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Jを目指せ! by 木次成夫

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255回 JFL前期10節 松本山雅対V・ファーレン長崎
by 木次成夫

上の写真は、8日の山雅戦後、ファンに挨拶するV・ファーレン長崎MF岩間雄大(今季加入、前アルテ高崎←FCコリア←堀越高校)。アルテ時代はボランチでしたが、V・ファーレンでは「トップ下が多いです」(岩間)。この試合は、9節のブラウブリッツ秋田戦に続き、主将も務めました。

苦節4シーズン――。アルテ加入1年目の07年シーズン、チームは『勝ち点7』(1勝4分け29敗)という屈辱的な記録で最下位。その後、08年=17位、09年=14位、10年=17位。岩間は昨季までJFL通産92試合出場4得点。そして今季、『プロ』としてV・ファーレンへ。現在、25歳。“負の経験”を成長の糧に、まだまだ『夢の途中』です。

●5月8日
JFL前期10節
松本山雅 1-1 V・ファーレン長崎

≪試合経過≫
45分 1-0(山雅:FW塩沢勝吾、28歳=今季加入、前・佐川印刷←水戸、長野県上田市出身)
*CK後のゴール前混戦→松田直樹がシュート→相手クリア→塩沢が押し込む

74分 1-1(長崎:FW有光亮太)
*クロスに反応して絶妙のタイミングでPA内に走り込んだ有光に、山雅DF飯田真輝がスライディング=ファール→PK

≪試合総括≫
山雅は昨季7位、V・ファーレンは同5位。今季は前期9節を終えた時点で、山雅は1勝1分1敗、V・ファーレンは2分1敗。共に不本意なスタートとなってしまいました。

ただ、この試合を観る限り、V・ファーレンを率いて2年目の佐野達監督が目指す『攻撃的ポゼッション・サッカー』は進化中。熟成不足の山雅とは対象的でした。

シュート本数:山雅=10本(前半=8本、後半=2本)、V・ファーレン=11本(前半=3本、後半=8本)。

この数字が象徴的ですが、山雅は後半に失速。仕事とサッカーを両立している選手も多いことを考慮すると、“走り勝つ”理想と“90分間もたない”現実にギャップも感じます。クラブ側は強化の一環で、午後も練習する日を増やしましたが、仕事の調整は選手任せ。仕事を休めば、収入が減るわけですから、悩む選手がいても不思議ではありません。

[V・ファーレンの“大リストラ”以後]
昨季後、V・ファーレンは15人と契約満了するなど、大リストラを敢行しました。その結果、08年の地域決勝(全国地域リーグ決勝大会)経験者はGK近藤健一とFW有光亮太の2人だけに――。競技場改修などの事情で、『Jリーグ参入は最短でも2013年』という状況下、将来を見越したチーム作りを選択したということでしょう。

≪山雅戦スタメン≫
GK:近藤健一(28歳=加入6年目、前FC東京)
右SB:中津溜奨吾(23歳=加入2年目、前・福岡大学)
CB:井筒和之(24歳=加入3年目、前・国士館大学)
CB:藤井大輔(24歳=加入2年目、前・草津)
左SB:持留新作(23歳=今季加入、前・愛媛)
MF:山本翔平(28歳、加入2年目、前・熊本)
MF:山城純也(25歳=加入3年目、前・鳥栖)
MF:神崎大輔(26歳=加入3年目、前・甲府)
MF岩間雄大(25歳=今季加入、前・アルテ高崎)
FW中山悟志(29歳=今季加入、前・水戸)
FW:有光亮太(30歳=加入5年目、前・福岡)

年々、チームの熟成は進んでいます。この試合、出場停止だった右SB杉山琢也(28歳=加入2年目、前アルテ高崎)を含めて、ピンポイント補強が的確で、実践しているサッカーに、前年度からの『上積み』が実感できます。

フォーメーションは中山を実質的なワントップにした4-5-1。FW登録の有光は左サイドに開き、右サイドの神崎、トップ下の岩間と流動的にポジション・チェンジ。昨季と比べると、CFタイプの中山と、豊富な運動量を誇る岩間が加わったことで、より多彩かつ、よりアグレッシブな攻撃的サッカーが期待できそうです。

ただ、残念なことに、この試合の取材に長崎県から訪れた報道陣は0人。地域リーグ時代から昨季までは、アウェー取材も積極的という印象があったので、意外でした。ユニフォームの袖にしかスポンサーがついていないことを含めて、不況が影響しているのでしょう。

ホームで良い結果を残して、観客数を増やすことが必須とはいえ、競技場改修の事情で、今後はすべて、島原市か佐世保市での開催。諫早市と長崎市だけではない『全県区クラブ』をアピールするチャンスとも言えますが……。


[人の、つながり]
試合後、V・ファーレンのMF佐藤由紀彦と佐野監督、山雅の松田直樹が、競技場の入口付近で楽しげに話をしていました。佐藤は横浜F・マリノスに所属していたこともあります。そして、佐野監督は横浜F・マリノスの前身、日産自動車で活躍し、日本代表でプレーしたこともある名CB。現役引退後、マリノスのスカウトとして、目を付けた1人が、松田だったそうです。

「(松田の)親御さんも知っていますし、(松田は)息子みたいなものです」(佐野監督)。

名CBの系譜――。人の“つながり”は面白いです。

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