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Jを目指せ! by 木次成夫

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256回 東北リーグ開幕 福島ユナイテッド対秋田カンビアーレ
by 木次成夫

「待ちに待った」としか言いようがないです。東日本大震災の影響で延期されていた東北リーグが5月15日(日)に開幕しました。ただ、福島ユナイテッドを除く福島県内5チーム(1部:FCプリメーロ、2部:シャイネン福島、バンディッツいわき、いわき古河FC、メリー)と、宮城県のコバルトーレ女川(2部)は参加辞退。1部は7チームで2回戦総当たり、2部は南北ブロックを統合して11チームで1回戦総当たりに変更されました。

●5月15日 東北1部
福島ユナイテッド 3-1 秋田kナンビアーレ

今季、福島ユナイテッド(以下、福島Uと略)は『ホーム』を県外(宮城県、岩手県)で開催する予定です。この日の会場は宮城県仙台市にある『アディダス・スポーツパーク』。人工芝1面のサッカー場で、観戦用スタンド席はナシ。約300人(公式発表)の観客は網越しの応援(観戦)でした。

≪得点経過≫
1-0 57分(得点:金功青、24歳=加入3年目、前・流通経済大学)
2-0 65分(得点=PK:金功青)
3-0 90分(得点:金功青)
3-1 90+2分(得点=PK:小沼拓矢)

[試合総括]
福島Uは昨季2位、カンビアーレは同5位。シュート本数は福島U=24本(前後半各12本)に対して、カンビアーレ=4本(前後半各2本)。結果的には、福島Uが順当勝ちながら、詰めの甘さも目立ちました。6~7点奪って“しかるべき”と思ったほどチャンスはありましたし、ロスタイムのPKも余分です。もちろん、震災から開幕までを振り返ると、上々とも言えますが……。

[福島Uの震災以後]
震災後、福島Uは活動を停止せざるを得ない状況になりました。一時的に実家へ戻った選手も多かったそうです。練習を再開したのは4月13日。先が不透明な状況下、昨季は主力として活躍したFW村瀬和隆と左SB古西祥を含む4人が現役引退し、3人が退団。急遽、昨季後引退した2人が現役復帰し、選手数は合計23人に――。

この試合のスタメン中、今季加入選手は、DF金廣閔(24、前・岡山)とDF岡田亮太(22歳、前・帝京大学)のみ。その一方で、昨季の『縦軸』、以下4人は健在――。

CB:青柳雅信(25歳=加入4年目、前ガイナーレ鳥取←湘南)
ボランチ:清水純(25歳=加入3年目、前バンディオンセ加古川)
FW小林康剛(30歳=加入2年目、前・岡山)
FW久野純弥(22歳=加入2年目、前・甲府)

サッカーの質という観点では、昨季よりも『3人目の動き』への意識が高くなっているという印象でした。つまり、「現時点の戦力は昨季よりも落ちます」(就任2年目の手塚聡監督)という一方で、目指すサッカーの理解度という観点では、『上積み』もあるのでは?

手塚監督に問うと、「そういう練習ばかりしていますから」との答。厳しい状況なりに、手ごたえも感じているということかもしれません。

[ハイパー銀行員の正念場]
東北2部時代から所属しているFW時崎塁(28歳)は、今季も東邦銀行職員としてプレーしています。大震災直後は、“地域復興を目指す”地元銀行の一員として『緊急対策』業務にも就いたそうです。そして、カンビアーレ戦では“JFL昇格を目指す”選手として、後半途中出場ながらも、随所で好プレーを披露。中でも、外に開いてパスを受け、自分で作ったスペースに素早くボールを流して、金の3点目をアシストしたプレーは圧巻でした。

[主将・青柳の心意気]
今季、加入4年目にして初の主将に任命されたCB青柳雅信(25歳)。福岡県出身で、筑陽学園高校3年時は全国高校選手権準優勝。その後、湘南ベルマーレ→ガイナーレ鳥取→東北2部(当時)の福島Uへ。震災後は一時帰郷したものの「(自分は)福島に拾ってもらったので、ここでプレーすることしか考えていませんでした」(青柳)。

恩の有難みを経験したからこそ、恩返しの思いも随一。カンビアーレ戦後は、選手を代表して、ボランティアたちへ感謝の思いと、今季に賭ける意気込みを語りました。選手同様、福島市への着路に着く直前の配慮。是非、他クラブにもパクってほしいと思いました。

[新加入MF石堂和人への期待]
実は、カンビアーレ戦で最もプレーを見たかったのが町田ゼルビアから移籍した石堂和人(29歳)でした。残念ながら負傷で欠場しましたが、「次の試合(2節=22日、対盛岡ゼブラ)には間に合いそうです」(本人)。

帝京大学卒業後、長野エルザ(現・長野パルセイロ)を経て、07年にゼルビアへ加入。主力としてJFL昇格に貢献し、09年シーズンはJFL全34試合に出場したものの、昨季はJFL3試合出場のみ。

初戦を見る限り、福島Uに最も足りなかったのは、緩急のリズムを付けること。石堂が最も得意にしているプレーです。考えてみれば当然のことかもしれません。ベテランに期待するのは、チームにないものを補ってあまりある即戦力ですから――。

[福島U対グルージャ盛岡]
過去2シーズン、福島Uはグルージャ盛岡と勝ち点で並びながらも、得失点差で及ばず、2位に甘んじました。今季も、グルージャとの『二強』状況は変わらないでしょう。そして、グルージャ戦との初戦は、5月29日(第3節=福島Uホーム=仙台大学グラウンド)。『クラブの存亡を賭けた戦い』と評しても過言ではないでしょう。

[写真]アディダス・スポーツパーク(5月15日)

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