅(山雅クラブ)が65年で、パルセイロ(長野エルザ)は90年。両チームの対戦が、多くのサポーター(ファン)を巻き込む『信州ダービー』に発展する“きっかけ”になったのは、「Jリーグを目指すクラブ」への移行でした。

山雅が北信越2部から『Jリーグを目指す』活動を開始した04年当時、エルザは1部所属。翌05年、山雅は2部優勝、エルザは1部優勝。そして、06年以降は北信越1部のライバルとして4シーズン。以下、リーグ戦の成績を振り返ると――。

06年:北信越1部(1位=ジャパン・サッカーカレッジ、2位=山雅、3位=エルザ)
エルザ(H) 0-2 山雅(A)
山雅(H) 2-1 エルザ(A)
*観客数はエルザ・ホーム=2020人(無料)、山雅ホーム=1874人(無料)。エルザMF石堂和人(現・福島ユナイテッド)がシーズン途中に山雅に移籍したことも話題に――。

07年:北信越1部(1位=山雅、2位=パルセイロ)
山雅(H) 0-1 パルセイロ(A)
*エルザは『Jを本格的に目指す』長野パルセイロとしてリスタート。観客数=6399人(無料)。山雅の人気が急上昇。
パルセイロ(H) 0-3 山雅(A)
*山雅の主軸、土橋宏由樹が2得点を決めるなど大活躍。

08年:北信越1部(1位=パルセイロ、4位=山雅)
山雅(H) 0-0 パルセイロ(A)
*パルセイロが前・山雅の土橋を中心に魅せるサッカーを展開したものの、スコアレス・ドロー。
パルセイロ(H) 1-0 山雅(A)
*山雅の目前でパルセイロが優勝達成。

09年:北信越1部(2位=パルセイロ、4位=山雅)
パルセイロ(H) 2-2 山雅(A)
*柿本倫明と小林陽介の「執念のゴール」で山雅が2度のビハインドから引き分けに――。
山雅(H) 1-1 パルセイロ (A)
*シーズン途中加入の鐡戸裕史のFK直接ゴールで山雅が先制したものの、パルセイロMF佐藤大典のPKで同点に――。

両チームは全社(全国社会人選手権)及び同予選、天皇杯予選でも熾烈な戦いを展開してきました。中でも最も明暗を分けたのは、09年の全社・準決勝。山雅が3-1で勝利し、山雅の地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)進出と、パルセイロの地域リーグ残留が決まりました。

昨季は天皇杯予選決勝が唯一の『信州ダービー』となり、山雅が1-0で勝利。得点を決めたのは須藤右介。そして……。

●4月30日 JFL前期8節
松本山雅 2-1 長野パルセイロ

≪試合経過≫
観客数は信州ダービー史上最多の1万1663人。しかし、強い風がピッチの縦方向に吹き、風下から放たれた“浮き球”(ロング・パス、クロス、クリア)は風に戻され、風上からの“浮き球”は風に乗る、劣悪なコンディション。そして、試合前のコイントスで勝ったパルセイロ主将、宇野沢祐次は風上を選択しました。

4分 0-1(パルセイロ:ボランチ土橋宏由樹、33歳、加入4年目、前・山雅)
*右SB高野耕平のクロス→FW宇野沢祐次が流して→走り込んだ土橋がフリ―でシュート。流れの中で華麗に崩す“パルセイロらしい”得点。パルセイロに移籍して以降、ダービーに限っては、不本意な結果しか残していなかった土橋にとっては、『快心のリベンジ』でした。

45+1分 1-1(山雅:右MF今井昌太、26歳、加入5年目、前・びわこ成蹊スポーツ大学)
*須藤が放ったシュートの“こぼれ球”を拾った今井が内に切れ込み、左足でシュート。

90+1分 2-1(山雅:FW木島徹也、27歳、加入2年目、前・沖縄かりゆし)
*今井のクロス→北村隆二が流して→木島弟がパルセイロ右SB高野耕平のマークをかわしてシュート。

[山雅辛勝に問題も]
パルセイロは昨季の地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)2位。つまり、JFL開幕時点では『最下位に相当する』チームです。その上、選手補強は山雅よりも、はるかに地味。スタメンのうち、今季加入選手は、以下の3人だけ――。

CB:小川裕史(25歳、前・アルテ高崎←尚美学園大学)
左SB:有永一生(22歳、前・関東学院大学←国見高校)
右MF:向慎一(25歳、前・東京V←栃木SC←法政大学)

山雅の得点は共にロスタイム。『執念の勝利』とも言えますが、辛勝しかできなかったことは、補強の成果が出ていない証とも言えます。

[今井昌太の意地]
長野県出身選手で唯一人スタメン出場した今井が勝利に貢献したことも『ドラマ』でした。
昨季はJFL20試合出場(うち18試合は途中出場)。今季も当初はサブ候補でしたが、負傷者続出により、コンバート。本職は右サイドアタッカーながら、ブラウブリッツ秋田戦は4-4-2の右SB、パルセイロ戦は3-5-2の右アウトサイドでスタメン出場を果たしました。

振り返ると、今井は過去にも重要な得点を決めています。例えば、

08年、北信越1部3節、ホームの対ヴァリエンテ富山戦(3-2)。スタートダッシュに失敗した山雅にシーズン初勝利をもたらす決勝ゴール。

10年、JFL前期3節、アウェーの横河武蔵野戦(1-0)。山雅JFL初勝利。

10年、JFL前期17節、ホームのHonda戦(1-0)。後期に期待をつなぐゴール。

「(生まれ故郷の)木曽では、松本と長野の対抗意識はピンとこないんですよ」と言いつつ、加入5年目の最古参として、最も『松本のDNA』を引き継いできたのかもしれません。

[写真]山雅FW木島徹也(右奥)とパルセイロCB小川裕史の攻防

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