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Jを目指せ! by 木次成夫

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257回 JFL前期12節 『武蔵野→松本』の週末
by 木次成夫

JFLは前期12節(21~22日)を終えました。11チームが6試合、6チームが5試合消化し、首位はHonda(勝ち点15)。全48試合のうち、引き分けが8試合で、1点差が27試合という混戦模様です。その一方で、Jリーグ準加盟クラブは、5位=カマタマーレ(同9)、9位=ゼルビア(同8)、10位=山雅(同8)、12位=V・ファーレン(同6)。つまり、カマタマーレを除く“準加盟”3チームは早くも、自力優勝の可能性が、なくなりました。

●5月21日
JFL前期12節
横河武蔵野 0-1 栃木ウーヴァ

[得点経過]
63分 0-1(得点:若林学、31歳、前・栃木SC))
*横河GKのキックでのフィードをMF濱岡和久(30歳、前バンディオンセ加古川)がインターセプトして、ゴール前に走り込んだ若林にパス→右足ダイレクト

[試合総括]
“似た者どうし”の対戦は、独特の面白さがあります。横河は昨季12位で、ウーヴァは同15位。共にプレー報酬0円のアマチュア・チーム。共に3月の東日本大震災後は、計画停電などの影響で平日夜間練習ができない時期も、ありました。

横河は現在、平日練習を早朝に行っています。7時から8時くらいまで練習をして、横河電機社員の選手は8時半までに出社。「早朝練習だからコンディション維持が難しいということは、ありません。(練習後の)仕事には影響があるかもしれませんが(笑)」(依田博樹監督)。対するウーヴァは、「1カ月前くらいから、夜間照明を使った練習ができるようになりました」(浅野博孝ヘッドコーチ)。

試合展開は、ほぼ互角。ただ、チーム全体の狙いは、ウーヴァの方が明確でした。188㎝の長身FW若林をクサビに使って、セカンド・ボールを左MF濱岡、FW竹内優(26歳、前・松本山雅)らが狙うサッカーを展開。シンプルゆえに現実的、そして、効果的でした。
その一方で横河はパスをつなぐにせよ、前線のスペースを狙うにせよ、メリハリがない上に、『3人目の動き』も皆無。アマチュアならではの溌剌としたスタイルが横河の魅力だと思っているからこそ、消極的なサッカーに終始したことが残念でした。

決勝点の“きっかけ”は、GKの不用意なプレーでしたが、目指すサッカーを“ある程度”実践できたという観点では、ウーヴァの快勝と言えるでしょう。

この結果、ウーヴァは勝ち点10の3位。昨季の下位チームとの対戦が多かったとはいえ、上々です。対する横河は勝ち点6で14位。2勝(ゼルビア、ジェフリザーブズ)4敗(全て0-1)。共に今後の懸念材料は「仕事との両立」による蓄積疲労と夏バテ。例えば、ウーヴァ最多の4得点を決めている竹内は現在、栃木県内の特別支援学校勤務。「副担任をしているのですが、朝から夕方まで一時たりとも気が抜けません」(竹内)。

●5月22日
JFL前期12節
松本山雅 2-0 町田ゼルビア

[得点経過]
70分 1-0(山雅:CB飯田真輝、25歳、前・東京V)
*FK→ファーサイドから豪快にヘディング・シュート

84分 2-0(山雅:MF須藤右介、25歳、前・横浜FC)
*CK→右足シュート

[試合総括]
ゼルビアはFW勝又慶典(25歳、前・桐蔭横浜大学)出場停止が、致命的に痛かったです。持ち味の攻撃的サッカーを展開したものの、シュート本数は、山雅の12本(前半=5本、後半=7本)に劣る9本(前半=3本、後半=6本)。失点後に得たPKはFWディミッチがポスト直撃。運にも恵まれませんでした。その一方で、山雅は、“まるで別のチーム”と思うほど、まとまっていました。

山雅のフォーメーションは4-2-3-1。最も印象的だったのは、ゼルビア選手をライン際に追いやる絶妙な“寄せ”。相手に対峙し→粘り強くついて行き→攻撃のスピードを鈍らせ→その間に他の選手がフォローに入る。また、内に切り込まれた際もついていき→ボランチの渡辺匠(29歳=今季加入、前・熊本)と松田直樹(34歳=今季加入、前・横浜FM)らとの連動で→相手のプレーエリアを狭める。一見、攻め込まれているようで、実は、危険なエリアには侵入させない。一見、ボールを奪えないようで、実は徐々に相手を追い込んでいる――。

では、なぜ山雅は激変したのか? 『本職』不在だった右SBに阿部琢久哉(26歳=加入4年目、前TDK←駒澤大学)が負傷から復帰し、チーム全体のバランスが良くなったことが最大の要因でしょう。フル出場したのは昨季の後期6節、MIOびわこ草津戦(8月7日)以来。地味ながらの粘り強いプレーぶりは、『主役級が多いだけでは良いチームは作れないが、名脇役は主役も活かす』という感じでした。

ただ、もう1人の右SB玉林睦実(26歳=加入2年目、前・岡山)も開幕前に負傷したとはいえ、『本職の右SB』が不在になるような強化策は一般的には“ありえない”です。

[ゼルビアに足りなかったもの]
試合後、ゼルビアのボランチ柳崎祥兵(26歳=加入5年目、前・駒澤大学)いわく、「シュートを(阿部)琢久哉にカラダで止められちゃいました。良い軌道だったんですけどね」。

柳崎と阿部は駒澤大学時代の同級生。昨季の後期は阿部が負傷中だったため、2人が対戦するのはゼルビアが6-1で圧勝した試合(4月25日)以来でした。

「(シュートを)打つと思った?」(柳崎)
「4年も一緒にサッカーやっていれば、わかるよ」(阿部)

そんな会話を聞きつつ、仲間って良いなあと実感。

ゼルビアはチーム全体として、サイドを意識するあまり、ミドルシュートや押し上げなどゴール正面の揺さぶりが足りなかったかもしれないと思いました。

[気になる今後]
この試合、山雅は流れの中で得点を奪うことはできなかったものの、組み立ては上々でした。例えば、ワントップで起用された塩沢勝吾(28歳=今季加入、前・佐川印刷)いわく、「ようやくですが、良い兆しが見えてきました」。そして、今季は生彩を欠いていた木村勝太(22歳=加入3年目、前・甲府)は「今まで何をすべきか迷っていた面もありましたが、今日は、サイド(左MF)だったので、やりやすかったです」。

では、出場停止の木島良輔(30歳=今季加入、前・ゼルビア)が復帰した後、どのような布陣で臨むのか? 気になります。

[写真]ゼルビア左SB藤田泰成(右=29歳、前・徳島)と山雅ボランチ渡辺匠(29歳、前・熊本)の攻防。初の主将を務めた渡辺は際立ったキャプテシーで勝利に貢献した

松本対町田

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